「Instagram は、我々にとってのマスメディア」:BOTANISTのInstagramフル活用戦略

いまや新しいデジタルインフラとなりつつあるInstagram。その著しい成長をともに歩んできたブランドがある。大阪に本社を置く、株式会社I-ne(アイエヌイー)のBOTANIST(ボタニスト)だ。

「ボタニカルライフスタイル」というコンセプトを掲げるBOTANISTは、植物由来の原料を配合したヘアケアなどを扱うブランド。発売は2015年1月で、まだ4年ほどの歴史しかない。しかも、BOTANISTはサロン品質の製品であるため、シャンプー1本の価格が1400円(490ml、税別)と少々お高めだ。

それにもかかわらず、発売直後からECで順調に売り上げを伸ばし、2018年6月にはシリーズ累計5000万本を突破。わずか3年半で大手メーカーの人気ブランドに比肩する販売実績を作り上げてきた。その快進撃を支えたのが、Instagramをフル活用したデジタルマーケティング戦略だったという。

ファンマーケティングに最適

日本でも2018年には2900万月間アクティブアカウントを達成し、驚異的なスピードでユーザー数を増やし続けているInstagram。いまやデジタルマーケティングに取り組む企業の多くが、Instagramありきの設計を行っている。しかしI-neのように、2015年ころからInstagramでプロモーションを行っていた会社は少なかったのではないだろうか。

当時の状況について、Instagramのブランド広告(化粧品・消費財業界)を担当するフェイスブック ジャパンの佐藤太泰氏は「当時は、ようやくフィード広告が導入され始めたころで、積極的にブランディングに活用しようと考える国内企業は非常に少なく、海外でも先鋭的なブランドに限られていた」と語る。

そんな状況にも関わらず、なぜI-neではほかのSNSではなく、Instagramにいちはやく注目したのか。「Instagramを選んだ大きな理由は、ファンマーケティングに適したコミュニケーションツールだと感じたから」と同社の取締役ブランドマーケティング本部長の、今井新氏は語る。当時のInstagramは、アートやファッションが大好きで、流行感度の高い人たちが集う、コミュニティ化した雰囲気があった。一種の閉鎖性があったからこそ、ブランディングと良質な口コミマーケティングに最適な場だったのだという。

I-neがそこに気づけた要因は、今井氏をはじめとした取締役の多数が、ストリートカルチャーに精通していたからにほかならない。当時、ストリートで発信力のある人がInstagramを使っており、それに多くの人が影響を受けていたことに着目していたという。I-neの会社としての強さは「これからまさにトレンドになりそうなものをいち早くキャッチし、どこも真似できないスピード感で、商品開発からブランディングと販売を一貫して実行できる企業風土」にある。

 

 「Instagramはファンマーケティングに適したコミュニケーションツール」と今井氏

「Instagramはファンマーケティングに適したコミュニケーションツール」と今井氏

 

海外展開においても強み

I-neのInstagram運用について、フェイスブックの佐藤氏は「ブランドアイデンティティが確立されており、細部に至るまでの表現が一貫している。また、ひとつひとつのビジュアルや動画活用の仕方が特徴的かつ優れている」と評価する。確かに、BOTANIST公式アカウント(@botanist_official)の投稿内容は、商品紹介、キャンペーンのお知らせ、植物に関する小ネタや、ユーザーへのメッセージなどさまざまだが、それらを一覧で見ると、見事に雰囲気が統一されているのがわかる。

BOTANISTというブランドを展開するにあたって、今井氏は「決めていたこと」があると振り返る。ひとつは、すべてのクリエイエィブで「ボタニカルライフスタイル」を発信すること。もうひとつは、特定のモデルをフィーチャーしたり、「きれいな髪」をクローズアップしたりすることはせず、あくまで「商品を見せること、ブランドの世界観を表現すること」に主軸を置くことだ。そうした工夫や統一したトーン&マナーのおかげで、「商品が写っていない写真でも、消費者が見たときに『これ、BOTANISTの投稿だよね』と自然と感じられるようになっている」と佐藤氏は語る。

また、ビジュアルでブランドイメージを作り上げた強みは、海外展開においても遺憾なく発揮されている。現在BOTANISTは、台湾、中国でも販売しているが、わざわざそれらの国に合わせた投稿を作らなくて済むのだという。ビジュアルでコミュニケーションをとることができるInstagramの特性は、海外展開を見据えている企業にとっては見過ごせない利点だ。

 

BOTANISTは「ブランドアイデンティティの発信が徹底されている」と佐藤氏

BOTANISTは「ブランドアイデンティティの発信が徹底されている」と佐藤氏

 

ブランディングありきの戦略

I-neではすでに、Instagramのフィード広告、ストーリーズ広告を実施しており、ショッピング機能も運用中だ。ストーリーズ広告に関しては、顧客からのプレファレンス(好感度)が高く出る傾向があるという。また、「ショッピング機能を利用して購入したユーザーのLTV(顧客生涯価値)は、ほかの手段で購入したユーザーよりも高くなる傾向が見られる」と同社取締役 販売本部長を務める伊藤翔哉氏は補足する。こうした獲得施策が結果を残しているのは、一貫したブランドアイデンティティの発信がベースにあってこそだ。

さらに、Instagramのクリエイティブは、I-ne社内でブランドイメージを共有する際にも活用されている。販売部門の中で広告プランニング・運用を行うチームの責任者である伊藤氏は、「販売に関する広告のクリエイティブや手法については、必ずブランディングチームに相談し、ブランドイメージと齟齬がないかを確認する。ブランディングが世界観を作りこんでくれているから、商品が売れているんだという意識は徹底している」と語る。

「ブランディング優先」という話を聞くと、販売部門がブランディング部門に遠慮をしているような話となりがちだが、実際は違う。販売部門は販売部門で高い数値目標を設定し、クリアしているという自負があるからこそ、通常対立することの多いブランディング部門と販売部門がいい関係性を保ち、その相乗効果で売り上げを牽引できているのだ。

こういったブランド重視の姿勢を伊藤氏は、「会社の文化として浸透させたい」と話す。それこそまさにI-neのコーポレートアイデンティティといっていいだろう。

   

 

「ブランドの世界観があってこそ、商品が売れる」と語る伊藤氏

   

インフルエンサー施策の成功

また、初期のBOTANISTの快進撃は、インフルエンサーの影響が大きかったと言及されることが多い。実際のところ、それは意図した戦略だったのだろうか? 伊藤氏は「人気モデルやタレントさんの紹介で認知度が上がったのは事実。しかし、そういった方々に最初からPRをお願いしたというわけではない」と語る。

彼らがまずギフティングを行ったのは、ほかのブランドで関係値のあった美容師やスタイリストたちだったが、それには理由があった。「フォロワーは少ないけど、ファッション業界では影響力がある目利きのスタイリストさんは、実は結構多い」と、今井氏は語る。こういった目利きのプロが紹介した情報を見たモデルやタレントさんが自発的に利用、投稿し、それを見たファンに波及するという形で情報が拡散していくのだという。

彼らの手法は、「芸能人や有名人を活用したインフルエンサーマーケティング」ではなく、興味関心に関する情報の起点となるインフルエンサーを見つけ出し、そのInstagramでのネットワークを活用したオーガニックなインフルエンサーマーケティングからはじまったといえるだろう。

「我々にとってのマスメディア」

BOTANISTの今後の広告展開について、今井・伊藤両氏は「もっと深くInstagram広告をやっていきたい」と語る。加えて、原宿にある旗艦店BOTANIST Tokyoでのライブ配信やライブコマースも視野に入れているという。その一方、テレビCMなど、いわゆる「マス広告」の展開はあまり考えていないと、伊藤氏は続ける。

「BOTANISTは、これまでもテレビCMは実施したことがない。弊社は20~30代の女性をメインターゲットにした商材が多いが、彼らの多くはInstagramを活用している。そう考えると、我々にとってのマスメディアはInstagramだとも考えられる。そのため、今年からフェイスブックの皆さんと協働で、Instagram上で勝てるクリエイティブの開発と、PDCAの整備に動き出しており、2019年は更に連携を深めていきたいと考えている」。

当初はビジュアルを共有し、インスピレーションを得るためのコミュニティだったInstagramが、次第にユーザー数を増やし、特に若い世代にとっては、生活におけるプラットフォームへと進化してきた。佐藤氏は、「次第に生活における行動に結びつく傾向が出てきたことが最近の特徴」と述べる。

そうしたユーザー行動のひとつである「いま見た商品をすぐに買いたい」を具体化させたのが、2018年にリリースしたショッピング機能アクションボタンだ。「今後もユーザー行動を具体化する施策を増やしていきたい。企業視点では、ビジネスの助けになるプラットフォームとして、もっと進化させていきたい」と同氏は締めくくった。

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Written by 内藤貴志
Photo by 渡部幸和