コンプレックス・ネットワークス(Complex Networks)のリサーチ機関、コンプレックス・コレクティヴ(Complex Collective)は2021年を通じ、ブランド広告主はオーディエンスの生の声を聞くためなら喜んで対価を支払うことを証明した。
コンプレックス・ネットワークス(Complex Networks)のリサーチ機関、コンプレックス・コレクティヴ(Complex Collective)は2021年を通じ、ブランド広告主はオーディエンスの生の声を聞くためなら喜んで対価を支払うことを証明した。この声(インサイト)は、メッセージングの最適化から新たな消費者ベースへの販売法の確立に至るまで、クライアントが望むあらゆることの実現を手助けしうる。
誕生から2年、コンプレックス・コレクティヴは新たな親会社BuzzFeedに7桁の収益をもたらす存在へと成長した。具体的な数字は、同社は開示しなかった。その収益源は、質問に対して理想的な回答をくれる3万人のオーディエンスメンバーからなるネットワークへのアクセスを求めるクライアントだ。このネットワークにはまた、コンプレックス・ネットワークスのライター/エディターも、コンテンツの制作および強化を目的としてアクセスすることができる。
2021年、コンプレックス・コレクティヴはクライアント数を6社から12社と倍増させており、そこには米アパレル大手バナナ・リパブリック(Banana Republic)、アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)、諮問委員会(The Advisory Council)などが含まれる。クライアントは各々のカスタムリサーチに6~7桁(数千万から数億円)の額を支払っていると、コンプレックス・コレクティヴのジェネラルマネージャー、アーロン・ブラクストン氏は話す。2022年、コンプレックス・コレクティヴに年間を通じて協力を求める企業は、早くも前年の3倍に上ると、氏は言い添える。
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全調査の平均回答率は61%
「我々が有するオーディエンスは、顧客視点においてもエディトリアル的視点においても、規模と頻度の両面で今後も拡大を続け、クライアント獲得のためのいわば矢じりのような存在になると期待している」とブラクストン氏。「ディールの規模においても、顧客の満足度においても有効な、まさに万能工具になり得ると確信している」。
コンプレックス・コレクティヴには、2021年から2022年にかけて約3万人のコミュニティメンバーが集まり、その全員がコンプレックス・ネットワークのコンテンツを読み、相互交流をするなかで、同グループの存在をオーガニックで知り、メンバー登録している。メンバーの脱退率は高いが、ブラクストン氏によれば、新規会員も常に一定数いるため、相応の規模を維持できており、全調査(大小すべてのサンプルプーリングを含む)の平均回答率は61%だという
コンプレックス・ネットワークスはコンプレックス・コレクティヴのメンバーに金銭を支払っておらず、会員登録に際してギフトカードや景品の類も渡していないと、同社のストラテジー部門トップ、ニック・スーシ氏は話す。その代わりにメンバーはコンプレックス・コレクティヴを通じて生まれたコンテンツやキャンペーンに自分の声/意見が反映されている事実を目にすることで、他者との繋がりやコミュニティの一員であることを実感でき、それが参加を続ける動機になるうえ、特典として、メンバーだけが参加を許されるバーチャルイベントにアクセスしコンプレックス・コレクティヴによるリサーチの結果について知ることもできると、氏は言い添える。
「これはあくまで独立したひとつのコミュニティであり、我々が商業目的の質問に合わせて、そのときどきで都合良く利用する人々の集合体ではない」と、スーシ氏は語る。
必要なのは「見極める力」
とはいえ、広告枠購入の参考資料として、調査結果といった自己報告データへの依存をためらうブランドもいる。調査結果に基づいてキャンペーンを張ることと期待どおりの結果を得ることは、必ずしも両立するわけではないと、メディアバイイングエージェンシー、メディア・トゥ・インターアクティヴ(Media Two Interactive)のシニアメディアストラテジスト、リリー・ジョンソン氏は指摘する。それゆえ、そうした洞察に対価を支払うブランドおよび企業/団体には、自らのターゲット層と調査会社のサンプルプーリングとの整合性を見極める必要があると、氏は言い添える。
これは「ファーストパーティデータの興味深い分枝」だと、ジョンソン氏は形容する。
ブラクストン氏によれば、2022年の目標は全米に常時3万人のメンバーを維持することだが、コンプレックス・ネットワークスは2022年、UKをはじめ他の海外市場に同様のコミュニティの設立も計画している。また、コミュニティマネジメントを担う人材をはじめ、コンプレックス・コレクティヴ専任の従業員10数名の新規採用も予定している。現時点まで、コンプレックス・コレクティヴはコンプレックス・ネットワークスのコアチームが兼任の形で運営していると、氏は言い添える。
エキスパート揃いの諮問委員会
加えて、コンプレックス・ネットワークスはコンプレックス・コレクティヴ専門の諮問委員会も設けている。同委員会は企業幹部や活動家、会社創業者――人気ストリートブランドのキース(Kith)のチーフインパクトオフィサー、シャリファ・マードック氏、BMXプロライダーのナイジェル・シルヴェスター氏、フットウェアクリエイター/キュレーターのフランク・クッカー氏など――8名からなり、各々がコンプレックス・コレクティヴの対象範囲となるオーディエンスデモグラフィクスおよびカテゴリーを代表しており、後者には社会変革、スポーツメディア、デザイントレンド、ファッション、コミュニティ、流行などが含まれる。諮問委員は皆、無償で協力している。
アドヴァイザリー・カウンシルのメンバー(資料提供 コンプレックス)
彼ら諮問委員は、業界の催しやコンプレックス・コレクティヴが企画する対面イベントに出席するとともに、コンプレックス・コレクティヴが今後予定しているポッドキャストやオーディオプロダクトにも参加する。これらはすべて、コンプレックス・コレクティヴのチームが過去2年にわたり営利目的およびエディトリアル素材として制作してきたブランデッドコンテンツおよびエデュケーショナルコンテンツの延長的存在として活用される。それらのコンテンツはコンプレックス・ネットワークスの出版物に掲載されるとともに、一部はいわゆるホワイトラベルとして、他ブランドが利用し、各々の出版物に掲載される。
この諮問委員会プログラムには、コンプレックス・コレクティヴのメンバーに諮問委員の意見を聞く機会を与えることで、彼らの保持に繋げようという意図があると同時に、ブランド勢に対して、フットウェアやファッションなどの業界エキスパート/幹部の洞察という、通常はコンサルタントとして個別に雇わないかぎり手にできない、貴重な資源へのアクセスも提供できると、スーシ氏は話す。
「コンプレックス・コレクティヴはバーティカルになりつつある。それはコンプレックス・ネットワークスがバーティカルであり、フットウェア情報に特化するソール・コレクター(Sole Collector)がバーティカルであり、フード情報に特化するファースト・ウィ・フィースト(First We Feast)がバーティカルであるのと同様だ。無論、コンプレックス・コレクティヴは洞察およびリサーチ主導であり、それらと性質は異なるが、弊社がコミットして鋭意取り組んでいる点は共通している」とブラクストン氏は断言する。
[原文:‘Becoming a vertical’: How Complex’s research arm turned into a 7-figure revenue stream]
KAYLEIGH BARBER(翻訳:SI Japan、編集:猿渡さとみ)