サイト訪問者はサクサクと軽快にブラウズできるウェブサイトを望むが、広告主はブランドセーフティやビューアブルな広告を重要視する。その結果、広告による利害関係が優先され、ユーザー体験が犠牲になってしまうことが多い。
サイト訪問者はサクサクと軽快にブラウズできるウェブサイトを望むが、広告主はブランドセーフティやビューアブルな広告を重要視する。その結果、広告による利害関係が優先され、ユーザー体験が犠牲になってしまうことが多い。
データアドテク関連のコンサルティングを行うレッドバド(RedBud)が、米DIGIDAYのために調査したイギリスのパブリッシャーの上位20社中の15社のデータによると、ブランドセーフティ、ビューアビリティ、そして認証タグが、ウェブサイト全体の容量の10%を平均的に占めているという。なかにはその数字が21%近くに達しているというケースもあった。この企業は、広告やエディトリアルコンテンツ、トラッキングピクセルやクッキーシンクのリダイレクトなどの容量をキロバイト単位で計測していた。
当然、二次的に発生するページ遅延もあるため、結果としてユーザー体験にも遅延が発生する。この記事の執筆にあたってインタビューしたパブリッシャー2社によれば、ビューアビリティ、ブランドセーフティ、そして認証タグによって、デスクトップ環境で最大6秒のページ遅延が発生していたという。
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「顕著な遅延」の原因
だが、レッドバドが計測したブランドセーフティ、ビューアビリティ、認証タグによって起こるページ表示の遅延時間の平均値は、パブリッシャーの1ページビューあたりおよそ1秒だった。「インターネットの接続速度やベンダーのサーバー側のパフォーマンス、そしてパブリッシャーサイトの構造の複雑さの度合いなど、別の要因もあるだろう」と、レッドバドの共同設立者のクロエ・グラッチフィールド氏は語る。「たとえば競合するタグが多すぎる場合、レスポンスは遅くなる」。
それでも、それが顕著な遅延を引き起こしているのは明らかだ、と彼女は付け加えた。匿名希望のあるパブリッシャー幹部によると、1ページあたり5つの広告枠がある場合は、その5つの広告によって1ページビューあたり平均70回のコールが発生し、1コールあたりにかかる時間は200~300ミリ秒ほどだという。そして3社のベンダーが、一連のブロッキングやトラッキングコールをしている。ビューアビリティベンダーのなかでも、インテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science: 以下IAS)が、ひとつの広告リクエストのたびに9~11回のコールを行う、もっともビューアビリティが「重い」ベンダーだとして注目を集めたと、そのパブリッシャーは語った。
この企業によると、IASの認証コードは48キロバイトだが、これは2000年代初頭に業界が定めた標準的なディスプレイバナーの容量とほとんど同じサイズだという。「今日のデバイスやインターネット接続の速度を考えれば、これが遅延要因として与える影響はほぼなく、デジタル広告のエコシステム内での透明性の方がはるかに大切だと信じている。パブリッシャーにも広告主にもメリットを与えられるだろう」と、IASの広報は語った。
だが、この記事にあたり話を聞いた5社のパブリッシャーは、それをどうにかしてほしいと望んでいる。
「行き着く先は、信頼の欠如」
ビューアビリティの要求事項を満たすためにパブリッシャーが四苦八苦しているのは、いまに始まったことではない。エージェンシー側が定めたビューアビリティの目標を満たすために、想定以上のインプレッションを求められたり、ページ表示の二次遅延への対処に関するプレッシャーはこれまでもあった。だが、エージェンシー自身のブランドセーフティやビューアビリティ、そして広告にまつわる認証タグに対する要求が高まるにつれて、昨今は問題がさらに大きくなっていると、関係者の多くは見ている。
「(ビューアビリティ、ブランドセーフティ)ベンダーが増えてきて、ますます問題は大きくなった」と、パブリッシャー幹部のひとりは語った。「これまでは、利用していた認証ベンダーは1社だけだったが、いまや広告主は、我々が利用しているものの上のレイヤーで自身の技術を使いたがる。これはブランドセーフティやビューアビリティに対する懸念が大きいためだ。エージェンシーも広告主も、彼ら側での処理が増えることで、コールの回数も、二度手間も増える」。
ビューアビリティやブランドセーフティに関するタグを含んだ広告クリエイティブを提供するエージェンシーは、今後も増えるだろう。そして、それらはパブリッシャー自身のツールに、それもしばしば同じベンダーに追加される。「2つの毛布で広告を包むようなものだ」と、そのパブリッシャーは語る。「行き着く先は、信頼の欠如だ」。
モバイルではさらに問題
パブリッシャーとエージェンシーの双方でビューアビリティのタグが使われることによって、双方で表示されるものが大きく異なる(レッドバド調べでは最大15%)という意図していなかった結果を招いてしまう。パブリッシャーは、エージェンシーが特定のインプレション獲得に対する支払いを拒否するという状況に直面するが、その原因は、その広告が表示されていなかったという事実が、自身のデータによって明らかになってしまうからだ。「多くの場合、ビューアビリティにインパクトを与えるのは買い手側の実際の広告表示であり、パーソナライズされるのはその後なのだ」と、デジタルパブリッシャーの幹部のひとりは語った。
4社のパブリッシャーが、現在のビューアビリティと認証プロバイダーには問題があると言及している。そこがウェブサイトの容量の大部分を占め、結果として処理時間に影響を与えてしまっているのだ。その幹部によると、これはモバイル端末ではさらに大きな問題だ。
「業界には、我々自身が招いた根本的な問題がある」と、雑誌のパブリッシャーの幹部は語る。「信頼の欠如が原因で、パブリッシャーは買い手側で何が起こっているかを検証する技術を自身で導入しなければならなくなっている。彼らのデータ取得方法が本質的に複雑なため、認証プロバイダーがアドサーバーのあちこちで頻繁にコールを行うことになってしまった」。
実質的な解決策とは?
パブリッシャーは実質的な解決策を模索している。「ここ3カ月で、再び問題が大きくなっている。どうすれば改善できるかの検討が必要だ。全員が同じタグを使えば、Google Ampのような手法で毎回タグをキャッシュしたり保存するなどの、より良い方法をとることもできるだろう。さらに、パブリッシャーが1社の特定のベンダーを使えば、コードも保存しておくことで毎回ロードせずに済む」と、そのパブリッシャー幹部は語った。
ビューアビリティの相違を、より細かく精査しはじめるものも出てきた。「我々は、すべてのキャンペーンで、アクティベーションのプロセスの前で自前の認証ツールを導入することを検討している」と、別の雑誌グループの幹部は語った。「これにより、タグに関するいかなる問題でも、事前に特定することができるようになる。エージェンシーパートナーとも密に協働するつもりだ。まず最初に相違点の範囲を特定し、次に整合性があればそれを特定することで、ビューアビリティの相違に関する理解を深めることができる」。