「音楽への愛はうまく伝えられている」:BBCミュージック、アメリカにも拡大

英国外の視聴者向けの音楽映像をBBCは増やしている。これによって彼らが有するアーカイブが生む収益も増えてきた。

3月25日からBBCミュージックは、アメリカのオーディエンスも視聴可能となった。ローンチ時には、BBCが持つ大量のアーカイブ映像に加えて、アメリカ公開のために再編集された10本のテキストや動画コンテンツが公開された。

EDMプロデューサーであるマシュメロ(Marshmello)は、ゲーム『フォートナイト(Fortnite)』内でライブ・コンサートを行った。このコンサートには何千万人のオーディエンスがVR上で出席し、大成功となった。このようなバーチャル・パフォーマンスといった新しい音楽におけるトレンドにもBBCは目を向ける予定だ。これらは多くのバンドたちにとっても、チャンスとなるだろう。

ジェフ・バックリーの命日にBBCのチームは、楽曲「グレース(Grace)」の音源を再リリースする計画を立てている。BBCによると、急上昇中の新人アーティストたちをフィーチャーするコンテンツも作られるとのことだ。アメリカのポップ・シンガーであるビリー・アイリッシュ、そして何が彼女の音楽にインスピレーションを与えてるのか、を特集するコンテンツがその一例だ。BBCミュージックはまた、ポップミュージックにおけるスウェーデンの影響についての記事、楽曲カバーを作るためのガイド、BBCラジオワン・ライブラウンジ(BBC Radio 1 Live Lounge)の映像のなかから選ばれた動画コンテンツなどもリリースしていく。

「普遍的に興味を持ってもらえるようなものを探すことになるだろう。BBCミュージックはメインストリームと、そこから少し外れた分野のあいだにポジショニングをしている。よく知られているアーティストも、スマートな新しい角度から取り上げて、これまで発見されてなかった側面を紹介することができる。新しいアーティストが何か面白いことをしていたり、クラシックのアーティストが新しい角度で取り組んでいたり、といった具合だ」と、アメリカのフィーチャー・エディターであるサイモン・フランツ氏は語る。

BBCミュージックの狙い

BBCミュージックが海外でローンチするのは、「コンテンツをマネタイズする」というBBCの幅広い目標の一環だ。BBCは、商業的に制作費を調達する24時間放送の英語でのニュースプラットフォーム、BBCワールド・ニュース(BBC World News)を有している。そこではすでに、英国外でニュースやスポーツ関連のコンテンツのマネタイズを行っている。

BBCは英国の納税者のお金によって運営されている。すでに抱えている素材を使って、さらにマネタイズをすることのメリットは説明するまでもない。しかし、音楽コンテンツは地域ごとの配信権や法的な取り決めに縛られている。数年間のプランニングの後、いまになってようやく、アメリカで音楽コンテンツのマネタイズを開始できたのもそれが理由だ。昨年発表された、国立監査局のレポートによると、BBCグローバルニュース(BBC Global News)が黒字を保つためには、2020年までに1600万ドル(約17億円)以上の収益増もしくはコスト削減をする必要があるという。

高級車ブランドのジェネシス(Genesis)は、BBCミュージックのローンチ時におけるスポンサーだ。展開されるのは、3カ月のキャンペーン。動画周りで広告が流されるだけではなく、音楽アーティストを起用して作ったブランデッド・コンテンツもリリースされる予定だ。スポンサー契約はマネタイズの主な形態のひとつだが、BBCミュージックはプレロール広告からも収益を生む予定となっている。音楽アーティストとBBCの協力によってリーチできるオーディエンスを考慮すると、YouTube上で小さくない収益を生むこともできるだろう。

BBCはプレロール広告をつけて、YouTubeとヴィーヴォ(Vevo)上で、海外の視聴者にもラジオワンのライブラウンジにおけるコンサート動画を配信。マーク・ロンソンとマイリー・サイラスが出演するビデオは、2カ月間で1300万もの再生回数を稼いだ。ライブラウンジの動画は、海外における音楽コンテンツの主要なひとつの柱となっている。アメリカのオーディエンスにターゲットを合わせて、ライブラウンジにおけるパフォーマンスを中心にコンテンツを構築するだろう。

音楽への愛を伝える

現時点では3分間の動画にフォーカスを当てている。これはデジタル配信を念頭に置いてのことだ。最初にBBCのサイト上でコンテンツを配信され、同時にチームは何をオーディエンスが欲しがっているかを見極める。それからソーシャルや音声プラットフォーム上での配信を行うと、フランツ氏は言った。アメリカからは、2人のスタッフがBBCミュージック専任となるが、アーカイブ映像や配信に関してBBCのスタッフから幅広い協力を得ることになる。今後は、アメリカにおけるBBCミュージックのコンテンツの大部分は、ローカルのチームによって作られることになるだろう。

BBC全体で流される音楽についても、BBCミュージックは担当している。またBBCは、6つの全国音楽ラジオ局を有している。ラジオワン、ワンエクストラ(1Xtra)、ラジオツー(Radio 2)、ラジオスリー(Radio 3)、シックスミュージック(6 Music)、そしてBBCアジアン・ネットワーク(BBC Asian Network)だ。BBCミュージックは、これらのラジオ局における音楽コンテンツのエディトリアル的な管理権を持っており、またライブイベントのオーガナイズも行っている。テレビ上の音楽番組やドキュメンタリーの共同プロデューサーもしばしば担当している。また、グラストンベリー(Glastonbury)のようなイベントの生放送も、彼らの担当だ。

「すでに我々が持っているものをさらに高めようとしている。BBCは異なるオーディエンスにサービスを提供することを常に目的としてきた。オーディエンスと同じくらい、音楽を愛していることがBBCはうまく伝えられていると思う」と、フランツ氏は語った。

Lucinda Southern(原文 / 訳:塚本 紺)