ビジネスメディア勢が、コンテンツスタジオに投資する理由:B2B クライアントが狙い

いわゆるビジネスパブリケーション/ビジネスパブリッシャーは現在、自社コンテンツスタジオに積極的に投資している。オーディエンスとデータインサイトを武器に、彼らは自らをB2Bマーケターにとって理想のパートナーと位置づけているのだ。

B2Bデジタル広告市場が拡大するなか――米デジタルマーケティングリサーチ専門会社eマーケター(eMarketer)の見積もりでは、2017年以来、米国だけで10億ドル(約1060億円)の成長を遂げた――ダウ・ジョーンズ(Dow Jones)、ブルームバーグ(Bloomberg)、ビジネス・ジャーナル(The Business Journals)、インク・メディア(Inc. Media)といったビジネスパブリッシャー勢が、ニッチな顧客プロファイルをターゲットにするB2Bマーケターを引きつけるべく、自社コンテンツスタジオおよびインサイトに投資を続けている。ダウ・ジョーンズとブルームバーグがコンテンツストラテジーに関するテクノロジーパワードインサイトを顧客に提供する一方、ブルームバーグ・メディア・グループ(Bloomberg Media Group)は2017年に導入した独自のAIツールAiQを利用し、ターゲットオーディエンスにカスタムコンテンツを供している。

2019年前半、ダウ・ジョーンズは提供しているのがデータパワードサービスである点を強調するため、自社スタジオを改名した。インク・メディアはパフォーマンスメトリクスが見られる独自のテクノロジープラットフォームへのアクセスを顧客に供している。ビジネス・ジャーナルは43に上る地方都市を網羅するスタジオを運営し、大企業と中小B2B広告主の両者からなり、現在急速にその数を増やしている定期購読者のニーズに応えている。

有力なセールスチャンネル

ブランデッドコンテンツはB2Bオーディエンスの大半が有益と見なしており、だからこそ自社プラットフォームにおいて極めて有用だと、パブリッシャー勢は断言する。実際、ビジネス・ジャーナルが先頃実施した調査では、ブランデッドコンテンツをもっと見たいと思う定期購読者が78%に上った。「この手のオーディエンスにはP2P(ピアツーピア)マーケティングが極めて効果的だ」と、インク・メディアのVP兼編集人リチャード・ラッシー氏は語る。

ビジネス・ジャーナル・コンテンツ・スタジオ(The Business Journals Content Studio)は、ほぼすべてB2Bクライアントからなる常連客のためにネイティブ広告を制作している。2016年に同スタジオを立ち上げて以来、同社は213%の増収を達成した(収益額は明かしていない)。同社の一般的なコンテンツパッケージは5000ドルから7万ドル(約52万円から約740万円)で、2019年度は1800のブランデッドコンテンツのパブリッシュを考えており、コンテンツ数はこの2年間で29%増となる。同スタジオのエグゼクティブディレクター、トム・ニーダム氏によれば、ブランデッドコンテンツはいまや同社でもっとも急速な伸びを見せるデジタルセールスチャンネルだという。実際、同社のブランデッドコンテンツは世界屈指の大手会計事務所デロイト(Deloitte)、プロフェッショナルサービスファームKPMG、バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)、ニッセイ・ウェルス生命保険、米保険会社カイザー・パーマネンテ(Kaiser Permanente)といった大企業の顧客にも、2019年現在256を数える新規のネイティブ顧客にも好評を博している。 同スタジオの従業員はわずか5人だが、「大勢のフリー編集者およびライター陣」に仕事をアウトソースしていると、ニーダム氏は語る。

ブランデッドコンテンツ事業インク・スタジオ(Inc. Studio)を始めて以来、カスタムコンテンツへの投資が明らかに急増していると、インク・メディアは語る。同社の顧客の多くが広告費の投入先をディスプレイメディアからカスタムコンテンツに切り替えたからだ。「5年前、カスタムコンテンツは弊社の業務の10%程度だった。それがいまや40%に近い」と、それ以上の具体的な数字は明かさなかったが、ラッシー氏は断言する。

エージェンシーと同等の能力

大手ビジネスパブリッシャーであるビジネス・ジャーナルは、この成功の一因として、全米43都市を網羅するビジネスモデルを挙げる。この規模があるからこそ、同社は中小B2B顧客との仕事を大量に確保しつつ、全国区の大企業の関心も得られているという。「たとえば、今日は社員数10人の零細企業と仕事をして、明日は全米随一のテレコムプロバイダーと仕事をする、ということもありえる」と、ニーダム氏は述べた。ビジネス・ジャーナル本社に中央スタジオを構え、ここにすべてのコンテンツ制作を管理監督させることで、同社はこのビジネスモデルを維持している。

戦略、カスタムリサーチ、コンサルティングといったサービスを提供するビジネスパブリッシャーもいる。たとえば、インク・スタジオは独自の測定プラットフォームであるブランドビュー(BrandView)へのアクセスを顧客に提供している。ブランドビューを介することで「クライアントのプログラムでいま何が起きているのか、我々とクライアントがともに理解できる」と、ラッシー氏は語る。

ザ・トラスト-ウォール・ストリート・ジャーナル|バロンズ・グループ(The Trust – The Wall Street Journal | Barron’s Group)――元WSJカスタム・スタジオ(Custom Studios)――はダウ・ジョーンズが運営する、株式市場ニュース&投資情報ソースのバロンズ(Barron’s)、金融ニュース&マーケットデータソースのマーケットウォッチ(MarketWatch)、不動産情報ソースのマンション・グローバル(Mansion Global)、金融情報ソースのファイナンシャル・ニュース(Financial News)を網羅しており、ダウ・ジョーンズのビジネスデータサービス、ファクティバ(Factavia)を活用し、さまざまに異なるオーディエンスとコンテンツとの親和性に関するインサイトを顧客に提供している。

「我々はメディアエージェンシーか? いや、そうではないが、彼らと同等の分析性能、ターゲティングおよびプランニング能力を備えており、それらを利用して独自の経験を創造している」と、トラストのGMスティーヴン・ノッティンガム氏は語る。

データとインサイト

データとインサイトはブルームバーグ・メディア・グループが供するサービスの両輪でもある。自らのクリエイティブ能力とエディトリアル能力の融合により、「我々はインサイトという知力を戦略的思考に変容させる」と、同グループの米セールス部門を率いるアンソニー・デマイオ氏は語る。同スタジオはAiQを利用して顧客のためにインサイトを促進している。2018年、ブルームバーグ・メディア全体の収益が前年比16%増だったのに対し、同社のデジタル広告収益は15%増を記録した。

データとインサイトはブランデッドコンテンツの未来に必要不可欠だと、ビジネスパブリッシャーは異口同音に語る。「たんにネイティブ広告の制作がどうの、という話じゃない。既存のオーディエンスとプラットフォームを利用する従来の手法で、いかにして飛躍的進歩を促すか、いかにしてそうした経験を促すか、それがポイントだ。つまり、将来のネイティブ広告云々ではなく、より進歩的な、より深く関わる、よりデータに支えられた、よりパフォーマンスセントリックなものにしていくという話であり、それこそがウォール・ストリート・ジャーナルのトラストで我々が構築している、いまという時代に即した能力だ」と、ノッティンガム氏は語る。

Olivia Morley(原文 / 訳:SI Japan)