「サブスクリプションでは、少しずつの積み重ねが重要だ」: 読者収益を急成長させるテレグラフ

イギリスのパブリッシャーであるテレグラフ(Telegraph)のユーザー登録数は、2018年の年末に350万人を突破した。同社は2018年の目標であった300万人を8月の時点で達成している。同社によると、本年度の目標の達成を踏まえ、数年以内に1000万人を達成するという目標に向けて、順調に推移しているという。

同社は3年前にメーター制ペイウォールからダイナミックなペイウォールへと切り替え、同社のコンテンツの2割をペイウォールの対象としたが、この切り替え以降に登録者数がどれだけ増えたかについて同社は明かさなかった。また同社はプレミアム会員を設け、メール登録を行ったユーザーはプレミアム記事を週に1本閲覧できるシステムを採用している。これにより1日あたりの新規登録者数が3倍に増えたという。さらに読者の登録理由をより正確に把握できるようになったことでコンバージョン率も向上しているとのことだ。

テレグラフの最高テクノロジー責任者を務めるクリス・テイラー氏は、次のように述べている。「画期的な発見というわけではないが、我々が学んだことのひとつに、デジタルのサブスクリプションモデルでは、少しずつの積み重ねが重要であるという点が挙げられる。いくつかの要素を少しずつ向上させて、管理を適切に行えば、登録者に対して大きなメリットを与えられるようになる」。

マイテレグラフの意味

同社は昨年7月に自社サイトとアプリでマイテレグラフ(My Telegraph)というシステムを導入した。このシステムでは登録ユーザーは記事の保存や特定の記者のフォロー、フィードに表示される話題のカスタマイズが可能になる。テレグラフによると、登録ユーザーの5%がマイテレグラフを活用しているという。マイテレグラフの活用方法でもっとも人気なのが記事の保存機能だ。記者のフォロー、話題のカスタマイズ機能がそれに続く。

これについてテイラー氏は「非常に驚いた」という。また、マイテレグラフは新規購読者の獲得と維持に役立っていると同氏は明かす。読者が匿名で記者や興味のあるトピックをフォローし、その後に登録するという流れがあるためだ。登録ユーザーの場合、時間をかけて自分自身のフィードとアラートを設定しているという。これは「リテンションにおいても有利に働く」と、テイラー氏は指摘する。

また同氏は、マイテレグラフはあくまでテレグラフの核である記事コンテンツに付随するものだと強調している。記事の保存機能が高い人気を博していることが、同社のジャーナリズム自体の質の高さを示していると同氏は語る。テレグラフで現在ペイウォール対象となっている記事の割合はニュースのサイクルによって異なるものの、およそ35%まで引き上げられている。12カ月前に同社は編集者を39人増やすことを発表しており、昨年3月には15人の社員を新たに迎えて、世界展開を行うテック系の子会社を立ち上げている。

解約率とリテンション

もちろん解約率を安定させつつ、購読者を新規獲得するのは、綱渡りのような作業となる。テレグラフのサブスクリプションチームは、最高運営責任者のアキ・マンダー氏のもと成長を続けており、たとえば割引を実施して利益率を下げてまで、購読者を獲得するのには慎重な姿勢を見せている。

リテンションの数値は多くの企業にとって秘匿したい情報であり、テレグラフもこの数字は明かしていない。だがテイラー氏によると、リテンションは優先事項であり続けるものの、その水準は新規獲得が増えているなかで「確実に堅調に」推移しているという。

解約率を低く保つには、匿名の読者が登録ユーザーや購読者に移行する際のマッピングも重要だろう。ユーザーが移行の各段階で、何を原因として移行に向かったかを監視することが求められる。

オープンとプレミアムの間で

またテレグラフは登録ユーザーの獲得に貢献するようなメッセージとコンテンツについて実験を行っているが、昨年夏にこの方式を変更している。以前は商品の改善にA/Bテストを用いていたが、昨年夏以降は複数の自己学習式ペイウォールを導入している。さらに機械学習によって、そのうちどれが読者にもっとも適しているかを追求している。また、登録ユーザーの閲覧時の行動を把握し、豊富なファーストパーティデータを蓄積することで、より実践的で効果的な手法へと磨き上げている。

だが価値を把握するためには、この実験システムをさらにしっかりと形作る必要がある。現時点で、テレグラフはユーザーが登録してからの30日間を重視している。この30日間は一般的にも移行における重要期間として知られている。過去数カ月、テレグラフのサイトではほかの広告主のディスプレイ広告を減らし、かわりに登録者への移行につながりそうなテレグラフ自身の商品を表示している。

これについてテイラー氏は「プレミアム環境では質の高い広告を重視すべきだ」と語り、この措置は登録してからの30日間または訪問30回以内という比較的短期間を対象にしていることを明かした。これはページ閲覧数全体からすればわずかなものだ。オープンとプレミアムという現在の同社のモデルは大きな規模を保っている。コムスコア(ComScore)の統計によると、同社の月間ユニークユーザー数は季節ごとに変動しつつも、2100万を若干上回る状態となっている。これに対し、もし全コンテンツを有料にするハードペイウォールを実施すればトラフィックは落ち込み、広告とサブスクリプション間の綱引きにおいて困難な状況に陥る可能性があるだろう。

Lucinda Southern(原文 / 訳:SI Japan)