CONTENT & COMMERCE

ファンを駆り立てる、ブリーチャー・レポートの EC 戦略:「オーディエンスを喜ばせ、収益多様化につなげる」

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新型コロナウイルスによってメディアの売上やコンテンツ編成が大混乱するなか、eコマースの波をつかんで乗りこなし、さらには乗り越えようと励んでいる注目パブリッシャーのひとつに、ブリーチャー・レポート(Bleacher Report)がある。

ブリーチャー・レポートのコマース戦略で重要な役割を握るのはファンの存在だと、同社の親会社ターナー・スポーツ(Turner Sports)でマーケットプレイスイメージおよび収益化部門の責任者を務めるエド・ロメイン氏は語る。「ファンは自分が応援している選手との結びつきを得る機会に飛びついてくる」。そして、どれだけ熱心なファンなのかを示すためにお金を費やすという。

同社はNBAおよびNFLの選手会とパートナーシップを結んでおり、今年初めには両選手会から選手の名前や画像、似顔絵を掲載した製品を販売する権利を獲得しているため、どの選手のファンであろうとも購入したくなるようなグッズの制作に踏み込めるようになった。

コマース事業は急成長

ブリーチャー・レポートによれば、年初には全社収益の10%を占める程度の規模だったeコマース事業が、現在では前年比25%増にも届きそうな勢いで成長している。売上金額について正確なところは明らかにされていないが、販売されている商品の価格帯はTシャツの25ドル(約2600円)から、バスケットボールジャージの250ドル(約2万6000円)までと幅広い。また、新規顧客数は2020年度だけで40%増加しているという。

このeコマース事業の伸びを牽引しているのが、ブリーチャー・レポート・ショップ(Bleacher Report Shop)という、限定のアパレルコレクションを販売するショップだ。この限定コレクションは、プロスポーツ界における重要イベントに関連して発売されるものがほとんどだ。

2019年にドロップされたコレクションの数は10種類だったが、今年はそれが15種類にまで増えている。今年発売になったもののひとつに、NBAリミックス・コレクション(NBA Remix Collection)がある。これはNBAの8チームのロゴを、チームの本拠地を拠点としているヒップホップアーティストがアートな雰囲気にアレンジしたデザインを使い、アパレルアイテムに仕上げたコレクションだ。ほかのコレクションも、アーティストとコラボレーションしながらブランドイメージをしっかり守り、しかも通常販売されているグッズとは差別化されたものになっている。

オーディエンスとブランドを結ぶ

ブリーチャー・レポートはNBA・NFL両選手会とのパートナーシップのなかで、年間に一定量以上のグッズを販売しなければならないと定めた最低保証契約を結んでおり、売上の一部は両選手会に入るようになっている。2021年はさらにコレクションの数やドロップ回数を増やし、オールスター選手だけでなく、今後の活躍が期待される新人有望選手などのグッズも制作して、商品を購入するファン層の間口を広げたい狙いだ。

「オーディエンスの関心を引きつけて喜ばせること、そして事業を多角化して収益を増やすことを目指すデジタルメディアブランドが、ショップを立ち上げるのは自然で理にかなった展開だと考えている。ショップというのは面白くて興味を掻き立てられるものでなくてはならない。大事なのは楽しむことだ」と、コマースコンサルティング企業ロックウォーター(RockWater)の創業者、クリス・アーウィン氏は語る。

アーウィン氏によれば、ブリーチャー・レポート・ショップのコマース戦略に近い事例として、ストリートカルチャーメディアのコンプレックス(Complex)が主催するイベント、コンプレックスコン(ComplexCon)があるという。このイベントには数々のストリートブランドが出展するだけでなく、(開催を記念しての)コラボレーショングッズも発売され、いち早く会場に入って商品を手に入れたい消費者が入場料を数百ドル(数万円)も支払うような状況になっている。パブリッシャーのコマース運営は「ブランドの世界観を損なわず、オーディエンスの好みをしっかり理解していることを示す、ユニークな形で実行すべき」だという。

ブリーチャー・レポート・ショップには、欠品したら補充される定番商品も揃っている。限られた数の商品を期間限定で「ドロップ」して、購買心を煽るようなやり方で販売されるコレクションは、ほんのわずかだ。その販売方法も、皆が欲しがるスニーカーを限定販売するナイキ(Nike)の手法やショッピングプラットフォームのNTWRKが、ほかでは購入できないアイテムを話題にするための販売とは異なり、NFLのドラフトやスーパーボウル、NBAオールスターゲームといった大イベントとコレクションを結びつけるためのタイミングを意識したものになっている。

ブリーチャー・レポートのコマース事業はそもそもファンとの関わりを深めるため、そしてアスリートやアーティストたちとの関係をコラボレーション商品の制作を通じて深めていくための取り組みとして始まった、とロメイン氏は話す。だが、時間の経過とともに(ターナー・スポーツの親会社である)ワーナーメディアのスポーツポートフォリオへの統合が進み、ショップを所有・運営するプラットフォームに統合する方法が見つかるにつれて、コマースが主な収益源となる可能性が出てきている。

サイト上でのプロモーションとして有望な伸びを見せている例のひとつに、試合の様子を報じる画面の下3分の1に表示されるバナーがある。ロメイン氏によれば、この位置に広告が表示されるとグッズ売上が急増するという。

将来性はまだ未知数

eコマースが「広告収入に取って代わることはない」と語るロメイン氏は、「コマースが事業としていかに有意義なものになるのかは、まだ未知数だ」とも述べている。

「事業立ち上げ当初は、試合のハイライトやスコア以外のものを求めてサイトを訪問する人がいるかどうかがわからなかったので、(コマースの伸長には)かなりの驚きがあった。ただ、初期の20種類程度のコレクションを見る限りでは、ファンは確実にグッズを購入している。またアーティストや選手たちがここでしか購入できないアイテムを、パブリッシャーとコラボレーションして作ることを違和感なく楽しんでくれていることもわかってきた」。

「手元のあらゆるリソースを最大限活用してみないことには、このコマース事業がどれだけ強力なものになるかはわからない」と、ロメイン氏は語った。

[原文: Bleacher Report is drafting a commerce strategy that’s growth plan hinges on fan fervor for exclusive merchandise

KAYLEIGH BARBER(翻訳:半井明里/ガリレオ、編集:分島 翔平)