コロナ禍を受けて、2020年3月からイベントのバーチャル化を進めてきたブルームバーグ・メディア(Bloomberg Media)。バーチャル化自体は2020年から続く一種のトレンドではあるが、同社は一歩踏み込み、バーチャルイベントの有料化にも取り組んでいる。
コロナ禍を受けて、2020年3月からイベントのバーチャル化を進めてきたブルームバーグ・メディア(Bloomberg Media)。バーチャル化自体は2020年から続く一種のトレンドではあるが、同社は一歩踏み込み、バーチャルイベントの有料化にも取り組んでいる。
2020年のバーチャルイベントは、オーディエンス確保のため無料で開催され、広告による収益化が図られた。だが、ワクチン接種が進むなか、現実の会場に参加者が集うイベントが再開されるのもそう遠いことではないのかもしれない。
ブルームバーグ・メディアが目指しているのは基本無料で、追加機能が有料になる「フリーミアム」モデルだ。ブルームバーグ・ライブ(Bloomberg Live)のグローバル責任者、パトリック・ギャリガン氏は、「スポンサー収益型のイベント事業を置き換えるモデルではなく、あくまで事業化して収益拡大を目指している」と説明する。「バーチャルイベントはブルームバーグが有するコンテンツをはじめ、同社のジャーナリストや報道部門に接する機会を増やす場と位置づけており、いずれはリアルのイベントでも同様の取り組みを行いたい」としている。
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また、イベントを通じて会員登録者を増やすことも目指しており、1月26日から28日に開催されたブルームバーグ・メディアによる毎年恒例のイベント「ザ・イヤー・ヘッド(The Year Ahead)」は、有料のオプションも導入された。メインステージで行われる生放送や質疑応答は無料登録だけで参加できたが、有料パッケージも2種類用意された。125ドル(約1万3500円)のパッケージ「ニュース&ネットワーキング」では3カ月、475ドル(約5万1000円)の「プレミアムパス」では1年間のサブスクリプションコンテンツが利用できるのに加えて、メインステージの追加コンテンツや参加者とのネットワーキング、2冊の書籍の著者による公演、ポッドキャスト番組へのアクセスが可能だ。また、ブルームバーグおよびブルームバーグ・ビジネスウィーク(Bloomberg Businessweek)のトライアルオプションも含まれており、有料チケットの購入者がトライアルを経て会員になることを狙っている。
引き続き有料モデルを採用
IBMとアリックスパートナーズLLP(AlixPartners LLP)がスポンサーを務めた「ザ・イヤー・ヘッド」は、ブルームバーグおよびその他のSNSを通じて100万人が参加した。ギャリガン氏は「有料チケットの売れ行きは当初の目標の4倍以上になった」としている(売上の総数および各パッケージの売上は非公開)。
この成功を受けて、4月に行われるブルームバーグ・グリーン・サミット(Bloomberg Green Summit)と5月に行われるブルームバーグ・ビジネスウィーク(Bloomberg BusinessWeek)でも引き続き有料モデルを採用する予定で、現在詳細を詰めている段階とのことだ。
ブルームバーグ・メディアの2021年第1四半期のイベント収益は、前年同期比よりも速いペースで伸びている。これは主に、スポンサー収益の増加に起因する。2020年7月、ブルームバーグは年末までのイベントスポンサーのインベントリーをすべて売り切っていた。
無料のバーチャルイベントの開催は単純な話ではない。体験型マーケティングエージェンシーのホークアイ(Hawkeye)では、あるクライアントの大手パブリッシャーが毎年恒例のイベントを無料のバーチャルイベントへと移行した。すると参加者は半減し、エンゲージメントは大幅に落ち込んだ。ホークアイのCEO、W・ジョー・デミエロ氏は「イベントが無料化したことで知覚価値が下がったためだ」と説明する。
新たなコンテンツの試験運用も
ブルームバーグ・メディアは、バーチャルイベントを通じて新たなコンテンツの試験運用も行っている。たとえば「ザ・イヤー・ヘッド」では、ブルームバーグのポッドキャスト番組の生放送も行われた。ギャリガン氏は「評判は上々で、今後もイベントでの生放送を予定している。既存の番組だけでなく、新番組の立ち上げも考えている」と意気込みを語る。
「バーチャルイベントは、ブルームバーグに新たなビジネスモデル創出をもたらしてくれた」。ギャリガン氏の自信は揺るぎない。
[原文:Bloomberg Media is testing paid tiers for virtual events]
SARA GUAGLIONE(翻訳:SI Japan、編集:長田真)