BBCの海外向け国際放送であるBBCワールドサービスが、2022年までの達成目標として掲げた数字がある。それはグローバル・オーディエンスを現在の2倍、5億人にまで伸ばすこと、11の新しい言語のサービスをローンチすること、 […]
BBCの海外向け国際放送であるBBCワールドサービスが、2022年までの達成目標として掲げた数字がある。それはグローバル・オーディエンスを現在の2倍、5億人にまで伸ばすこと、11の新しい言語のサービスをローンチすること、ワールドサービスのニュース部門に関してデジタルを増強することだ。
「2022年までにはさらに何十億人という人がオンラインに参加することになる。彼らの多くは発展途上国の人々であり、携帯電話からのアクセスとなるだろう。私たちは将来の消費者に備えている。ニュースは人々の日々の生活の重要な一部になるだろう」と、BBCワールドサービス・デジタル開発エディターであるディミトリ・シシュキン氏は語る。
全体として機能するために
オンライン、TV、ラジオで28言語による放送を行うBBCワールドサービスは2017年、追加で300人を雇う予定だ。そのうち120人はロンドン勤務となり、残りは世界中でデジタルとメディア部門を担当する。これは政府の投資2億8900万ポンド(約402億円)によるものだ。
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彼らのポートフォリオは、地理的にも規模的にも多様で、大規模なオーディエンスを抱えるところでは、BBCロシアがある。60人編成のチームで運営されているBBCロシアは、数百万人のオーディエンスを擁する。さらにBBCロシアのスタッフの数は、今年2倍になる予定だ。その一方でBBCバングラは、26人しかスタッフがいない。
「影響力を持つためには大きな言語サービスを優先しないといけない。しかし小規模なサービスにも注意を向ける必要がある。ポートフォリオ全体として機能するためにはそれが必要だ」と、シシュキン氏は語る。彼はBBCロシアに1997年に入社した人物でもある。
自分たちが存在する理由
ロンドンを拠点とするシシュキン氏のチームは10人編成、BBCの世界中のエディトリアルチームとオーディエンスディベロップメントやプロダクトといった他部門のつなぎ目となる役割を担っている。もうひとつ10人編成のチームがあり、こちらはBBCワールドサービス・ランゲージ・デジハブ(Launguage Digi Hub)を運営。ここでは表やビデオや解説といったシェアできるコンテンツをあらゆる言語で制作している。
今年のフォーカスのひとつは、それぞれのエディトリアルの役職の最適化を進めることで、それぞれのサービスがちゃんとオーディエンスへのバリュー提供につながるようにすることだという。ローカル市場はローカルメディア主導で動いていると、シシュキン氏は認識しており、それに対抗するためには、ほかの方法で価値を加えないといけないのだ。
「私たちのマントラは、マーケットに自分が存在する理由を1センテンスで説明できなければ、ちゃんと仕事ができていない証拠だ、というものだ。現時点でまったく影響力をもっていないパンジャビでサービスをローンチしたとしても、正気な人間なら誰も自ら『BBCパンジャビ』とブラウザで検索することは無いだろう。人々は、ニュースフィード経由で偶然見つけるはずだ。だからBBCがもっている価値観に沿う一方で、何か価値を加えることで目立つ必要があるのだ」と、彼は説明する。さらに2/3のトラフィックはソーシャルサイドから入ってくると付け加えた。
差別化にフォーカスを据える
そのため、差別化にフォーカスを据えている。たとえば、BBCムンドはほかのニュースメディアとは違ってニュースアジェンダを追いかけることをしない、という戦略を取ることで差別化を図った。有名な麻薬王チャポが昨年逮捕されたとき、BBCムンドは彼がなぜ手錠をかけられていなかったのか? という特集を打った。
BBCが差別化をするもうひとつの方法が国際的な視野を提供することだ。「ケニアやソマリアで社会的な騒動が起きたとき、似たようなことがインドやバングラデッシュ、パキスタンで過去に起きた可能性がある」と、シシュキン氏は述べる。
プロダクションのアーカイブを中央集権化したことも役に立っている。つい3カ月前BBCワールドサービスはスティッチ(Stitch)と呼ばれる内部のリバージョン・ソフトウェアを導入した。これによってエディターたちがグローバル配信が可能なビデオコンテンツに英字幕付でアクセスすることができるのだ。それぞれの言語がパブリッシュするビデオがあれば、そのうち5つはこの中央システムからもってこられたものだろうとシシュキン氏は推測する。スティッチは毎日100回ほど、利用されているという。
Lucinda Southern(原文 / 訳:塚本 紺)
Image: courtesy of BBC World Service.