記事のポイント Chartbeatの分析によると、ニュースアグリゲーターからのトラフィックが2020年の18〜20%から2023年には約13.6〜15%に減少。アグリゲーターのトラフィックの全体比率も低下。 トラフィック […]
- Chartbeatの分析によると、ニュースアグリゲーターからのトラフィックが2020年の18〜20%から2023年には約13.6〜15%に減少。アグリゲーターのトラフィックの全体比率も低下。
- トラフィック減により、配信戦略の再検討やレベニューシェア契約の見直しを考えるパブリッシャーも。
- ニュースアプリのユーザーが飽和点に達する中、メディアはニュースレターや自社アプリなど独自チャネルへの注力が求められる
4人のパブリッシャー幹部と分析企業チャートビート(Chartbeat)のデータによると、ニュースアグリゲーターからパブリッシャーサイトへのトラフィックは失速しているという。
約5500の世界的なウェブサイトからの匿名化されたデータを基に、米DIGIDAYに共有されたチャートビートのデータによると、ソーシャル、検索、リンクからのトラフィック全体に占めるニュースアグリゲーターによるトラフィックの割合は、2020年の18~20%から2023年には約13.6~15%に減少している。とはいえ、ニュースアグリゲーターの参照トラフィックはおおむね安定しており、全参照トラフィックの14%を占めていた2022年と同レベルを維持している。
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チャートビートのデータはさらに、(検索やソーシャルからのトラフィックを除く)外部からの全トラフィックに占めるニュースアグリゲーターのトラフィックの割合は、2021年の58%から2023年は52%に減少していることを示している、と同社でデータ部門のバイスプレジデントを務めるボニー・レイ氏は言う。チャートビートは、Apple News、ドラッジ・レポート(Drudge Report)、フィードリー(Feedly)、Flipboard(フリップボード)、Google News、イノリーダー(Inoreader)、MSN、ニュース360(News360)、NewsBreak、ニュースナウ(NewsNow)、ニュージット(Newzit)、ポケット(Pocket)、スマートニュース(SmartNews)、アップデイ(Upday)、ヤフーニュース(Yahoo News)などのアグリゲーターを分析している。
この減少の結果、一部のパブリッシャーは、ニュースアグリゲーターとのコンテンツ配信やレベニューシェア契約を見直し、自社以外のチャネルでコンテンツを配信することの価値を再検討するようになった。
ニュースアプリのユーザーは飽和点に達している?
これは、2023年になって起こったFacebookやXのような大規模ソーシャルプラットフォームからの参照トラフィックの急降下に、パブリッシャーが動揺していることによるものだ。
チャートビートのCMO、ジル・ニコルソン氏は、これらのニュースアグリゲーターの中には「飽和点に達し(中略)全体的なユーザー基盤が横ばいになっている可能性がある」ところがあると述べる。「我々は、2023年の残りの期間、これが回復していくかどうかに注視していきたい」と同氏は言う。
Flipboardのコンテンツおよびコミュニケーション担当バイスプレジデント、マーシ・マキュー氏はこう語る。「ソーシャルメディアからニュースサイトへのトラフィックは一般的に減少している(中略)それでも人々はニュースを求めてFlipboardを訪れる。そして、ここ数カ月でエンゲージメントが上昇している」。
スマートニュースはDIGIDAYの取材申し込みに応じず、NewsBreakからは回答がなかった。
4つのメディア企業のパブリッシング担当幹部は、ニュースアグリゲーターからの参照トラフィックが2022年に比べて減少していることを確認している。
ニッチでコアなニュースは人気がない
ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)紙のパートナーシップ担当副編集長ケルシー・ペガー氏は、具体的な数字は明らかにしなかったが、「ニュースアグリゲーターからの参照トラフィックは、全体的に若干減少している」と述べた。その理由のひとつは、2022年のニュースアグリゲーターでの人気報道が、ウクライナ戦争のような「大きな国際ニュース」に集中することが多かったからだとペガー氏は話す。
「今年(2023年)、我々は自社が所有・運営するプラットフォームであれ、オフプラットフォームであれ、ロサンゼルス地域のコアユーザーに焦点を絞ってきた」とペガー氏は語る。
ある世界的な報道機関のメディア幹部(匿名を希望)は、ニュースアグリゲーターからの参照トラフィックは、そのプラットフォームで大きな話題となったニュースが何であるか次第で月毎に異なるという意見に賛同した。
「ニュースサイクルの中で、今がどこに位置するかが反映されることもある」と、この幹部は話す。「今年は選挙と選挙のあいだの年に当たる。2023年について、そして2024年がどうなるのかについて断定的な結論を出すのはためらわれる」
同じく匿名を条件に話した、ある黒人所有のメディアパブリッシャーの幹部は、10月のDIGIDAYの取材に対し、NewsBreakは以前は毎月300万~400万のユニークビジターをそのサイトに提供していたが、今春以降、参照トラフィックは150万程度に落ち込んでいると語った。
「より多くの価値」を求めるパブリッシャー
パブリッシャーサイトへの参照トラフィックを誘導するニュースアグリゲーターの役割が低下するにつれ、パブリッシャーのなかには、これらのプラットフォームの価値を再考し始めるものが出てきた。
「Facebook、スマートニュース、NewsBreak、Flipboardは、(我々にとって)あまり役に立っていない」と、前出の黒人所有メディア企業の幹部は語る。そして、これらのプラットフォームのいくつかはウォールドガーデンモデルであるため、パブリッシャーは、広告主との直接取引を行い、それらのインプレッションを収益化するために、各プラットフォームに配信されたコンテンツに独自の広告を挿入することはできない。「どうしたらいいのか途方に暮れている」と彼らは言う。
2人目のパブリッシャー幹部は、レベニューシェア契約を結んでいるニュースアグリゲーターがもたらす参照トラフィックとCPMが、パブリッシャーが独自に販売するものよりも少なくなったため、彼らと協議していると述べる。「(アグリゲーターに)膨大な量のエディトリアルを提供するためには、もっと価値が必要だ。我々は『(我々を)プラットフォーム上に留まらせるには、本当に、積極的なミニマムギャランティーが必要になるだろう』と言うかもしれない」
そして、GoogleがサードパーティCookieの廃止を予定していることを受け、ファーストパーティデータの重要性が「劇的に高まる」なかで、パブリッシャーがニュースアグリゲーターから得られるオーディエンスデータの欠如は、コンテンツのシンジケーション戦略を見直すもうひとつの理由になる。
「なぜ自社のコンテンツを他のプラットフォームに置くのか?」
「なぜ大手メディア企業は、自社のエディトリアルを他のプラットフォーム上に置くことを許すのか? また、そのプラットフォームが、本質的に市場における我々の提供物のカニバリゼーション(共食い)にもなり得る、すべてのコンテクストデータからファーストパーティデータを生成することを許すのか?」と2人目のパブリッシャー幹部は言う。
4人のパブリッシャー幹部全員が、ソーシャルメディアプラットフォームやニュースアグリゲーターからの参照トラフィックの減少は、ニュースレター、アプリ、イベントといった独自のチャネルの成長に、より多くのリソースを投入していることを意味すると述べた。
「何にせよ、大きな痛手はある。しかし、我々は備えをしている」と2人目のパブリッシャー幹部は語った。
[原文:As news aggregator referral traffic slips, publishers turn their attention inward]
Sara Guaglione(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:分島翔平)