バブル化する「B2Bイベント」市場、どこで弾けるのか?:「市場があまりに混み合っている」

業界人のオーディエンス向けビジネスをリードするB2Bパブリッシャーにとって、展示会やカンファレンス、サミットなどのイベントを手がけることは、何ら目新しい取り組みではない。

しかし、フォーブス(Forbes)、ロイター(Reuters)、ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal:以下、WSJ)、ブルームバーグ(Bloomberg)のようなビジネスパブリケーションにとっては、イベントは魅力的な成長分野となっており、彼らはスポンサー向けのカスタムイベントの提供と、自社独自イベントのフランチャイズ構築の両方に取り組んでいる。WSJは、イベントのスポンサーシップと参加料による収益が2ケタ成長を記録しており、発行元ダウ・ジョーンズのチーフ・マーケティング・オフィサー、スージー・ワトフォード氏によると、同社のカスタム事業である「ザ・トラスト」(The Trust)とともに大きな収益源に成長しているという。同社はCEOディナーの共催から数日間にわたるフェスティバルまで、年間200件以上のイベントを手がけており、そのすべてがスポンサーを受け入れている。

一方、ブルームバーグも、イベント部門の収益がここ3年間で伸びており、2018年だけで84%の増収を記録していると、広告、マーケティング、ライブイベント担当グローバル責任者のスティーブン・コルビン氏は述べている。同社は現在、世界で80件を超すイベントを手がける。件数は2017年から2018年にかけて倍増し、2019年には複数の国際イベントを立ち上げたことで80件を突破した。

これまでイベントを手がけていなかったロイターは、2019年10月にFCビジネス・インテリジェンス(FC Business Intelligence:以下、FCBI)の買収を通じてイベント事業に乗り出した。FCBIは、B2Bのパブリッシングとカンファレンスを手がける企業で、医薬品、エネルギー、旅行、サイエンス、テクノロジー分野が専門だ。手がけるイベントは年間70件を超える。

印刷物による収益の減少と、デジタル広告費をめぐる激しい競争から、パブリッシャーはイベントを自社のカスタム事業で収益を伸ばすチャンスと見ている。オーダーメイドのイベントの販売を増やし、なおかつ新たなアクティベーションとスポンサーによって、収益の柱となる自社イベントのフランチャイズを構築しようというのだ。

フォーブス、WSJの事例

「(イベント事業の)成長の多くは、カスタム分野で生み出されている」と、フォーブスの最高収益責任者、マーク・ハワード氏は話す。「数年前までは印刷物が主体だったが、その後デジタルが世界における我々のプレゼンスを高め、より大きなビジネスチャンスとなった。しかし、ここ2年ほどは、ライブイベントを手がけることが、我々とブランドの関係をさらに深めるのに役立っている」。

ハワード氏によると、イベントは数年前からフォーブスにとって大きな戦略的イニシアチブとなっており、イベントを成長戦略の重要な柱と本格的に見なしはじめたのは、2011年のことだという。しかし、フォーブスがカスタムイベント事業の成長を推進するようになったのは、ここ1年ほどのことだ。現在、フォーブスが世界で手がけるイベントは約100件と、前年から50%以上増えており、またそれらイベントの過半数を占める約70%が、フォーブスのオーディエンスにリーチしたい広告パートナー向けに制作されたカスタムイベントだと、ハワード氏は述べている。

WSJの場合は、顧客サブスクリプション事業が断然、収益源のトップだが、ライブおよびカスタムコンテンツ部門もサブスクリプションを基盤に成長しつつあると、ワトフォード氏はいう。年間200件手がけるイベントの過半数はWSJ主導のイベントだが、パートナー向けにイベントの一部としてインテグレーションを制作するのに加え、独立したカスタムイベントを手がけることが増えている。

しかし、ワトフォード氏によると、イベント事業の成長がもたらす大きな成果のひとつは、イベントが会員のリテンションに目に見えて効果がある点だ。「WSJの手がけるイベントに一度でも参加した人は、その後も会員でいる可能性が高くなる」。

ロイター、ブルームバーグの事例

ロイターの場合、イベント事業への進出は、既存のスポンサーにイベントを抱き合わせ販売(クロスセル)する機会をもたらす。また現在、ロイターのほかのプラットフォームに広告を出稿していない、900社を超えるFCBIの顧客を新たなターゲットにできる。

「FCBIに惹かれた大きな理由のひとつは、彼らが医薬品、旅行、マーケティングといった分野に専門知識をもっていた点だ」と、ロイターのニュース・メディア部門社長、マイケル・フリーデンバーグ氏は述べている。「我々が今後どの分野に新たに進出するつもりかは明かせないが、我々にとって望ましいのは、規制の厳しい業界だ。そうした分野について報じることにかけては、我々は非常に深い専門知識を有している」。

ロイターによるFCBI買収の条件は明らかにされていない。しかし、この買収はロイターにとって良い投資だと、ビューティ&ウェルネス、旅行、ホスピタリティ、医薬品、およびテクノロジー業界向けのB2Bパブリッシングとイベント事業を手がけるクエステックス(Questex)のチーフ・マーケティング・オフィサー、ケイト・スペルマン氏は評価する。

「方向性として賢明だ」とスペルマン氏はいう。「彼らが買収で手に入れたのは、ブランドの背後にあるコンテンツやソートリーダーシップ、データベースだ。そこに焦点を合わせていれば、成功するためのビジネスノウハウが得られるだろう」。

ブルームバーグのコルビン氏によると、イベント事業の「ブルームバーグライブ(Bloomberg Live)」は、過去5年間の収益の年平均成長率(CAGR)が34%を記録している。その理由についてコルビン氏は、「ブルームバーグイコーリティサミット」(Bloomberg Equality Summit)を今年はロンドンとムンバイでも開催するなど、イベントの世界進出に投資しているためだとしている。そして、これらのイベントはすべて、自社の名で開催するイベントでもカスタムイベントでも、有料開催を含めて招待制とすることで、広告主やパートナーが求めるオーディエンスを集められるようにしており、今年はこれまでに50社を超すスポンサーを獲得している。

B2Bイベント市場「バブル」の行方

しかし、B2Bイベント市場の分け前にあずかろうとする動きがこれほど活発になってくると、この「バブル」は今後、どこまで大きくなって弾けるのかという疑問が生じる。

クエステックスのスペルマン氏のようなB2Bパブリッシャーから見て、ビジネスパブリッシャーがこれらのイベントモデルに引きつけられるのは当然のことだ。「目下、大きな収益が見込めるB2Bは狙い目の市場だ」と、スペルマン氏はいう。「しかし、B2B市場の目下の課題は、市場があまりに混み合っているため、余計なものを取り払って『正しいやり方』を見つけ出すのが大変なところだ」。

しかし、B2Bのカンファレンスやイベントが飽和状態に陥っているいま、業界リーダーが専門性を高めるための投資を行うにも、投資先があまりに多いため、大きな投資対効果を得られるのはデータとリサーチに根差した企業に限られると、スペルマン氏は指摘する。

「現在は、量と質のバランスを取ることに意識が向いているが、その橋は近いうちに崩壊する。その結果、市場で多くの統合が起きるだろう」と、スペルマン氏は述べている。

Kayleigh Barber(原文 / 訳:ガリレオ)
Max Willens contributed reporting.