いま、アメリカで話題となっている新興メディア「アクシオス(AXIOS)」が、1月18日(米時間)にローンチした。米政治メディア「ポリティコ(Politico)」の共同創業者として知られるジム・バンデヘイ氏が、新たに立ち上げたこのビジネス情報サイト。いずれ購読料は1万ドルになるという。そのビジネスプランを聞いた。
この年末年始、アメリカで話題となっている新興メディア「アクシオス(AXIOS)」が、1月18日(米時間)にローンチした。
米政治メディア「ポリティコ(Politico)」の共同創業者として知られるジム・バンデヘイ氏が、ベンチャーキャピタルから資金調達して、新たに立ち上げたビジネス情報サイト「アクシオス」。昨年11月に開催されたrecodeのイベントにおける、同氏のこれまでの常識をくつがえす発言が、大きな注目を浴びた。
その内容は、いずれ「アクシオス」の購読料を、1万ドル(約110万円)にするというもの。ローンチ時はフリーミアムモデルで運営するが、2〜3年後には購読料50%、広告収入50%でまかなう予定だという。
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ギリシャ語で「価値がある」という意味をもつ「アクシオス」。もうひとつのポイントは、短文で記事を構成することだ。上述のイベントでバンデヘイ氏は、「ジャーナリストはジャーナリストのために書いている。これはメディアの最大の問題だ」と述べ、「人々は私たちが書いている作品を望んでいない」と付け加えた。
米DIGIDAYは今回、バンデヘイ氏と彼の長年の同僚で「ポリティコ」の財務部門トップを10年近く勤めたロイ・シュウォーツ氏を招き、広告主に販売する予定のネイティブアド形式、動画の計画、サイトのパーソナライズ、そして先日の大統領選期間中に実施した実験からパブリッシャーが何を学べるのかを聞いた。
回答の一部は短く編集している。
――2人は「ポリティコ」で長年一緒に働き、何がうまくいき何がそうでないかを学びました。その教訓は「アクシオス」にどれだけ生かされていますか?
ロイ・シュウォーツ氏(以下、RS):「アクシオス」のすべては、我々が「ポリティコ」を離れたところからはじまった。ジムと私は数カ月の休暇を取り、カリフォルニアなど、いろんな場所を訪ねた。そのあいだに、人々がどんな風にコンテンツを消費するかを学んだ。
我々は実際にとても多くのことを学んだので、いまでは全従業員がサバティカル(長期休暇)を取得できるよう制度化している。このプロジェクトの見た目や雰囲気のかなりの部分は、我々の休暇の賜物と言っていい。
――あなたは以前、ネイティブアドの機能を刷新して、リアルタイムで調整可能にすると話していましたが、具体的にはどういうものですか?
ジム・バンデヘイ氏(以下、JV):我々のプラットフォームの基本的な違いは、各アイテムが共有したり保存したりできる単一画面上に集約されていることだ(※[日本版]編集部註:フィード上になっており、個別ページに遷移しないという意味)。コンテンツの各部分は基本的に、この同じアーキテクチャーで作られている。簡潔かつ高度な構成のおかげで、データをリアルタイムで利用し、何が効果的で何がそうでないかを理解できるようになっている。
――あなたが手がけるニュースレターに掲載される広告は、テキストが非常に少ないのが特徴です。すでに配信されたニュースレターに挿入された2つの広告のうち、長い方でも175ワードしかありません。「アクシオス」の記事も、これくらいの長さになるのでしょうか?
RS:今後実験する予定だ。すべての記事がそれほど短くなるわけではなく、「続きを読む」ボタンも設置されるだろう。とはいえ、実験で情報を得て、広告主とも共有することになる。
――以前、あなたはネイティブアド、とりわけ長大で派手なパッケージは、間違った前提のうえに構築されていると発言しました。この問題を解決する方法を説明してもらえますか?
RS:ネイティブアドの大きな問題は、クリックしてもらう必要があることだ。我々のネイティブアドは短文構成のため、クリックを不要にしている。広告主のメッセージは、すべてフィードに表示されるため、表示時間を計測してレポートすることになるからだ。広告主はその反応の程度に応じて、読者の訪問のたびにクリエイティブを変更できる。
――そのパーソナライゼーションは、通常の編集記事にも及ぶのですか?
RS:いずれはそうなる。現在の最初の段階では組み込んでいないが、フィードに表示される内容の最適化に着手する際には、読者がどのコンテンツにもっとも時間を費やしたかをもとにキュレーションを開始するだろう。
――説明からは、「アクシオス」の設計はFacebookを大いに参考にしているように聞こえます。この印象は合っていますか?
RS:確かに、我々はFacebookから多くを学んだ。ニュースを読むなら、紙の新聞の方が、その新聞社のウェブサイトよりもずっといい。新聞の1面を見れば、たくさんのニュースに素早く目を通せて、どの記事の詳細を読むかを決められる。サイトでこれをやるのは難しい。我々は、大量の情報を素早く取り入れる方法をサイト上で読者に提供したい。
――動画をどうやってマネタイズするのですか?
JV:私が思うに、硬派なニュースの分野で動画をマネタイズする現在もっとも簡単な方法は、スポンサーの提供番組にすることだ。長くて退屈なプレロール広告の挿入は逆効果。我々が打ち出す動画の多くは、比較的短めで、洗練され、私でも観る時間を取れて、エンゲージできるものだ。
ローンチ時には数社のスポンサーがいて、彼らは「アクシオス」の初回購入枠の一環として動画を用意している。そうした動画のいずれかが、ローンチ日から配信されるかどうかはわからないが、近いうちに配信されるのは確かだ。
――Snapchat(スナップチャット)にも何度か言及していますが、Snapchatを組み合わせるのはなぜですか?
JV:この数カ月、我々は「NowThis(ナウディス)」と試験提携して、Snapchatの「ディスカバー(Discover)」に「ウィー・ザ・ピープル(We The People)」チャンネルを開設して運営した。ここでは大統領選と大統領選後の政治や政策に関するコンテンツを制作し、その過程で多くを学んだ。Snapchatには、こうしたコンテンツを求める膨大なオーディエンスがいる。初心者向けにする必要などまったくない。我々にとって、これは大きな発見だった。
「アクシオス」はトラフィック至上主義にはならない。もちろんトラフィックを求めるが、欲しいのは、硬いニュースに関心をもつ読者のトラフィックだけだ。馬鹿馬鹿しいペットの芸を取り上げて、不自然に高い動画トラフィックを稼ぐつもりはない。
――とはいえ、今回の大統領選には特有の面白さがありました。Snapchatで今回の大統領選を報道して学んだことは、今後同様のオーディエンスに、たとえば医療保険などの話題を解説するうえでどれだけ役立つでしょうか?
JV:とてもいい質問だ。オーディエンスについて考え方を変える必要がある。医療保険の例でいえば、「ウィー・ザ・ピープル」のようなオーディエンスは獲得できないだろう。
しかし、AppleのNewsや、Facebook、Snapchatなどを考えるなら、こうした話題を熱心に求める一部の層が存在するのは確かだ。エコシステムにマッチしたコンテンツを提供する限り、多数の忠実なオーディエンス基盤を築けるだろう。医療保険関連のコンテンツを2000万人が消費するとは思わないが、2年後には、「医療保険に関心をもつ読者は何人と考えられ、我々が実際にリーチするのは何人」と明言できるようになるはずだ。
大きな転換が起きている。メディアのエコシステムはひとつではない。複数のエコシステムが、それぞれ独自の特徴を備え、しかも常に変化しているのだ。
Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)