独自の手法で独自コメントのマネタイズに挑んでいるのがメレディス(Meredith)のレシピ共有サイトオールレシピ(Allrecipes)だ。ユーザーのコメントに基づくファーストパーティのコンテキストデータを利用したマネタイズという新たな道を見出した。これは今や同社にとって欠かせないデータとなっている。
荒れることも少なくないパブリッシャーのコメント欄。だが課題はそれだけでない。不可能ではないにせよ、マネタイズが非常に困難なことでも知られている。
そんななか、独自の手法でマネタイズに挑んでいるのがメレディス(Meredith)のオールレシピ(Allrecipes)だ。
オールレシピはユーザー生成コンテンツが基本のサイトで、世界中のユーザーが得意レシピや家庭料理のアレンジなどを投稿している。そして同社はこの2年ほどで、ユーザーのコメントに基づくファーストパーティのコンテキストデータを利用したマネタイズという新たな道を見出した。これは今や同社にとって欠かせないデータだ。
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コメント分析からスタート
メレディスでビジネスインテリジェンス責任者兼バイスプレジデントを務めるグレース・プレヤポンピサン氏は「オールレシピは20年以上前から、このサービスを提供してきた。『だから我々には20年分のレビューのデータがある』と言いたいところだが、実際はそうではない」と明かす。これまで同サイトでは700万人のユーザーがレシピのレビューをおこなっており、今でも毎週数千件のレビューコメントが新たに投稿されている。
メレディスのビジネスインテリジェンス部門は、3年間かけてこういったデータを収集してきた。プレヤポンピサン氏は、同サイトについてユーザーによるコメントを分析するのに最適な例と考えており、メレディス傘下のさまざまなメディアブランドのなかからオールレシピでの分析をスタートさせたという。同氏は「オールレシピはユーザー体験の改善や、広告パートナーへの情報提供という面で、ユーザーによるコメントをもっとも利用しやすいサイトとなっている」と指摘する。
レシピに関する読者からのコメントを受けることで、オールレシピは新たな知見を得られる。オールレシピのコメントは、基本的にレシピに関するユーザーのフィードバックだ。その性質上、コメントの形式が一定なのも情報の分析・取得にひと役買っている。
プレヤポンピサン氏は「レシピは文章としてしっかりしたものが多く、テキストベースの情報分析の出発点として適している」と語る。
コロナ禍でコメントは増加
最近では、パンデミックの初期段階において食料品の購入頻度が減り、自宅にある食材を利用する人が増えた。これによりオールレシピでは、各レシピのページに別の食材やアレンジといった読者のコメントが増加したという。こうした情報は、消費者向けにパッケージ商品を販売する企業にとって非常に有益だ。
プレヤポンピサン氏は「今までは考えられなかったようなレシピにマヨネーズを使ったというコメントも増えた」と語る。「提携している企業も、製品を新たな形で販売できないか模索を続けており、このような情報への関心は非常に高い」。
同氏は、名前は明かせないものの、あるサラダドレッシングのメーカーから、オールレシピでドレッシングの新しい使い方をしているユーザーがいないか調べてほしいと相談を受けたという。
とはいえ、課題も山積している。コメントから実際に使用された食材を紐解かなければならない上、アレンジで使用した結果が良好だったのか、あまりおいしくなかったのかについても分析する必要がある。アレンジのレシピを試して、実際においしいものになっているかを確認する必要があり、同氏のチームはこの作業に必要な人数の算出を進めているという。
コメントデータマイニングは困難だが
ユーザー生成コンテンツや投稿コメントからコンテキストデータを抽出するというプロセスは決して容易ではない。そのため、メレディスでもアルゴリズムを構築し、チームが利用可能なデータを正確に把握するまでには時間を要したという。
このプロセスを実施したメレディスのビジネスインテリジェンスチームは、さらにサブチームとして投稿に含まれるキーワード認識を担当する分類チームと、アルゴリズムが収集したデータから意味を汲み取るエディトリアル分析チーム、そしてデータを広告主に売り込む営業チームを立ち上げた。
以上のようにデータマイニングは非常に難しく、出発点としてコンテンツの分類や情報から何ができるかを把握するのではなく、戦略を実行するためのチーム編成から始める必要がある。
オールレシピの場合その戦略は、レシピのアレンジ源となる食材を把握するというものだが、これにはユーザーがオールレシピでプロフィールを作成しなくても、位置情報やメールアドレスを共有しなくても問題ないという独自のメリットがある。
プレヤポンピサン氏は「我々は、データを収集するにあたり、個人に焦点を当てるのではなく、ユーザーたちを集団として一般化し、ペルソナを構築しようとしている」と語る。「レシピのアレンジ食材が個人のユーザーにとってではなく、多くの人にとって満足のいくものだったかを把握することが重要なのだ」。
「コメント欄は有益な存在のはず」
料理やレシピ業界以外では、メレディスほどユーザーコメントからコンテキストデータを集められているパブリッシャーは存在しないといってもいい。
G/Oメディア(G/O Media)のCEO、ジム・スパンテラー氏は「コメント欄は、我々の読者がコンテンツ制作側と非常に緊密な関係を築くために有益なはずだ」と考えつつも、プラットフォームとしてデータ収集戦略の構築には至っていないという。あるパブリッシャーは、匿名を条件に、コメント欄をファーストパーティデータのキャッシュとして利用していないと語る。
VOX Mediaは昨年、パブリッシャーコメントプラットフォームのコーラル(Coral)を買収した。コーラル代表のアンドリュー・ロソースキー氏によると、コーラルは現在、200近いメディアサイトにおいて有料のサービスとして活用されているという。コーラルを使うことで、パブリッシャーは、コメントを書いた人がどういった人物かをそれまでのユーザーのプロフィールを通じて確認できるようになる。
コーラルは一人ひとりのユーザーがどういった人物かというデータを提供しているが、そのデータはユーザーのコメントの内容自体ではなく、あくまでそのユーザーのプロフィールとなっている。ロソースキー氏は、スパムや誹謗中傷といった内容以外のコンテキストデータは読み取っていないと語る。
プレヤポンピサン氏は「コメントに基づいた情報をあまり利用していないパブリッシャーが多いのは驚きではない」と語る。「こうした取り組みは、それだけ難しいということだ」。
[原文:With first-party data, Allrecipes is able to bake reader comments into advertisings tools]
KAYLEIGH BARBER(翻訳:SI Japan、編集:分島 翔平)