「チキンガール:ザ・ムービー(Chicken Girls: The Movie)」は、70分のYouTube上のフィーチャーフィルムで、動画スタートアップのブラット(Brat)が制作した。50万ドル(約5500万円)の制作費を要したが、配信開始以来、1000万ビューを獲得。平均視聴時間は30分だという。
「チキンガール:ザ・ムービー(Chicken Girls: The Movie)」は、YouTube上で配信される上映時間が70分のフィーチャーフィルムで、女子高生のグループが自校のダンスを守るために団結する話だ。その独自の歌とダンスナンバーから、ディズニー(Disney)のテレビ向けヒット映画、「ハイスクールミュージカル(High School Musical)」に酷似している。動画スタートアップのブラット(Brat)が制作したこの映画は、50万ドル(約5500万円)の制作費を要したが、7月第1週の配信開始以来、1000万ビューを獲得した。ブラットによると、平均視聴時間は30分だという。
ブラットの動画シリーズのひとつをもとにした「チキンガール:ザ・ムービー」は長編プログラムの一例であり、ブラットはこの分野で有名になりたいと考えている。設立後わずか1年弱のブラットは、自社を安価な動画ブログ、あるいはYouTube上でよく見られるユーザー生成動画を配信する企業ではなく、若いオーディエンス向けにテレビ番組と同等の品質のプログラムを提供するデジタルネットワークだと認識していると、共同創業者であるロブ・フィッシュマン氏は言う。
「人気のあるYouTubeを採用している。通常YouTubeに投資される額よりも、ずっと多くの投資をして、テレビ番組コンテンツを制作する」と、フィッシュマン氏は言う。同氏は、Twitterに5500万ドル(約61億円)で売却されたインフルエンサーマーケティングエージェンシー、ニッチ(Niche)をブラットの共同創業者、ダレン・ラッチマン氏とともに創業した経歴を持つ。「非常に優秀な脚本家やディレクターを雇い、本当に高品質な番組の制作を試みる」。
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「ティーンの興味に注力」
ブラットはこれらのプログラムに投資するために、いくばくかの資金を調達してきた。7月第3週のはじめ、デジタルネットワークの同社はアンカーレイジキャピタル(Anchorage Capital)が支援する3000万ドル(約33億円)に及ぶ新規の資金調達ラウンドを発表した。昨年、同社はスタートアップとしてシャリ・レッドストーン氏のアドバンシットキャピタル(Advancit Capital)やNBAオールスターのケビン・デュラント氏を含む投資家から1000万ドル(約11億円)を調達していた。
新規に資金調達した資金のいくらかは、通常1シーズンの制作に何十万もの資金が必要になるブラットの番組制作に充当されると、フィッシュマン氏は言う。ブラットは今年、30シーズンに及ぶこれらの番組のうち、12番組を制作したいと考えている。
現在、ブラットは200万を超える購読者のいるYouTube上で番組を配信している。同ネットワークはインスタグラムやTwitterも活用しており、それらのプラットフォーム上でも動画クリップを配信したり、写真を掲載したり、マーケティングを行ったりしている。Snapchatのディスカバー(Discover)チャネルも活用する可能性があると、フィッシュマン氏は言う。ブラットは今後、オーディエンスが求めれば、ほかの新しいプラットフォームも利用して配信を拡大する予定だ。
「ティーンが注目しているものに注力する。それが、YouTubeやインスタグラムだ」と、フィッシュマン氏は言う。「この業界には、事業開発に時間をかけすぎてオーディエンスの開拓に投資しない企業が多すぎる。顧客層が新しい場所を目的地にして移動するなら、我々も喜んでそこへ行く」。
資金調達で営業を拡大
ブラットはまだ十分な収益を上げておらず、これまではYouTube(や同社が動画クリップを配信しているTwitter)で販売しているプログラマティック広告からの収益に頼ってきた。このYouTubeやTwitterで昨年、「数百万ドル(数億円)」の収益を上げたと、フィッシュマン氏は言う。
「制作に有意義な額を投資しようとする場合、プラットフォームのサポートのみで、すべてをやり遂げるビジネスモデルは、まだ存在しない」と、フィッシュマン氏は言う。
ブラットは、新規に資金調達した資金を使って、営業担当者を雇う予定だ。というのは、同社は制作物へのスポンサー枠や広告枠の販売を開始しているからだ。
その宣伝文句は、どのように顧客は実際にブラットを利用し、同社の番組視聴に時間を費やしているのか、という利用形態を軸にすることになるだろう。フィッシュマン氏は、YouTubeのデータを引用し、同社チャネルのトラフィックの約40%は、YouTube検索、あるいは、購読者への通知、インスタグラムなどのプラットフォーム上にあるブラットの別のソーシャルアカウントから来ているという。残りの60%のトラフィックは、YouTube上で人々が通常の閲覧を行った結果、生じている。「1年前なら、この配分は99%が通常の閲覧、1%が直接のトラフィックだっただろう」とフィッシュマン氏。「視聴率には真の意味が隠れている」。
「サービス業にはならない」
チューブラー・ラボ(Tubular Labs)によると、ブラットは6月にYouTube上で合計3800万近い動画ビューを生み出したという。このチャネルは、このペースでいけば、7月には5000万動画ビューになりそうで、1回の視聴の平均視聴時間は、約10分であるとフィッシュマン氏は言う(現在、ブラットのエピソードの大半は10分から15分で編成されており、この長さはオーディエンスが長編のエピソードを求めた結果、ブラットが行き着いた「最適な時間編成」だと、フィッシュマン氏は言う)。
さらに、ブラットは、映画やテレビ番組を制作して、ほかのプラットフォームへ販売できるようなスタジオになるつもりはないと、フィッシュマン氏は言う。ブラットはFacebookと提携して、Facebook Watch(ウォッチ)でティーンのシリーズドラマ「ターント(Turnt)」などは配信するが、そういった類の提携は非常に珍しい(だからといって、ブラットがほかのプラットフォーム上で番組の配信を開始しない、ということではない)。
「当社は、番組の管理者であり、運用者でもありたいと考えている。当社のコンピテンシーとして重要なのは、ネットワークを通してブランドを構築し、ダイレクト広告を販売することだ」と、フィッシュマン氏。「制作は行うが、サービス業になるつもりはない」。