カリフォルニア州のロブ・ボンタ司法長官は6月14日、カリフォルニア消費者プライバシー法(CCPA)を根拠として、GPC(グローバルプライバシーコントロール)の利用を遵守するよう、企業への取締りを強化するとした。
昨今米国では、企業による個人データ収集に対し、ユーザー側がそれをオプトアウトするためのツール、GPC(グローバルプライバシーコントロール)が議論を呼んでいる。
カリフォルニア州のロブ・ボンタ司法長官は6月14日、カリフォルニア消費者プライバシー法(CCPA)を根拠として、GPCの利用を遵守するよう、企業への取締りを強化するとした。
この件で米DIGIDAYは、パブリッシャーやエージェンシーをクライアントに抱える法律事務所の弁護士4名に取材を実施。すると、7月に入ってから2週間ほどで、カリフォルニア州司法府は少なくとも10社、場合によっては20社以上に、GPCの利用を遵守するよう求める書簡を送っていたことが確認された。
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法律事務所の「ケリー・ドライ・アンド・ウォーレン(Kelley Drye and Warren)」のパートナーで、プライバシー、およびセキュリティ担当チェアマンを務めるアリサ・ハトニク氏は、何名かの弁護士とともに、個人情報の保護規制に関するグループに参加している。「グループのいずれの弁護士も、クライアントから、この書簡が届いたという報告を受けている」。
また、別の弁護士は匿名を条件に「この書簡は、GPCの利用を企業に求めるものだ」と話す。これまで一部の広告企業のあいだで囁かれていた通り、「行動ターゲティングの広告利用を目的とするサードパーティーデータのやりとりは、CCPAが禁止するデータ販売に該当する」というのが、カリフォルニア州司法長官の判断ということになる。
ボンタ司法長官の広報担当者は、書簡についてコメントを避けたものの、米DIGIDAYに対し「CCPAは7月に発行から1年を迎えるが、CCPAに基づく処分は定期的に行われている」と話す。
カリフォルニア州司法府のWebサイトの「CCPA関連のQ&A」を見ると、7月14日に追加された文章には「法律上、(GPCは)個人情報の販売を望まない消費者による正当な要求であり、対象企業はこれを遵守しなければならない」と掲載されている。
GPCはブラウザベースのオプトアウトツールだ。Webサイトやアドテクサービスに、ユーザーデータの販売に関するオプトアウト要求の信号を自動送信する。たとえば次世代ブラウザのブレイブ(Brave)や、検索エンジンのDuckDuckGo(ダックダックゴー)のエクステンションであるPrivacy Essentialsでは、デフォルトでGPCがオンになっている。
普及はなかなか進まず
GPCプログラムの立ち上げに協力した個人情報保護の研究者、アシュカン・ソルタニ氏によると、現在「世界中で5000万人以上」が、GPCの信号を送信しているという。なお、10月のサービス開始時点での利用者は約4000万人だった。
しかし、GPCが対応しているのは、「個人情報の保護を行うブラウザやサービス」に限定されているという。また「ブラウザベンダーの多くは、GPCの採用に消極的」とのことだ。たとえばAppleのSafariには個人情報保護機能が導入されているが、GPCは採用していない。また、世界でもっとも利用者の多いブラウザであるGoogle Chromeに導入されない限り、データ収集全体に与えるGPCの影響は限定的なものになるだろう。
広告コンサルティング会社のカフェメディア(CafeMedia)でエコシステムイノベーション担当VPを務めるドン・マーティ氏は、「パブリッシャーにとってはデータ収集面で、GPCが必ずしも脅威にはなるわけではない」と話す。「というのも、主要なブラウザでは一切採用されていないからだ。パブリッシャーのデータ収集や収益面に与える影響は小さい」。
一方、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)やワシントン・ポスト(The Washington Post)などは、このツールを歓迎する声明を発表している。また中小のパブリッシャーでも、ここ数カ月間でGPCを採用する企業が増えているという。
技術仕様の不在による混乱
GPCの利用を推奨するカリフォルニア州の司法府だが、「彼らは技術的な仕様をほとんど公開しておらず、混乱を招いているだけだ」とハトニク氏は指摘する。企業が技術的な修正を行おうにも、仕様が公表されないことには投資もし難い。また、GPCへの対応にかかるコストは、パブリッシャーごとに異なる。
「我々のクライアントは当然、司法府の判断を遵守しようと考えている」と、前出のハトニク氏は述べる。「しかし、実際に導入するには多額の投資が必要になる。もし解釈が間違っていて、大きな修正を迫られた場合、会社が負うダメージはもちろん、最終的には消費者のあいだに混乱が生じることになる。この状況は、いちはやく改善されるべきだろう」。
KATE KAYE(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)