インフルエンサー を苛立たせる、専門エージェンシーの台頭:「人間味が感じられない」

1月末、旅行ライターでLGBTQインフルエンサーのアダム・グロフマン氏が、インフルエンサーマーケティングエージェンシーから送られてきた料金表のスクリーンショットを、Twitterに公開した。このエージェンシーは、彼に大手薬局チェーンの案件について依頼してきたという。インスタグラム(Instagram)に4万人以上のフォロワーを抱えるグロフマン氏は、報酬の低さと、そのエージェンシーが仕事を依頼する可能性があるインフルエンサーに対して遵守を求めているという厳格なガイドラインの内容に不満を感じて、この投稿を行ったのだった。

インフルエンサーマーケティング市場が成熟するなか、企業とインフルエンサーを結びつけるためのインフルエンサーマーケティングエージェンシーや、インフルエンサー専用のネットワークが数々誕生してきている。インフルエンサーマーケティング測定企業、インスタスクリーナー(Instascreener)の調査では、2019年に米国とカナダの企業がインフルエンサーマーケティングに投じた額は、19億ドル(約2080億円)にのぼっていることがわかっている。だが、米DIGIDAYが取材したインフルエンサーたちは、インフルエンサーネットワークや、一部のインフルエンサーエージェンシーと組んでの仕事はやりにくい場合もあり、報酬や条件の交渉が難しいと語っている。できれば企業とは、直接的な関係を維持したいというのだ。インフルエンサーマーケティングという分野がビジネスとして確立され、「ワイルドウエスト時代(開拓の時代)」が終わったいま、インフルエンサーであることをビジネスにしている彼らが新たな課題や不満を訴えはじめているというわけだ。

「ブランドに直接声をかけても、アフィリエイトネットワークを介してプログラムに参加申請するように言われてしまい、個人的な結びつきを持つ機会は失われ、交渉もできなくなってしまっている」と、グロフマン氏は語る。最近も、長いあいだ一緒に仕事をしていた企業に、インフルエンサーネットワークを使うように言われたという。

「インフルエンサーマーケティングは、いよいよ業界として成熟期を迎えている」と、インフルエンサーマーケティング協会(Influencer Marketing Association)のエグゼクティブディレクター、クリスティ・サミス氏はメールでの取材にそう答えてくれた。「ブランド各社が、戦略的インフルエンサープログラムに多額の予算を投入しようとしている。つまり、ある程度の規模や、ベンチマーク、保証が必要になってくる。そうなると、インフルエンサーと1対1の関係で進めるのは不可能だ」。

「企業と関係を結びたい」

報酬に関していえば、現時点ではインフルエンサー界の標準的な料金表というものは存在していない。ただ、報酬額に影響を及ぼしうる要因は無数にある。とはいえ、インスタグラムやインスタグラムストーリーズ(Instagram Stories)で活動しているインフルエンサーたちの場合、インプレッション数1000に対して10ドル(約1100円)というのが基準レートになっている、と教えてくれたのは、ビレッジマーケティング(Village Marketing)の創業者、ヴィッキー・シーガー氏だ。同氏によると、ひとつの投稿で、フォロワー数10万人ごとに1000ドル(約11万円)入ってくる計算になる。さらに、企業とインフルエンサーとのあいだで使用権と独占権について契約が結ばれている場合もあり、そうなると報酬はさらに高くなる。支払サイトは企業によって異なるが、業界筋によれば30日から、120日かかることもあるという。

交渉に参加する機会があれば、大抵のインフルエンサーは企業にデータを共有し、自分の投稿には基準レートを超える価値があることを証明する。そもそも、フォロワーが10万人いても、すべてのフォロワーにリーチできるとは限らない。フォロワー数が少ない人のアカウントほどはエンゲージされない可能性があるからだ。そのためインフルエンサーたちは、過去30日間のインスタグラム投稿やストーリーに関する測定値を公開し、依頼してもらえれば、これだけのエンゲージメントを提供できる見込みだという根拠を企業に提示することが多い。インスタグラムアカウント「CheatDayEats」に45万人のフォロワーを抱えるインフルエンサーのジェシカ・ヒルシュ氏などは、フォロワーの属性情報も提供し、どんな層にリーチできるのかを企業がよく理解できるようにしているという。

ヒルシュ氏はこれまで、インフルエンサーネットワークから、入札に参加するよう求めるメールを大量に受け取っているという。そうしたネットワークは、同じメールを多数のインフルエンサーに送っているようだ。こうした勧誘に乗っても、大抵の場合は報酬を交渉する機会が与えられない。「入札するよりも、企業と関係を結びたい」というヒルシュ氏は、ネットワークのこうしたやり方には「あまり人間味がないと感じる」と述べた。

増加する入札の勧誘

旅行インフルエンサーのロブ・テイラー氏は、ネットワークやエージェンシーからの入札勧誘が増えているのは、企業がインフルエンサーのインプレッション数に短期的な目標を設定するようになったからだと考えている。こうした企業は、手早く目標達成できる方法を追い求めていて、インフルエンサーとの長期的な関係を育もうとはしていないと、テイラー氏は語る。同氏は企業と直接的に関係を結ぶほうを選び、ほかのインフルエンサーにもそうするよう勧めているという。そして「入札のようなやり方では、インフルエンサーが自分で収入をコントロールできなくなってしまう」と指摘する。

入札を求め、一律の料金でコンテンツを提供させるネットワークの勧誘メールを、昨年になって大量に受け取るようになったインフルエンサーがいるのは確かだが、こうしたやり方は以前から存在していた、と語るのは、インフルエンサーテクノロジー・プラットフォーム、インフルエンシャル(Influential)のCEOであるライアン・デタート氏だ。企業がインフルエンサーエージェンシーに依頼をかけることについて、同氏は「この手法には、大量にコンテンツを集められるというメリットがある」と述べている。「しかし、コンテンツを増やしたからといって、キャンペーン自体が良くなるわけではない。内容が良くなければ、優れた投稿とは言えない。大量のメールを無差別に送るようなやり方では、良い結果は得られない」。

「インフルエンサーマーケティングでは、個人のメディアを大量に購入する必要があり、それが難しい点だと捉えられている」と、シーガー氏はいう。「個人メディアにアプローチするのは非常に時間がかかるものだ。だが、エージェンシーやプラットフォームが、大量のメール送信でそのプロセスを短縮しようとすると、つまり各インフルエンサーの実際の価値に基づいて個別の交渉をしないと、インフルエンサーマーケティングというプログラム自体が崩壊してしまうだろう」。

Kristina Monllos (原文 / 訳:ガリレオ)