メイベリン(Maybelline)のキャンペーンで男性として初のイメージキャラクターも務めたインフルエンサーのマニー・グティエレス氏は、フォロワーからは「マニー・ムア」の名で知られている。米DIGIDAYの姉妹メディアであるGlossy(グロッシー)は、同氏にインタビューを行った。
インフルエンサーのマニー・グティエレス氏は、フォロワーからは「マニー・ムア」の名で知られている。
カリフォルニア州のJCペニー(JCPenney)で化粧品ブランドのセフォラ(Sephora)のショップインショップで働いていた同氏は現在、自身のメイクアップブランドのルナビューティー(Lunar Beauty)を立ち上げて、全米のセフォラの店舗で展開している。ルナビューティーを立ち上げたときには同氏は、すでに非常に有名なインフルエンサーとなっていた。現在、同氏のYouTubeチャンネルの登録者は480万人、インスタグラム(Instagram)のフォロワーは440万人で、メイベリン(Maybelline)のキャンペーンで男性として初のイメージキャラクターも務めた。
米DIGIDAYの姉妹メディアであるGlossy(グロッシー)は、9月24日に行われたアドバタイジングウィーク(Advertising Week)で、「インフルエンサーとのあいだの壁を取り除く」ことが題材のスピーチを終えたばかりの同氏に、インタビューを行った。
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――あなたの目から見て、インフルエンサーは誰もがブランドとの提携を求めて競っているだろうか?
当初は非常に競争が激しいと感じた。小規模なインフルエンサーであれば競争は実に厳しい。ほかのマイクロインフルエンサーと同じプールにいる、ひとりのインフルエンサーに過ぎないからだ。そこから大きくなると、自分のことについて皆が知っている状態になる。それでも競争はあるが、自分だからこそ一緒に働きたいと言ってもらえるようになる。私の場合、メイクアップ業界で大胆かつ激しいキャラクターを求めているブランドから声がかかる。現在、競争相手となっているのは私自身だけだ。
――スポンサード投稿と提供商品について、どれくらいの透明性が必要だと思うか?
私はパートナーブランドについてとてもオープンで、正直に明かしている。報酬をもらっている場合は動画の最初に「このブランドと提携している」とか「このブランドは私のスポンサーだ」と明言している。はっきりと明かすのは、オーディエンスに対して正直であり続けるために非常に大切なことだ。だが動画内である商品をほんの短時間使うような場合は「この商品は送られてきた」とは言わない場合もある。忘れてしまうこともあるからだ。それに美容関連のインフルエンサーには試供品が山ほど送られてくることは誰もが知っているだろう。
――あなたが提携する商品について、ブランドからは即座にコンバージョンという結果を求められるか?
私がブランドと提携して「期待していたほどの売上が上げられなかった」と言われたら、「私を起用したことで得られるのは潜在的な販売力だけではない。私を起用したことでフォロワーたちの目に触れているということを忘れないでほしい」と回答している。提携ブランドの商品を紹介したら「この商品はなかなか良いな」と思う人もいるだろう。その人たちがすぐに購入するとは限らない。だが、別のインフルエンサーが同じ商品を紹介した場合、その人は「あっ、マニーも良いと言ってた商品だ。それなら買ってみようかな」となるかもしれない。商品販売にインフルエンサーを使う場合、多くの要素が絡んでくる。たとえ1回の提携では売上がものすごく伸びなくても、百万の眼に触れているのは事実だ。それは将来的な売上につながりうるだろう。
――これからもインスタグラムやYouTube限定で活動していくのだろうか? TikTokなどでユニークなコンテンツを作ろうという話をブランドから持ちかけられることはあるか?
私は自分の専門領域でやりたがるタイプの人間だ。もっともコンバージョンが高いプラットフォームはインスタグラムとYouTubeであり、場合によってはTwitterだと思っている。TikTok(ティックトック)のコンバージョンはまだ高いとは思わない。TikTokは楽しいし、かわいい動画がたくさんある。私も好きでよく見ているが、ほかの人も同じく楽しくてかわいい、ちょっとしたクリップが見られる場所として認識しているのではないか。だからこそビジネス面では、YouTubeとインスタグラムがよりプロフェッショナルで効果的なプラットフォームだと考えている。
――ソーシャルコマースの台頭は、インフルエンサーにとってプレッシャーになるだろうか?
ソーシャルコマースはチャンスだ。インスタグラムで商品を直接購入できるということは、小規模ブランドでも販売とオーディエンス獲得のチャンスになる。私自身も起業家として大歓迎だ。多くの人にとって魅力的なサービスだと思う。だが一方で、プレッシャーが大きくなるのも確かだ。新しいツール、新しいプラットフォームが登場するたびに私たちインフルエンサーには少しずつプレッシャーとなっている。
――ご自身のオーディエンスは、あなたのブランド(ルナビューティー)を維持していくのに十分か、それともほかのオーディエンスにマーケティングを行う予定はあるだろうか?
マーケティングはソーシャルメディアが非常に大きな力を発揮する分野だ。誰もが注目する舞台だからこそ、どのブランドも力を注いでいる。私の場合は幸運なことに、小売ブランドのセフォラとモーフィ(Morphe)が私の商品を店舗で紹介してくれる。彼らは実店舗のマーケティングを担当し、私は得意分野であるソーシャルメディアでのマーケティングを担当している。
――ご自身のビジネスの成長は、いまのあなたにとってどんな意味を持つのだろうか?
私のチームは非常に小さい。いまは私と母、父、デザイン担当者がいるだけだ。ルナビューティーのソーシャルメディア担当の女の子をフルタイムで雇いたいと考えている。私はいまでもすべてのコンテンツを自分で探し出して、自分で投稿している。そして父がインスタグラムのストーリーとダイレクトメッセージの担当だが、お互いに交代することもある。いまは自分のソーシャルメディアの扱いでほぼ手一杯なのに加えてルナビューティーもある。だが、仕事は楽しいし、自分でコントロールできるというのは良い面も大きい。
――インフルエンサーにとって最大の脅威は何だろうか? インフルエンサーの未来はどうなるだろうか?
インフルエンサーが完全になくなるという将来は想像できない。インフルエンサーがなくなったらブランドはどうする? CMだけでやっていく? CMが必ずしも効果的な場面ばかりではない。それ以外の取り組みが必要なのだ。
――とはいえ、あなたのブランドは自分への保険として立ち上げた要素もあった?
その通りだ。もし私が消えたり、「もうマニー・ムアとして生きたくない」と思ったりしても、ルナビューティーは独立ブランドとして続いていく。そうなったあとでも、自分の情熱をルナビューティーに注ぎ込み、ブランドの存続のために働き続けられる。
JILL MANOFF(原文 / 訳:SI Japan)