バイラルメディアの代名詞として知られるBuzzFeed。ソーシャルプラットフォームに寄り添う分散型戦略で、その絶対的な地位を築いてきた。2016年10月25日、BuzzFeedの創業者兼CEOジョナ・ペレッティ氏が来日。Yahoo!JAPANの新オフィスに訪れた。BuzzFeedに関する6つの要素をまとめた。
バイラルメディアの代名詞として知られるBuzzFeed。2006年の創設以来、ソーシャルプラットフォームに寄り添う分散型戦略で、その絶対的な地位を築いてきた。
2016年10月25日、BuzzFeedの創業者兼CEOジョナ・ペレッティ氏が来日し、Yahoo! JAPANの新オフィスに訪れた。BuzzFeed Japanは、Yahoo!JAPANとの合弁企業として、2015年8月12日に設立。2016年1月19日に日本版サイトがローンチしている。
現在、10カ国でメディア展開を行っているBuzzFeed。ローンチから約10カ月を経て、他国版と比較すると、日本版の成長は著しいという。というのも、英語圏の国では(英語話者の多いドイツを含む)、すでにオーディエンスの規模が少なからず保証されていたため、ローンチ時からある程度オーディエンスの規模があったからだ。
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それに対し、日本版はほとんど地盤がない状態で開始した。だが、この8月段階で、すでに1000万UV(ユニークビジター数)を達成。ローンチ時から、ほぼ10倍の規模となっている。
なぜ、日本版の成長が、これほどまでに顕著なのか? ペレッティ氏のプレゼンテーションおよびグループインタビューから、その秘訣を探った。
1. コンテンツは、あくまで会話のキッカケ
人と人を繋げるコンテンツの作り方を、MITの大学院生の頃から考えていたというペレッティ氏。ソーシャルプラットフォームにおいて、コンテンツが拡散される理由について、「人々はコンテンツの中身そのものについて話したいからシェアするのではない。コンテンツを通して、他者との繋がりを認識し、会話をするきっかけをつくるためにシェアをしているのだ」と語る。そのマインドは、日本版にも受け継がれている。
2. 笑える簡単な動画で、シェアを量産
バズコンテンツのアイデアの基礎は、動画コンテンツの前身であるフラッシュ動画で当時笑える簡単な動画を作っていた、BuzzFeedのエンターテイメントグループのプレジデント、ズィ・フランク氏によって生み出されたという。こうして当時のペレッティ氏は、シェアによって情報がたくさんの人に伝わることを発見した。
現在は月間70億ビューにまで成長している同メディア。エンゲージが生まれるとき、どういった人間的な理由があるのか、データから読み解くことに、技術面の投資をしているという。
3. グローカルな視点のコンテンツを
柴犬の人気は国内だけではない。海外でも広くシェアされた
英語圏のオーディエンスではないにも関わらず、BuzzFeed Japanは海外のほかの支社に比べて、急激に成長している。グローバルに応用できるコンテンツと、その地域でしか理解されないコンテンツのバランスを大切にしていることが、成功要因のひとつだ。また、地域のコンテンツをグローバルに展開できるネットワークをすでにもっていることは大きい。
月間4億人にリーチしている、BuzzFeedのバーティカルメディア、Tasty(テイスティ)もTasty Japanのローンチで世界中の和食ファンを惹きつけており、BuzzFeed Japanの規模拡大を助けている。動画だけでなく、自由な結婚の権利やLGBT問題についていち早く取り上げ、硬派なニュースにも積極的に取り組んできたことも成果に繋がっている。
4. 記事広告には、編集フォーマットを横展開
Jaeden’s Oster Grill を使ってハンバーガーを作る動画
BuzzFeedのスポンサード広告は、ユニークなフォーマットを提供している。実験的なメディアと自ら称するように、多くのアイデアを試してきたなかでも編集コンテンツとして成功したのが、クイズ形式のものだ。マテル(Mattel)社のバービーと自分の性格を組合せたコンテンツや、カクテルと自分の性格を組合せたコンテンツなどで成功事例をあげてきた。こうして、編集コンテンツで成功したものを広告に応用してきた。
また、Tastyでは動画広告が作られている。Jaeden’s Oster Grill をフィーチャーしたスポンサードビデオでは、配信から1時間でターゲットとAmazonの在庫がなくなったという。Tasty Japanは月間約3000万ビューを獲得している。
(※追記:BuzzFeed Japan 古田大輔編集長のご指摘により、Tastyのビュー数を修正しました。)
5. あくまでメディアビジネスにフォーカスする
ペレッティ氏は今後長く同メディアを続けていきたいと語った。「生活に密に繋がり、瞬時に情報を配信し共有できるような形で10年20年と会社を大きくしていきたい。そこにフォーカスするために、それ以外の領域のビジネスには手がまわらないだろう」。
6. 同僚から多くを学ぶ
「ハフィントン・ポスト」の創業者として、アリアナ・ハフィントンとともに黎明期を支えた、ペレッティ氏。AOLに買収された後、ハフィントン氏は同メディアに残り、ペレッティ氏とケネス・レーラー氏(現BuzzFeedのチェアマン)は「ハフィントン・ポスト」を離れBuzzFeedを創設した。
バーティカルメディアという現在の業界のトレンドから外れており、かつての勢いは失速したといわれている同メディアの創業者兼編集長について、ペレッティ氏は以下のように語った。
「私は当時アリアナから多くのことを学んだ。成功した大企業の経営を続けるより、一転して、新しいベンチャーを起ち上げることの方が勇気のいることだと思う。何もないところから、何かを創り出すことは容易ではない。彼女がやろうとしていることが成功することを願っている」。
Written by 中島未知代
Photo credit: 吉田拓史(Top写真)、中島未知代(記事中写真)