A・シュプリンガー 、広告ブロックの「法廷闘争」を継続中

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広告ブロックは近年のトレンドだが、独パブリッシャー勢は引き続き、この潮流の逆転を最優先課題に掲げている。市場リサーチ企業eマーケター(eMarketer)が2018年に実施した調査結果によれば、ドイツでは現在、32%ものユーザーが広告をブロックしている可能性がある。そんな広告ブロッカーを開発/提供する独企業、アイオー(Eyeo)を相手取り、独大手出版グループ、アクセル・シュプリンガー(Axel Springer)は5年にわたり法廷闘争をくり広げている。最初の訴訟で敗北を喫したが、すぐに新たな鎧をまとった同社は、いまだ徹底抗戦の構えを崩していない――そしていまや同盟者もいる。

「広告ブロッカーの流通は、コンテンツの出版に関するルールを民間企業が勝手に制定している事態の一例だ」と、アクセル・シュプリンガーの行政案件の担当者、モーリツ・ホルツグレーフェ氏はいう。「パブリッシャーが本件をこれほど重要視する理由はそこにある」。

これまでの法廷闘争の経緯

2015年、アクセル・シュプリンガーはアドブロックプラス(AdBlock Plus)を開発/提供する独企業、アイオーの商行為が反競争的として、同社との長きにわたる法廷闘争を開始。2018年に敗訴したが、それから間もなく、今度は著作権侵害を理由に再びアイオーを提訴した。

さらに、独テレビ局RTLもアイオーに対して法廷闘争を起こし、アドブロックプラスユーザーに特定の広告を見せるために料金の支払いを要求する機能「アクセプタブルアド(Acceptable Ads:許容可能な広告)」が独占禁止法違反にあたると訴えた。RTLが標的にしたのは、広告をホワイトリストに入れることを条件にパブリッシャーに相応の金額を支払わせ、それで利益を得るアイオーのビジネスモデルだ。2019年、ミュンヘンの裁判所はこの訴えを退けたが、ドイツ高裁は控訴審の一部を覆し、ミュンヘンの控訴裁判所に対して、判決の7つの基本原則のうち4つの再審を命じた。

「当初の予想より時間はかかるかもしれないが、良い結果を期待している」と、アイオーの広報はRTLとのこの係争に関してDIGIDAYにeメールで回答した。 「アクセプタブルアドは、より良い広告を見たいユーザーと広告収入に依存するパブリッシャーが公平に折り合いをつけるためのものであり、皆が利益を得られるオープンなエコシステムを創出している」 。

諦めないA・シュプリンガー

アクセル・シュプリンガーはアンチ広告ブロック戦略をいち早く具体化したパブリッシャーの1社であり、2015年、自らが発行する人気タブロイド紙ビルド(Bild)でそれを公にした。同社の見積もりでは、読者の3割が広告ブロッカーを使用しており、ホルツグレーフェ氏によると、広告ブロッカーを入れているユーザーの9割がアドブロックプラスを利用している。アクセル・シュプリンガーが所有する調査会社eマーケターによれば、独メディア企業は広告ブロックのせいで毎年数百万ユーロの潜在的収益を失っている。

アクセル・シュプリンガーは2015年にアイオーを反競争的として提訴し、2016年、ホワイトリスト料金の支払いは不要との判決を受け、一部勝訴した。ところが2018年、ドイツ最高裁は同社の訴えを棄却した。

だがアクセル・シュプリンガーは諦めなかった。最高裁の判決取り消しを求める申立てが退けられると、同年12月、同社は10の論拠をもとにドイツの法律誌上でこの判決に反論し、広告ブロッカーがパブリッシャーの収益に影響を及ぼす仕組みや、広告モデルに代わるサブスクリプションモデルの重大な欠点、確たる目的を持って一般に公開された商品を広告ブロッカーがいかにして操作し、エディトリアルコンテンツに影響を及ぼすのかなど、自らの主張を詳細に表明した。

「自社だけの話ではない」

その一方で、アクセル・シュプリンガーの著作権侵害訴訟はいまも続いている。ただ、2016年、アドブロックプラスの提供に関してアイオーを提訴した独パブリッシャー勢の著作権侵害の訴えはことごとく退けられている。しかし、たとえ係争中の訴訟で敗れるとしても、アクセル・シュプリンガーはパブリッシャーのコンテンツを第三者による変更から保護する法案を通過させるよう、議会に働きかけてもいる。これは、ドイツ放送事業者の著作物であるコンテンツが第三者の手から保護されているのと同様に、同国のパブリッシャー勢にも保護を求める動きにほかならない。アイオーによる広告の削除はアクセル・シュプリンガーが著作権を有する公開コンテンツの変更にあたる、というのが同社の論拠だ。

「これはアクセル・シュプリンガーだけでなく、他のさまざまなメディアについての話でもある」と、ホルツグラーフェ氏は語る。

Lucinda Southern(原文 / 訳:SI Japan)