BuzzFeed CEOのジョナ・ペレッティ氏は米DIGIDAYのポッドキャストで、ハフポストをBuzzFeedに組み込むことで、買収成立後から最初の6カ月は、ハフポストの収益を圧迫する可能性があると話した。しかし、エージェンシー幹部たちは、買収後、ハフポストの広告事業はすぐにも強化されるのではと予想している。
先日、BuzzFeedがベライゾン・メディア・グループ(Verizon Media Group)からのハフポスト(HuffPost)買収を発表した。BuzzFeed CEOのジョナ・ペレッティ氏は先日公開された、米DIGIDAYのポッドキャストで、ハフポストをBuzzFeedに組み込むことで、買収成立後から最初の6カ月は、ハフポストの収益を圧迫する可能性があると話した。
しかしエージェンシー各社の幹部たちは、買収後、ハフポストの広告事業はすぐにも強化されるのではと予想している。そしてこれは、BuzzFeedのポートフォリオにも良い影響をもたらす可能性があるという。
老舗のニュースパブリッシャーでありながら、近年広告主のあいだでのハフポストの地位は、下落の一途を辿ってきた。エージェンシー幹部たちによれば、ハフポストは3名からなるセールスチームを擁しているが、その存在はベライゾン・メディアの広範なポートフォリオに埋もれてしまい、目立たなくなっていたという。
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ハフポストは「話し合いの席では常に付随的な存在」で、ベライゾンのセールス部門のトップが中心となってそれを率いていたと、ハバス・メディア(Havas Media)のデジタルインベスト部門でシニアバイスプレジデント兼グループディレクターを務めるパトリック・ケリー氏は話す。
実際、複数のエージェンシー幹部たちが、過去数年に行われたベライゾン・メディアとのミーティングのなかで、ハフポストが話題の中心になった記憶はほとんどないと話している。なかには、「ここ何年もハフポストのピッチを聞いていない。耳にするのはベライゾン・メディアとしてのピッチだ」と述べるエージェンシー幹部もいた。
対照的に、BuzzFeedのセールスチームはこれまで、広告主に対してBuzzFeedやテイスティ(Tasty)の営業活動を積極的に行ってきた。ケリー氏は、「こうしたBuzzFeedの姿勢は、ハフポストに好影響をもたらすのではないか」と述べる。また逆に、BuzzFeedにとっても良い影響が出る可能性は十分にあるという。
狙いはコングロマリット化
BuzzFeedとハフポストの連携は、バイス(Vice)とリファイナリー29(Refinery29)やグループ・ナイン(Group Nine)とポップシュガー(PopSugar)、ボックス・メディア(Vox Media)とニューヨーク・メディア(New York Media)のそれと似ている。昨今、こうした事例から見て取れるように、メディア企業のコングロマリット化が進んでいる。その狙いは、ポートフォリオを拡大することによってオーディエンスを増やし、広告主を獲得することにある。彼らはいまや、大手のメディア企業やデジタルプラットフォームとも十分に渡り合えるポジションを手にしつつある。「これで、BuzzFeedとハフポストもガリバー企業と戦える準備が整う。これはメディアのエコシステムを構築するうえで、非常に有効な手段だ」と、前出のエージェンシー幹部は語る。
コロナ禍によるニュース需要の高まりを受け、一部の広告主は、ニュースコンテンツと関わりを持つことへの長年の嫌悪感を克服しつつある。「広告主のあいだで、ニュースコンテンツへの注目度が高まっているのは確かだ。我々エージェンシーも、それを後押ししていきたい」と、このエージェンシー幹部は語る。さらに、Facebookなどのソーシャルプラットフォームや、インベントリーをプログラマティックマーケットプレイスで販売するWebメディアで、大量に誤情報が氾濫しているという事実を受け、パブリッシャーと直接取引を望む広告主も増えているという。
「コンテキストが再び重要になっていることを、広告主は理解しはじめている。ソーシャルプラットフォームや、Googleだけでなく、パブリッシャーが運営するメディアも必要なのだ」と、ふたり目のエージェンシー幹部は語る。同氏がこう語るように、昨今広告主は、オーディエンスの重複や無駄な広告費を減らすため、プログラマティックマーケットプレイスを通じて多くのパブリッシャーの在庫を活用するよりも、少ないパブリッシャーと直接取引を行いたいと考えている。BuzzFeedがハフポストを引き込めば、「広告主に選ばれるための基準が満たされるだろう」と、この幹部は話す。
BuzzFeed Newsの広告販売に好影響
では、具体的にBuzzFeedが得られるメリットとは何か。それは、BuzzFeed News(BuzzFeedのメディアのうち、ニュースコンテンツをメインに扱う媒体)の広告販売にプラスの効果がもたらされるかもしれない点だ。これまでBuzzFeed Newsは、広告主たちのあいだに広まるニュースコンテンツに対する嫌悪感だけでなく、彼らの認識の問題にも悩まされてきた。実際、複数のエージェンシー幹部たちは、これまでクライアントに、BuzzFeed Newsに的を絞った契約を広告主と結ばせたことがないと述べている。
「ニュースコンテンツへの注目が高まっているいま、BuzzFeed Newsがニュースをメインに扱っていることをクライアントに理解してもらえば、勝機はある。ただ、彼らのTwitterコンテンツが、いままでと同じようにエンタメ系のセレブクイズに偏っている場合、クライアントに話を切り出すのは難しいだろう」と、ふたり目の幹部は語る。
ハフポストの買収が、この問題の解決に役立つ可能性は十分にある。ハフポストというニュースメディアがBuzzFeedのポートフォリオに加わることで、BuzzFeedのセールスチームは、広告主にBuzzFeed Newsとハフポストがどう異なるのかを説明するだけでなく、ライフスタイルやエンタメに関するコンテンツにフォーカスする「BuzzFeed」と、ニュースにフォーカスする「BuzzFeed News」という、両者の立ち位置を明確にする機会も得ることができる。
コンテキストに合ったキャンペーンを
さらに、BuzzFeedがBuzzFeed Newsとハフポストをまとめて販売することも考えられる。認知度で勝るハフポストブランドにBuzzFeed Newsを統合すれば、セールスピッチもシンプルになるだろうと、ふたりのエージェンシー幹部は話す。あるいは、このふたつのメディアのインベントリーをプールし、さらにそれをBuzzFeedのほかのメディア資産とともにパッケージ売りすることもできる。
多種多様なメディアからなるポートフォリオを作成し、必要に応じてそれぞれのコンテキストに合ったキャンペーンを用意できる環境を構築すれば、「広告主に対して説得力のある提案ができる」と前出のケリー氏は話す。
重複はごくわずか
BuzzFeedとハフポストの統合に新たな可能性があるのは、それぞれのオーディエンスが重なっているのではなく、補完し合う関係にあるという事実があるからだと、エージェンシー幹部たちはいう。「我々が管轄しているデータを見ても、重複はごくわずかだ。おそらく(BuzzFeedの各サイトを訪れるオーディエンスのなかで、ハフポストも同じように訪れているのは)15~20%だ」と、ひとり目のエージェンシー幹部は語る。
またペレッティ氏によれば、ハフポストのオーディエンスはBuzzFeedよりも年齢層が高く、経済的に豊かなのだという。
ザ・メディア・キッチン(The Media Kitchen)のCEO、バリー・ロウエンサル氏も、同じ意見を口にする。ただし同氏によると、ハフポストのオーディエンスは年齢層が高いといっても「高齢者というわけではなく」、コアオーディエンスは35~54歳だという。「BuzzFeedのオーディエンスは若いミレニアル世代、ハフポストのオーディエンスは彼らよりも年上のミレニアル世代だ」と、ロウエンサル氏は語った。
TIM PETERSON(翻訳:ガリレオ、編集:村上莞)