BuzzFeedは分散型パブリッシングという手法を修得し、FacebookやSnapchat(スナップチャット)などを利用して膨大な数のオーディエンスの注目を集めてきた。
その記事や動画は、FacebookやPinterest(ピンタレスト)からSnapchatまで30のプラットフォームに展開され、1カ月に50億ものビューを生み出している。同社の動画が1カ月に生み出す30億ビューのうち、BuzzFeed.com上のものは5%に満たない。「人に来させるのではなく、人がいるところにコンテンツをパブリッシュする」と、その考え方はシンプルだ。
BuzzFeedのこの方針は、実施から1年経つが、時代の先を行っていた。現在、FacebookやSnapchatといったプラットフォームへ直接パブリッシュしたいと、パブリッシャーたちが騒々しい。オンラインメディア企業のゴーカー・メディア(Gawker Media)で最高経営責任者(CEO)を務めるニック・デントン氏は当初、Facebook頼りのパブリッシャーに批判的だったが、いまやそうも言っていられない状態だ。BuzzFeedがコンテンツベースのネイティブアドを早くから受け入れたときと同様に、ニュースとエンターテインメントを扱うパブリッシャーとしてBuzzFeedが切り拓いた道を、いま、他社のパブリッシャーが続いている。
BuzzFeedは分散型パブリッシングという手法を修得し、FacebookやSnapchat(スナップチャット)などを利用して膨大な数のオーディエンスの注目を集めてきた。
その記事や動画は、FacebookやPinterest(ピンタレスト)からSnapchatまで30のプラットフォームに展開され、1カ月に50億ものビューを生み出している。同社の動画が1カ月に生み出す30億ビューのうち、BuzzFeed.com上のものは5%に満たない。「人に来させるのではなく、人がいるところにコンテンツをパブリッシュする」と、その考え方はシンプルだ。
BuzzFeedのこの方針は、実施から1年経つが、時代の先を行っていた。現在、FacebookやSnapchatといったプラットフォームへ直接パブリッシュしたいと、パブリッシャーたちが騒々しい。オンラインメディア企業のゴーカー・メディア(Gawker Media)で最高経営責任者(CEO)を務めるニック・デントン氏は当初、Facebook頼りのパブリッシャーに批判的だったが、いまやそうも言っていられない状態だ。BuzzFeedがコンテンツベースのネイティブアドを早くから受け入れたときと同様に、ニュースとエンターテインメントを扱うパブリッシャーとしてBuzzFeedが切り拓いた道を、いま、他社のパブリッシャーが続いている。
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とはいえ、他所からにやられる前に自らのビジネスをひっくり返すというシリコンバレーの信条に従うBuzzFeedは、これから変化においても茨の道を進むだろう。トラフィック解析サービスのシミラーウェブ(SimilarWeb)によると、BuzzFeedは10年足らずで、デスクトップとモバイルのトラフィック量において、「ニューヨーク・タイムズ」と「FOXニュース」を抑えて、第5位のニュースサイトになった。
しかし、インターネット調査企業のコムスコア(comScore)によると、自社サイトへのトラフィックは、デスクトップもモバイルも横ばいだ。BuzzFeedは急ピッチだった雇用を控えているという。また、BuzzFeedの懐具合を直接知っているふたりの人物が、同社は2015年、売上増加の目標を達成できなかったと語っている(BuzzFeedは、昨年は「記録的な」収益だったとだけ伝えているが、急成長している会社ならそれは当たり前だろう)。
BuzzFeedは、分散型モデルへ、とりわけ動画へと重心を移すなかで、かつては10万ドル(約1100万円)だった広告プログラムの最低価格を引き下げた。アリゾナ州の観光都市スコッツデールのような小規模なブランドでさえ出稿できるようにしたのだ。
BuzzFeedにはこの移行を考え出すためのブランドとリソースがある(昨年8月にはNBCユニバーサルから2億ドル[約220億円]のベンチャー投資を受けた)。しかし、元の世界へ戻るためのボートを燃やしてしまったからには、新しい世界を作り出す必要があるのだ。この記事は、幹部がコメントすることをBuzzFeedが拒否したため、広告会社の幹部数名とBuzzFeedの元幹部2人へのインタビューに基づいている。
強力なバイラルで広める
BuzzFeedのビジネスの中核は、ソーシャルディストリビューションに立脚している。ビジネス側は、編集側で何がうまく行っているかを読み解くという。そこで得られたことを、編集側が用いているツールとディストリビューション・チャネルを使って、広告主のためのブランドコンテンツに活用するのだ。
そうしたフローから、編集コンテンツの「リスティクル(箇条書き形式の記事)」をモチーフとした、ネイティブアドが掲載されたこともあるだろう。編集側とセールス側が別々に、しかし調和して働く。データとテクノロジー、そして、なによりディストリビューションチャネルが同様にこれを支えている。
メディアエージェンシーのOMDで最高投資責任者を務めるベン・ウィンクラー氏は、「BuzzFeedは、ソーシャルネットワークを主要なディストリビューションプラットフォームとして採用したことで、コンテンツのバイラル性がこれまで以上に重要になった。そのため、よりトリッキーなメディアとなるかもしれない。広告主はブランドにとってよいものと、オンラインで人気が出るものとの微妙なバランスを見つけることが必要になる。あるときはうまく行き、あるときは失敗する」と語る。
このバランスの実現は簡単ではない。バイヤーからはBuzzFeedが、ブランドのためになる変化より、プラットフォームで人気が出るものに関心があるように、見えることがある。
現状、BuzzFeedと取引を行っているため匿名を求めたある広告バイヤーは、「BuzzFeedへRFP(提案依頼書)を送っても、戻ってくるのは、そのRFPにはもはや沿っていないコンテンツだ」と語った。
疑問視される制作能力
デジタルエージェンシーであるディープ・フォーカス(Deep Focus)のイアン・シェーファーCEOは、クライアントがBuzzFeedのコンテンツ制作能力を冷ややかに見ていると語る。ディストリビューションにはBuzzFeedを使ったが、コンテンツは別のところで作ったというクライアントの事例を教えてくれた。
「ブランドは、BuzzFeedのディストリビューションモデルにはまだ好意的だが、コンテンツ制作の面では、そこまでBuzzFeedを盲信していない。たとえば、BuzzFeedではネコの動画シリーズ『ディア・キトゥン(Dear Kitten)』が人気だが、ニューヨーク・タイムズで同様に人気のコンテンツなら5つほど挙げることができる。(タイムズは)記憶に残る質の高いコンテンツを作り出す能力では上回っている」と、シェーファー氏は述べた。
分散型の戦略はまた、BuzzFeedブランドとタイアップを行うための割増料金を、広告主へ請求できなくなるリスクが伴う。やはりプラットフォームのフィードでは、ほかのコンテンツと差別化できなくなる可能性が高いのだ。
また、ほかにもブランドコンテンツに関する争点は存在する。ほとんどのパブリッシャーには、ネイティブ記事を作成するための「スタジオ」が別途用意されており、市場の価格が高騰しているのだ。そのため、現在値下げのプレッシャーにさらされている。加えて、ディストリビューションだけなら、手軽に実施できるようになった。
先ほどのデジタルバイヤーは、「コンテンツ配信はとてもうまいが、うまいのは決してBuzzFeedだけではない。うちのクライアントの多くは、自社で配信したり、ほかのエージェンシーを使ったりしているし、ディストリビューションにネイティボ(Nativo)やシェアスルー(Sharethrou)を使うこともできる」と話す。
そのため、このバイヤーのエージェンシーは昨年、BuzzFeedへの支出は増えたが、それ以上に、ほかのパブリッシャーへの支出が大きく増大した。「デジタル動画やソーシャルに参入しているパブリッシャーは、前年比で2倍の成長をしていると見ていいだろう」。
余念がない研究開発
マーケターはまた、ネイティブアドの効果を、単なるクリックやシェアの獲得以外で証明することを求めるようになってきている。BuzzFeedは1年前、ネイティブアドを営業成績に結びつけられるようになることは「巨大な関心の的」だとして、それに向けた研究スタッフを倍増させていった。そして現在は、自社とクライアントのリソースとあわせて、ニールセン(Nielsen)、 コムスコア(comScore)、 ミルウォード・ブラウン(Millward Brown)など「すべての大手ベンダー」と協力し、広告効果の測定にあたっていると説明している。
しかし、エージェンシーはそれでもまだ、広告が購入の意志へとつながるのを確かめたがっている。BuzzFeedは2015年、ペットケアブランドのピュリナ(Purina)のために制作したネコ動画「ディア・キトゥン」をバイラルさせられたが、これを繰り返すのは難しい(BuzzFeedが同じことを自分たちのブランドに再現してくれるという、非現実的な期待を抱くマーケターがいることは言っておかなければならない)。
元幹部のひとりは、「BuzzFeedはいつも研究の答えを得るのに苦労している」と語る。
しかし、BuzzFeedは広告とパフォーマンスを結びつける方法を試していると、デジタス・スタジオズ(Digitas Studios)のシニアバイスプレジデントで、いくつかのクライアントにBuzzFeedを提案したことがあるジョージ・ハマー氏。たとえば、BuzzFeedは、デジタスのクライアントである映画スタジオのために、最後に映画クーポンを入手できるクイズを作った。
「BuzzFeedは、ただ認知させるだけでなく、直接的な反応を促すテストを各種実施しているが、まだ学習段階だ」とハマー氏。ブランデッドコンテンツ動画を共同制作した際、デジタスはセット、脚本の共同執筆、絵コンテ作り、編集作業などに協力した。「ブランド向けのクリエイティブをしっかりしたものにするため、共同制作のレベルはどんどん強まっている」。
BuzzFeedの次なる戦略
BuzzFeedはブランド動画へと大きくシフトしたが、FacebookやSnapchatなどがユーザーのフィードを動画で溢れさせているのだから、理にかなっている。動画はBuzzFeedの売上全体に占める割合が小さいながらも増加しているが、たくさんの人手が必要なことから、費用も時間もかかるため、問題にぶつかっていると「インフォメーション(The Information)」が報じた。また、最近、BuzzFeedで離職者が相次いでいるのは、動画へのシフトが原因だとされている(BuzzFeedは通常の人員減少にすぎないと説明した)。
BuzzFeedは、Facebook動画においては絶対的だ。Facebookに配信するレシピページ「Tasty」で、フードコンテンツに力を入れ、3000万もの「いいね!」を集めている。食品ブランドを見込める短尺の低コスト動画を使っており、広告向けに作られたページのようだ。
BuzzFeedはまた、売上増加のため、広告以外にeコマースにも目を向けており、スポンサー付き投稿に購入ボタンを入れた2014年のロレアル(L’Oreal)との試みをさらに発展させている。いまのところ、BuzzFeedはプラットフォームを活用することで有利な地位を手にしており、プラットフォームの成長はBuzzFeedにプラスに働くかも知れない。新しいチャネルを理解しようとしているブランドは、BuzzFeedを有用かつ安価な手段だと見ることもできるだろうと、ハマー氏は語る。
同氏は、「我々は人々が時間を過ごしているところへと行く必要がある。コンテンツは自作することも、パートナーと協力することできるだろう。BuzzFeedはそのコンテンツを拡散することができる」と、結論づけた。
Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)
Photo illustration by Matt Fraher.
※3段落目「他所からにやられる」を「他所からやられる」に訂正しました。(2月26日午後6時53分、編集部)