ブリティッシュ・ヴォーグ(British Vogue)のインスタグラムストーリーにはちょっとした遊び心がある。その手法は功を奏しているようだ。2016年、同誌のフォロワー数は前年から倍増し、200万人に達している。これはひとえに12月以降、インスタグラムストーリーと動画制作に磨きをかけてきた賜物だ。
ファッションブランドが公開するインスタグラムのフィードは非常に洗練されており、手間暇かけて丁寧にまとめられている。しかし、ブリティッシュ・ヴォーグ(British Vogue)のインスタグラムストーリーにはちょっとした遊び心がある。
「我々は、クローゼットのなかで撮影するなど、特別感のあるものを取り混ぜながら、何かしら楽しいことをやろうと考えている」と、Vogue.co.ukのアクティングディレクター、サム・ロジャース氏は語る。
その手法は功を奏しているようだ。2016年、同ファッションブランドのイギリス国内アカウントのフォロワー数は前年から倍増し、200万人に達している。これはひとえに12月以降、インスタグラムストーリーと動画制作に磨きをかけてきた賜物だ。
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チューブラーラボ(Tubular Labs)のデータによれば、同ブランドの2月におけるインスタグラムアカウントの動画再生回数は約85万回だったという。ただ、世界中でファッションウィークが開かれる2月は、この業界にとって特別な月であることも事実で、1月の動画再生回数は40万回だった。同社のストーリーには通常6本のビデオクリップが掲載されており、1本あたりの視聴数はおよそ8万ビュー程度だという。
コンテンツ制作の秘訣
2016年8月にストーリー機能がリリースされた当時、ヴォーグは毎日のように更新していた。だが、次第に週2〜3本にまでペースダウン。この段階になると、同社はいくつかの教訓を得ていたようだ。「我々は、ただフィナーレとランウェイの映像の繰り返しにならないよう意識している。ほかを見回すと、どこもかしこもそんな感じだからだ」と、ロジャース氏は語る。
その代わり、ヴォーグは普段見られないような舞台裏にもカメラを向ける。芸能人を起用することもある。たとえばアメリカ人モデルのカーラ・テイラーは同社のフィードに舞台裏日記を寄稿した。ストーリーはブランドにアクセスする機会を提供するためのものなので、ヴォーグ従業員の1日に密着といった動画も定期的に公開している。
ブリティッシュ・ヴォーグのデジタル画像編集者、アレステア・ニコル氏は1年を通じてストーリーの多様なビジュアルボキャブラリー、つまり映像パターンを打ち出してきた。オーストラリアの石鹸「ネイバーズ」がなくなったら世界がどうなってしまうだろう、というようにメッセージ性のあるストーリーは、インパクトのある画像とグラフィックからはじまる。記事で取り上げているタレントを起用するといったような、美にまつわるストーリーは、スピード感や切迫感がある。ショッピング用のストーリーは、製品によりスポットライトをあてている。

ブリティッシュ・ヴォーグのインスタグラムストーリーは、1本あたりおよそ8万ビュー
ストーリーのユーザー側のデフォルトはミュート(消音)設定だ。しかし、作品のなかには、音声を伴うものもある。最近の例では、ファッション展覧会のため、チャッツワースハウスに向かうアレクサンドラ・シャルマン編集長に密着し、展示物について語ってもらう、といったものだ。ときにはスワイプ機能で視聴者を関連記事に誘導することもある。
先述のファッション展覧会のストーリーでは、4つ目のクリップに、スワイプして詳細記事へリンクするよう提示されていた。リンク先はチャッツワースハウスで500年前の衣装が発見された経緯、つまり展覧会の基本的な背景を語る記事だ。ロジャース氏によると、具体的な数値は不明だが、これでトラフィックが増えるという。
制作体制と活用方法
インスタグラム専門のチームはなく、皆が責任を共有しているため、総勢10名のデジタルチームと紙媒体チーム全員にアクセス権がある。部をまたいだ編集プランもある。企画推進を後押しするのは同ブランドの副編集長兼アソシエイトデジタルディレクターのエミリー・シェフィールド氏だが、投稿者を限定するという厳格さはなく、誰でも寄稿できる。ストーリーの場合、コンテンツはニコル氏がフィードバックを行うことで構成の一貫性を維持している。
ストーリーを除き、インスタグラムはブリティッシュ・ヴォーグにとって「トラフィックをもたらすもの」だ。「ほかのブランドと話したのだが、これは当社特有のものだと思う」とロジャース氏は語った。ユーザーはブランドの自己紹介欄からランディングページに直接リンクしてくるので、投稿記事と編集者が切り離されることなくつながっている。
1日の投稿数は4から8件。コラージュモチーフの商品を紹介する記事から、モデルのジゼル・ビュンチェンの馬上姿といった物語性を目的としたものまで、内容は幅広い。それらを読んだユーザーがランディングページへと直接リンクしてくる。ちなみに、馬上のモデルを描いた投稿は企画ページ「乗馬好きのモデル(The fashion girls who’d rather be riding)」にリンクされている。
インスタグラムに投稿されたものの80%が記事にリンク付けされている。ロジャース氏の試算では全トラフィックのうち、インスタグラム経由のものは10%未満。同社はインスタグラムに広告は出していないが、ブランデッドコンテンツを数本公開している。主な目的は、読者の意識を高め、さらに掘り下げた記事にも興味をもってもらうためだ。
同社は需要に応じてインスタグラムのライブストリーミングもいくつか公開したが、定期的に公開するつもりはないという。「やらされている感がある」というロジャース氏は、最後に「ブランドがライブ配信を通知するというのは、どうも押しつけがましい感じがする。ストーリーのほうがずっと繊細だ」と、つけ加えた。
Lucinda Southern(原文 / 翻訳:Conyac)
Images: Courtesy of British Vogue via Instagram.