検索ニーズに特化した情報サイト「アバウトドットコム(About.com)」は、2016年以来、バーティカルサイトの集合体へと姿を変えつつあるが、同時に、コマースオペレーションの構築にも忙しい。これから数年で、最終的にはサイト全体の売上の5分の1をコマースが占めることになるかもしれない。
検索ニーズに特化した情報サイト「アバウトドットコム(About.com)」は、2016年以来、バーティカルサイトの集合体へと姿を変えつつあるが、同時に、コマースオペレーションの構築にも忙しい。すでに十数人以上からの寄稿が必要な規模になっており、これから数年で、最終的にはサイト全体の売上の5分の1をコマースが占めることになるかもしれない。
バーティカル化との好相性
アバウトのコマース戦略は、まだ導入段階だ。最近ローンチした、食とインテリアの情報サイト「ザ・スプルース(The Spruce)」はコマース編集者を探しはじめたところだし、近くローンチする旅行中心のサイトは、ほかとは違う独自のコマースオペレーションが必要になるだろう。それでもアバウトは、バーティカルメディア戦略が本格稼働すれば、各サイトともに、売上のそれなりの割合をコマースから得られやすくなると考えている。
最近小さなコマースコンテンツチームを作るパブリッシャーが多いなか、アバウトは、GoogleとPinterest(ピンタレスト)の検索におけるオーソリティを獲得していることで一歩抜きん出るはずだと、アバウトのCEO、ニール・ボーゲル氏は確信している。
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「バーティカル戦略でコマースがよい方向に変わる」と、ボーゲル氏は語る。「カテゴリーとコンテンツがいつも新鮮だから、自然と人々が信頼してくれ、見つけるようになる」。
アバウトのコマースへの移行は小さな1歩からはじまった。現在コマース担当VPを務めるニック・マイケイリッジュ氏が2015年、旅行中心のサイト「アバウト・トラベル(About Travel:2013年から運営)」にアフィリエイト収益を加えようと決めたときだ。
パフォーマンスベースのトリップアドバイザー(TripAdvisor)向けのプログラムは軌道に乗り、6カ月目にはランレートで100万ドル(約1億円)を突破する事業に成長した(アバウトはコマース収益の具体的な説明を拒否したが、マイケイリッジュ氏は2017年3月時点のLinkedIn[リンクトイン]プロフィールで、アバウトのコマース売上は前年比で100%以上増加しており、「収益性が高い」と自慢している)。
具体的なコマース戦略
アバウト・トラベルではアフィリエイトリンク戦略がうまくいった。しかし、それ以降に新しくローンチしたバーティカルサイトでは、方向性を変えた。ハイパーリンクをそのままサイトのコンテンツ中に広げるのではなく、たとえばテクノジーサイト「ライフワイヤー(Lifewire)」などには、コマース専用のコンテンツテンプレートを使った、独立した購入セクションが設けられている。読者に生じるかもしれない混乱を無くすためだ。「ユーザーに対してとびきり誠実であろうとすることの一環だ」と、ボーゲル氏は語る。
こうしたセクションは、Google検索からページにやってきた人たちにも役立つ。アバウトの新しいバーティカルサイトものコンテンツ戦略は、以前もそうであったように、検索情報に基づいている。そして、コマースではこれがより厳格に適用される。「人々が探しているものを提供したい」と、マイケイリッジュ氏は語る。
オーディエンスを構築する試みとしてコンテンツミックスに突飛なものを混ぜるパブリッシャーがいるなか、アバウトのコマース投稿は、サイトにとって競争力があるテーマについてしか作られない。たとえば、「限られた予算内のベストなノートパソコン」のようなテーマの投稿は、ライフワイヤーで特にパフォーマンスがいい。
コマース中心のコンテンツが全体に占める割合は小さいと、ボーゲル氏が語る一方で、アバウトの各サイトは広範囲の話題で競争力がある。アバウトが築き、新ブランドたちに移行された長年に渡るドメインオーソリティのおかげで、たとえばライフワイヤーのコマース中心の投稿は、すでに多数が「ワイヤーカッター(The Wirecutter)」 「PCマグ(PCmag)」 「デジタル・トレンズ(Digital Trends)」など競合サイトをGoogle検索順位で上回っている。
今後1年かけて体制構築
アバウトのサイトはこれから12カ月をかけて成熟する予定であり、マイケイリッジュ氏のコマースチームは最終的に5倍の規模になるかもしれないとボーゲル氏は語る。現在フルタイムのスタッフは3人しかおらず、コンテンツの大半は専門家による毎週の寄稿だ。
このオペレーションを拡充するため、チームは、非常に明確なスキルセットをもつスタッフを探すことになるだろう。「必要なのは編集のセンスがある人と、数学がとても得意な人だ」とボーゲル氏は語った。
Max Willens (原文 / 訳:ガリレオ)