銀行はいかに、 トランスジェンダー と向き合うべきか?:JPモルガンの成功事例

JPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)は、デジタルのみのバンキング・アプリ、フィン(Finn)においてパーソナライズ機能を試したことで、トランスジェンダーの顧客が抱えていた問題をひとつ、意図せず解決することになった。

「フィンの体験をより人間らしく、カスタマイズするためにアプリ上のユーザー・ニックネーム機能を導入した。最近になって、トランスジェンダーの顧客から感想が届き、ユーザーがどのような名前で呼ばれたいか、選べることに対する感謝の気持ちを受け取った」と、マネージングディレクターでありフィンの最高プロダクトオーナーであるマット・グロマーダ氏は語る。フィンは現在、セントルイス地域でベータ版を試験運用している段階だ。

アイデンティティの選択肢

トランスジェンダーの顧客たちにとっては銀行を利用する際に自分のアイデンティティをどう決められるかは、長年の問題となってきた。銀行にとっても、詐欺行為などから顧客を守ることと、顧客自身のニーズに応えることのバランスを取るのが難しい点となっていた。近年、顧客の声が登録されていたものとマッチしない、という理由でアカウントから閉め出されてしまうユーザーが出てきている。フィンでニックネーム機能を追加したことで、サービス連絡がより多くの人々にとって心地よいものになることを狙っていると、グロマーダ氏は説明する。

「一人ひとりのユーザーにカスタマイズをすることは、巨大なマシーンラーニングが必要というわけではない。『私のことを分かってくれている』と顧客が感じてくれるような、小さなことでも良いのだ」と、彼は言う。

生まれたときに与えられた名前を使いたくない人は多く存在するが、彼らのニーズにどのように対応しているか、公表している銀行は少ない。米DIGIDAYがコメントを求めて取材した6つの銀行からはどれも記事執筆までに返答をもらえなかった。しかし、トランスジェンダーの顧客のニーズに対応しようと努力する銀行は現れてきている。英国のチャレンジャーバンクであるメトロ(Metro)は2年前、口座申込書の性別欄に「ノンバイナリ(男性、女性という既存の性別区別に当てはまらない)」というオプションを追加した。その前年にはアメリカを基盤とするアマルガメイテッド・バンク(Amalgamated Bank)はニューヨークシティによる身分証明書、IDNYCを口座開設申込で受け付けることにした。IDNYCは「ジェンダーの割り当て無し」というカテゴリーをチェックすることができる。

包括的プログラムの理想

コールセンターでは最初に下の名前で呼ばれるのが従来のあり方だ。顧客の名前を呼ぶことによって親しみやすさを演出しているわけだが、この方法を取ることで逆に疎外感を持っている顧客もいることを銀行は学びつつある。特に生まれたときに割り当てられたジェンダーや名前と、現在のものが異なっている顧客たちだ。

「コールセンターで電話を受け付けた担当者に、顧客は生年月日など何らかの個人特定情報を与える。それによってデータから顧客情報が取り出され、担当者はミスターと呼ぶか、ミセスと呼ぶかを選ぶ。こういうことが常に起きている。おそらく意図せずにだが、こういったやり取りによって、コミュニケーションがはじまった瞬間から顧客はこの銀行から歓迎されていない、という感覚を持つことになり得る」と、ヒューマン・ライツ・キャンペーン(Human Rights Campaign)の職場平等プログラムのデピュティディレクターであるベック・ベイリー氏は言う。

ベイリー氏は、(多様性を受け入れる)包括的プログラムをさまざまな銀行に提供している。その経験から、可能な状況では常に、顧客がどのように呼ばれたいかを選ぶオプションを与えるべきだという。

「顧客のなかには書類上の(法律上の)名前ではなく、それよりもインフォーマルな名前だったり、別の名前を好む人もいるし、フォーマルな呼び方を好む顧客もいる。(選択肢を与えることで)適切に行われれば、カスタマーサービス全体を改善することができ、より包括的で、自分が歓迎されていると感じられる体験を、すべての顧客に提供することができる」と、彼は言った。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:塚本 紺)