コンデナストの5カ年計画、立ちはだかる多くの「障害」

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コンデナスト(Condé Nast)のCEOであるボブ・サワーバーグ氏が、彼の伝統ある雑誌パブリッシャーの収益のうち、紙媒体の広告が占める割合を減らし、収益源を多様化させるために自ら設定した時間が5年だった。業界関係者、そしてコンデナストの元エグゼクティブたちから見ると、これは彼が身を粉にして働く必要があることを示しているという。

サワーバーグ氏の計画は、コンデナストの役員会で承認され、8月第2週に関係者全員が出席するミーティングで全貌が明かされた。広告が収益に占める割合は現在では70%だが、これを50%にまで下げるという方針だ。

大胆な方針転換

これは大胆な方針転換と言える。実現するためには、新興の成長分野において必要な支出を増やすと同時にコスト削減を行うということが求められるだろう。今後2年間で5つの新しい分野における収益を追求し、その過程で150ほどの新しい役職を作る計画だという。新しい分野にはビデオ、クリエイティブサービス、コンシューマー、データライセンシング、そしてイベントが含まれる。しかし、今秋には解雇も行われる予定だ。コンデナストが出版しているタイトルのうちW、ブライド(Brides)、そしてゴルフ・ダイジェスト(Golf Digest)の3つは戦略の再検討が行われる。コンデナストの出版物の多くは、適正価格の下、継続されるかもしれないと、元エグゼクティブのひとりが語ってくれた。

新分野に入ることで、新しい競合他社とも競争することになる。デジタル広告マーケットではGoogleとFacebookが独占状態だが、エージェンシー、サービス、イベントといった分野で成長しようとするのであれば、コンデナストはホールディングカンパニー、コンサルティング企業、そしてメディア、エンターテイメント関連の巨大複合企業とも競争しなくてはいけない。

「彼らが計画している方針は非合理的だとは思わない。簡単だとは思わないが、彼らの得意なことと共通している」と、元エグゼクティブのひとりは語った。

動画へ引き続き進出

この方針からは、動画へ引き続き進出するという意図が読み取れる。コンデナストでは現在、300人以上のフルタイムの従業員が動画コンテンツに取り組んでいる。そしてアドウィーク(Adweek)にサワーバーグ氏が語ったところによると、コンデナストのブランド群においては短尺動画が主なコンテンツになると予想しているようだ。この考えには心配になったと、元エグゼクティブたちの何人かは語った。広告をサポートしているOTT向けコンテンツを3つ提供する計画をすでに発表している。また、少なくとも、さらに2つが、2019年にはローンチされるようだ。

これらの分野における成長予測を考慮すると、このシフトは納得できる。eマーケター(eMarketer)のデータによると、アメリカにおけるデジタル動画広告の支出は、2021年までに220億ドル(約2兆4000億円)を超えると予測されており、これはデジタル広告全体のうち17%以上を占めることになる。しかし、Netflix(ネットフリックス)やAmazonといったプラットフォームが持つオリジナルコンテンツ予算と競争するのは難しいだろうと、懐疑的に捉える関係者もいるようだ。6月にはコンデナスト・エンターテイメント(Condé Nast Entertainment)に在籍していたドーン・オストロフ氏がSpotify(スポティファイ)に引き抜かれており、その代わりの人材を探している。

コンサルティング企業クォンタム・メディア(Quantum Media)のプリンシパル、エイヴァ・シーブ氏は「非常に競争が厳しい。プロダクション会社はとても多く、人材獲得のために必要な報酬は上昇している。また、動画視聴がもたらす収益は減少している」と語った。

クリエイティブサービス分野

クリエイティブサービス分野でも、コンデナストは苦戦を強いられるだろう。競争力のあるプレイヤーとなることは難しいのではないか、と関係者たちは考えているようだ。ポップ・ツー・ライフ(Pop2Life)を昨年買収し、すべてのクリエイティブサービス関連のチームを統合したが、元エグゼクティブの証言によると、スタッフの合計数は100人ほどのようだ。買収以来、経験価値型マーケティングのクライアントの数は35%増加したと、コンデナストは述べている。しかし、語ってくれた元エグゼクティブは、コンデナストが目指している数字を達成するためには、チームのサイズを約2倍にはしないといけないだろうという。

経験価値型マーケティング、もしくはコンサルティングサービスにパブリッシャーが投資することの意味は、クライアントとなるブランドたちと直接の関係を築くことにある。それによって広告主が雇っているエージェンシーの判断に右往左往することがなくなる。しかし、この分野でも、新しい競合他社を生み出すことになる。

米DIGIDAYの取材に対して、エージェンシー、クリエイティブサービス市場における競争が厳しくなっていることについて、「理論上では隣接分野と捉えることはできる、しかし、現実的になる必要がある。同じ戦略を採ろうとしている大手メディア複合企業が大量に存在している」と語ったのは、ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)の南北アメリカ、メディアエンターテイメント部門の責任者でありパートナーであるアンドレ・ジェームズ氏だ。

コンシューマー収益には楽観的

コンシューマー収益を拡大できるかどうか、という点に関してコンデナストは注意深くも、楽観的に捉えているようだ。2番目に大きな収益源として、コンシューマー収益プロダクトを少し拡大してきている。ワイヤード(Wired)とニューヨーカー(The New Yorker)に導入されたペイウォール、アルーア(Allure)とGQ向けに運営するビューティ・ボックス・ビジネスがその例だ。しかし、ブランドごとに、こういったコンシューマー収益を開発していることで、コンデナスト全体が抱えているブランド群のアドバンテージを小さくしてしまっている。

全体的に、どれだけ自分に厳しく経営していけるかが成功の鍵になるだろう、という点で関係者たちは同意しているようだ。元コンデナストのエグゼクティブ、別のひとりは「1年、それどころか2年や3年で作って収益をあげられるようなビジネスではない。1年ではなく、5年かけて行われる移行計画だという点が、もっとも重要な点だろう」という。

Max Willens(原文 / 訳:塚本 紺)