「これは我々の賭けだ」: BuzzFeed の新しい試み「インターネット・ライブ」の中身

コンプレックス・ネットワークス(Complex Networks)やリファイナリー29(Refinery29)などのデジタルネイティブなパブリッシャーは、イベントの開催を通じて、自らのブランドに命を吹き込むことに成功している。そうした取り組みがBuzzFeedの手にかかると、インターネットカルチャーをコンピューターの外へ持ち出し、ステージに載せ、映像に記録し、またネット上へ戻す、という形になる。

7月25日、マンハッタンのウェブスターホールにおよそ700人が集まり、「インターネット・ライブ(Internet Live)」の収録が行われた。BuzzFeedが8月4日に動画配信する一種のバラエティ番組だ。制作会社ショー・ショップ(Show Shop)との共同制作となるこのイベントで、BuzzFeedは音楽パフォーマンス、コント、インタビュー、プレゼンテーションと、種々雑多なプログラムを展開した。ラッパーのリル・ナズ・Xから、ソーシャルスターのジョジョ・シワ、ニューヨーク市長ビル・デブラシオまで、多彩なゲストを呼び物にした同イベントは、2019年の春に入ってBuzzFeed社内で企画が持ち上がった。ソーシャルにおける同社の巨大な存在感に、動画とコンテンツの専門知識を組み合わせ、新たなビジネスチャンスを生み出そうというBuzzFeedの次なる試みだ。

「これは我々にとって賭けだ」と、BuzzFeedの最高マーケティング責任者(CMO)ベン・カウフマン氏はいう。「この番組をネットワークに販売するにせよ、ブランドインテグレーションを販売するにせよ、マーチャンダイズを販売するにせよ、ここには本物のビジネスがあると信じている。こんなことができるのはBuzzFeedだけだ」。

制作費はゆうに10万ドル

この賭けには、かなりの金額が注ぎ込まれたことだろう。BuzzFeedは、インターネット・ライブの具体的な制作費を明らかにしなかったが、イベント業界の情報筋2人に話を聞いたところ、同イベントの制作費はゆうに10万ドル(約1000万円)単位にのぼると思われるが、出演ゲストのギャラをどの程度抑えられたかで金額は変わってくるという。

「これだけのアーティストを呼ぶのに、50万ドル(約5000万円)かかったと聞いても驚かない」と情報筋のひとりは話す。ただし、BuzzFeedほどのリーチと影響力があれば、出演料はもっと安く上がった可能性も考えられるという。

カウフマン氏も、具体的な金額は伏せつつも、BuzzFeedの文化的な立ち位置と影響力が役に立ったと明かしている。「BuzzFeedのブランドは、驚くほどにタレントを引きつける力がある。我々がBuzzFeedでなかったら、もっと多くのコストがかかっていただろう」。

それでも、大半のパブリッシャーにとっては大きな金額だ。しかし創設以来、約5億ドル(約544億円)を調達してきたBuzzFeedは、このような実験が許される資金力を備えた数少ないデジタルネイティブのパブリッシャーだ。BuzzFeedの2018年の売上高は3億ドル(約327億円)を超えたが、黒字転換はならなかったと、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は報じている。

すがすがしく健全な趣

当日のイベント会場を埋める観客として、BuzzFeedは自社のフォーカスグループのような存在であるバズキーパー(BuzzKeepers)のメンバーや、自社従業員、ジャーナリスト、そして一部のクライアントを招待したと、カウフマン氏は述べている。

ライブで進行するイベントはときとして粗削りに感じられたが、その夜のプログラム自体はすがすがしいほどに健全な趣をまとっていた。リアリティ番組「ジャージー・ショア(Jersey Shore)」の出演陣が参加したサンドイッチづくりのコンテストでは、笑えるけなし合いが繰り広げられた。ニューヨーク市長ビル・デブラシオ氏と妻のチャーレーン・マクレイ氏は、BuzzFeed News編集長ベン・スミスによるインタビューの席上、「ニューリーウェド・ゲーム(The Newlywed Game)」(新婚カップルが互いをどれだけ知っているか質問を通じて競い合うゲーム番組)のようなやりとりを披露した。

また別のステージでは、BuzzFeed編集スタッフのライアン・ブロデリック氏とケイティ・ノトポロス氏が、自分の風呂の残り湯をゲーマー相手に販売したことで知られるゲーマー兼コスプレイヤー、ベル・デルフィン氏について、パワーポイント風のプレゼンテーションを行った。また、現在ブロードウェイのミュージカル「ディア・エヴァン・ハンセン」に主演するサム・プリマック氏は、劇中曲「ウェイビング・スルー・ア・ウィンドウ(Waving Through the Window)」を披露して大きな喝采を浴びた。

といっても、すべてのプログラムが成功したわけではない。BuzzFeed News記者のザーラ・ハージ氏と、10代の気候変動活動家アレクサンドリア・ヴィラセニョール氏との対話に耳を傾ける聴衆はほとんどいなかった。コメディアンのエヴァ・ビクター氏のライブも、聴衆の注意を引くのに失敗していた。「サタデー・ナイト・ライブ(Saturday Night Live)」の出演者ハイディ・ガードナー氏による、インターネットミームをテーマにしたステージも、まったく笑いをとっていなかった。

より多様な収益源に対応

しかし全体として見ると、インターネット・ライブは、幅広いオーディエンスに受けそうなコンテンツの素材を含んでおり、それと同時に、広告活動を展開する余地も大いにある。「我々の目標は、オーディエンスに愛されるフォーマットを生み出すことだ」と、カウフマン氏はいう。「見ていて自然と特定のブランドが思い浮かぶ瞬間はあるだろうが、このイベントに関しては、意図的な(ブランドアクティベーションを)行っていない」。

収益源の多角化を目指して、パブリッシャーは数年前から体験型マーケティングに注力するようになった。デジタルパブリッシャーが手がけるイベントのなかには、コンプレックス・ネットワークスの「コンプレックスコン(ComplexCon)」やリファイナリー29の「29ルームズ(29Rooms)」のように、年間数百万ドル(数億円)の収益を上げるプログラムに成長したものもある。

BuzzFeedの場合、イベント事業への参入はこれまでのところ限られている。過去にはスポンサーのつかないイベントを企画したこともあり、たとえば2017年と2018年のプライド月間に合わせて「クィア・プロム(Queer Prom)」というイベントを開催しているが、それでもBuzzFeedの体験型イベントは、ほとんどがスポンサーありきの企画だと、カウフマン氏は述べている。直近の例を2つ挙げると、「キャンプ・ベター・マネー・ハビッツ(Camp Better Money Habits)」は、バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)との契約の一環として制作されたイベントで、また「キャンプ・コナ」はヒュンダイ(現代自動車)がスポンサーを務めた(なお、どちらのイベントも、カウフマン氏が昨冬に創設した玩具店のキャンプ[Camp]とは無関係)。

インターネット・ライブがこれらと異なるのは、より多様な収益源に対応している点だ。イベントは複数台のカメラで撮影され、それが1本の番組に編集される予定で、おそらく20分ほどの長さにまとまって、8月初めにはYouTube、Facebook、Twitter、Snapchat(スナップチャット)、およびBuzzFeedのサイトで配信される。BuzzFeedは今後、インターネット・ライブをレギュラー番組としてプラットフォームかテレビネットワークに販売する可能性も探るつもりだと、カウフマン氏は述べている。

「いまなお革新的なことを」

また、第1回のインターネット・ライブは入場無料だったが、カウフマン氏によると、今後のイベントではチケット販売のほか、スポンサーシップ、動画広告の販売、ライセンス供与などを収益源とする可能性もあるという。

「BuzzFeedがいまなおこのような革新的なことを手がけているのは素晴らしい」と、イベント制作およびクリエイティブエージェンシーのL37クリエイティブ(L37 Creative)でクリエイティブディレクターを務めるジョー・クーパー氏は述べている。「わずか1カ月足らずでイベントを実現させたなんて信じられない」。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)