「コンテンツマーケティングにも、フラウド対策は必須だ」:オールアバウト 中島大輔氏 × IAS 山口武氏

アドフラウド、ブランドセーフティ、ビューアビリティ。以前から存在していたものの、今年これらはデジタル広告における大きな課題として一気に注目を集めた。いまではディスプレイ広告を中心に、アドベリフィケーションツールの普及も進んでいるが、それでもまだ未開の地がある。ネイティブ広告だ。

オールアバウトはこの夏、インテグラル・アド・サイエンス(以下、IAS)と組んで、そこにメスを入れた。国内媒体ではじめて同社のツールをネイティブ広告に導入し、アドフラウドをはじめ、ブランドセーフティ、ビューアビリティへの取り組みを強化。次いで9月には、ツールを導入したインフィード型のアドネットワーク「All Aboutプライムアド」をローンチした。

総合情報サイト「All About」のもともとの強みである1300テーマのコンテンツ、月間3030万ユーザーの規模から得られるオーディエンスデータを活用し、アドフラウドの徹底的な排除とブランドセーフティの担保に本腰を入れる同社の取り組みは、IASも評価するところだ。

IASの山口武氏を交えて、これら一連の取り組みを指揮するオールアバウト メディアビジネス事業部の中島大輔氏に、現状と展望を話してもらった。

IASの山口武氏(左)、オールアバウトの中島大輔氏(右)

IASの山口武氏(左)、オールアバウトの中島大輔氏(右)

――アドフラウド、ブランドセーフティ、ビューアビリティの問題を、それぞれの立場からどう捉えていますか?

山口 武 氏(以下、山口):これらの3つの要素を踏まえて、1インプレッションの価値を把握しようという動きが世界的に高まっています。ブランド広告主の広告予算のデジタルシフトが進む状況下で、CPCやCTRだけでは見えてこない「本当に価値のある配信ができているのか」に注目する企業や代理店が増えていますね。海外に追随して、国内でもそういった傾向が目立っています。

中島 大輔 氏(以下、中島):非人間的なアクセスを指すアドフラウドには、クローラなどの違法ではないトラフィック(GIVT)と、悪意のある事業者によるトラフィック(SIVT)の2種類があります。メディアがいくら正しく運用しようとしても、たとえば不正事業者が正規メディアに見せかけてユーザーを奪うといったケースは起こり得るので、自分たちのインプレッションを守る意味でも、アドフラウドへの対策は必須でした。

そのうえで、広告主に当社が提供できる価値として、より高い広告効果を返していくためには、ブランドセーフティとビューアビリティの観点も担保すべきだと考えています。

――この8月にIASのアドベリフィケーションツールを導入したのは、どういうタイミングだったのですか?

中島:何も特別なできごとがあったわけではないんです。当社はコンテンツマーケティングという言葉が出てくるずっと以前から、コンテンツを通した企業とユーザーとの出会いを支援してきた経緯があります。当然、各コンテンツは人に対して発信しているので、それが本当に心を動かしたのかを正しく測定するのは大前提です。なので、PVやUUも見ていますが、読了率や導線によるユーザーの反応の違い、アンケートによる定性スコアなども評価して、好意度の向上やブランドリフトを中心にレポーティングしてきました。

ですが、ネット広告が浸透して不正なボットなどが出てくると、それらを正しく計測できなくなってきます。つまりコンテンツの正しい評価ができず、コンテンツマーケティングが適正に実行できないので、アドベリフィケーションの導入は必須だと考えるようになり、導入のちょうど1年前の2016年6月ごろにIASさんに相談しました。

「アドフラウドへの対策は必須だった」とオールアバウトの中島氏

「アドフラウドへの対策は必須だった」とオールアバウトの中島氏

――IASとして、そのときの率直な感想は?

山口:非常に速いタイミングだったので驚きました。しかも単に計測を試してみるレベルではなく、実際のビジネスモデルまで踏まえてロードマップをしっかり持たれていたので先進的だと感じましたし、国内でもここまで本腰を入れて取り組むパブリッシャーがあることは、率直に嬉しかったですね。

パブリッシャー側では、海外だと2015年ごろからCPCなどではなく閲覧時間での広告販売がはじまりました。当社が取引をしているパブリッシャーは現在約2500社ありますが、最初は広告主のニーズに対応する「守り」の意味で導入されてきましたが、約2年のあいだにもっと「攻め」の姿勢、つまりパブリッシャー側も積極的に自社媒体のクオリティの高いインプレッションを証明して、媒体資料にしっかり記載するなど強みにしていく動きが目立っています。国内でも、昨年から今年にかけて導入企業数が5倍ほどになりましたが、そこでもアドベリフィケーションツールをポジティブに使う傾向は表れはじめています。

――アドベリフィケーションを導入して、企業へのレポーティングは変わりましたか?

中島:かなり変わりましたね。データサイエンス分野を含めて準備中の部分も多いですが、たとえばアドフラウドについては「IAS社によると国内の不正インプレッション率の平均が8.4%のところ、当社では0.38%でした」と具体的な数値を提示できるのは大きな変化です。皆、「おそらくあるんだろう」と思ってはいるのでしょうが、それを数値として検出し、排除に取り組んでいるといえるのは進歩だと実感しています。

――では「All Aboutプライムアド」の概要を教えてください

中島:9月にローンチしたインフィード型のアドネットワーク「All Aboutプライムアド」は、提携パブリッシャーのインフィード広告枠に、「All About」に出稿する広告主のタイアップ記事への誘導が入る仕組みです。12月現在、大手メディアを筆頭に40のパブリッシャーに参加いただいています。RTBに接続せず一定価格で、当社が制作し審査した広告コンテンツを配信するので、提携パブリッシャーには安全性と同時に高単価を返せることが大きな価値だと捉えられています。

広告主には、優良な媒体からタイアップ記事、そして自社サイトへとユーザーを誘導できることが利点です。当社の姿勢に共感いただき、一緒に取り組みましょうといっていただくケースも増えていますね。既存のオールアバウトの広告主ならマッチすると考えていますが、特に当社がもともと強く、トラフィックが多い、マネー、住宅、健康、暮らし、妊娠・出産、子育てなど、ライフステージ軸のカテゴリは効果が高いと考えています。

――ネイティブ広告へのアドベリフィケーション導入は、まだめずらしいのでは?

山口:国内だと、ほとんどこれからという状況です。海外では少しずつ増えています。アドフラウドはディスプレイ広告のみに関する問題だと思われがちですが、不正な事業者は結局儲かればいいので、すでにCPAの高い動画広告のアドフラウド発生率が上昇しています。企業にとっての本質的なデジタル広告の価値を考えると、広告の形が重要なわけではありません。ネイティブ広告含めてどんな形式でもしっかり対応していくことが必要です。

「広告ならどんな形式でも、しっかりとした対応が必要」と山口氏

「広告ならどんな形式でも、しっかりとした対応が必要」と山口氏

――海外では、企業がアドベリフィケーションツールを導入するケースもあると聞きました。パブリッシャーのあいだでの費用負担の現状は?

山口:これは以前から議論されているテーマですが、ケースバイケースなのが現状です。ポジティブなメリットがあるからとパブリッシャーが負担する場合もあります。一方、広告主も広告プランニングにポジティブに使い投資対効果が認められるため、費用を負担することもあります。閲覧時間やブランドリフトを踏まえた広告プランニングは実態を正しく計測しないとできないので、アドベリが必要になりますね。

――今回、オールアバウトでは、自社で負担するのですか?

中島:はい、プロダクトに含む形になります。当社が提供する広告の質を担保するのは、当然我々に求められることだと思っているので、オプションなどではなく標準化しました。

山口:クオリティの高いコンテンツを提供するパブリッシャーなら、単純に費用負担ばかりかかってメリットがないことはあり得ないと思います。どちらかというと、広告の再評価につながり、広告主もそれを見直しているのが現在の流れです。

――なるほど。特に日本は、海外に比べてCPMがかなり低いですしね

山口:そうですね。その差を埋めていくのもアドベリフィケーションの使命ですし、そのデータの使い方の裏側には、クオリティが高く効果を発揮できる在庫を持っているパブリッシャーと、真の広告効果を求める広告主をつなげる意味合いがあると思います。

中島:それはすごく実感しますね。当社だとアドベリをコンテンツマーケティングに活かしていきますが、おそらくクリエイティブにもデータ活用が価値を発揮すると思いますし、それはCPMにも反映されるはずです。特にパブリッシャー側のコンテンツマーケティングは、これまで職人的に暗黙知で手がけられてきた部分も大きいですが、それがデータで可視化されると形式知になり、CPMの再評価につながります。この点も我々が目指すゴールのひとつです。

――最後に、今後の展望をうかがえますか?

山口:いま、特にブランド広告主において態度変容の調査やビューアブルを前提としたオールターゲットリーチに注目する流れが出てきています。ビューアブルを前提とするKPIはボットでは偽装できないので、そうなると不正な事業者に資金が流れにくくなり、市場が必然的に健全になっていきます。

現状のCPCやCPA至上主義では無限に在庫もトラフィックも必要になるので、ボットが入り込みやすい負の連鎖ともいえます。そこから業界全体が脱却し、本当にデジタルマーケティングは効果があるのだと証明していくことを期待しています。

中島:データを使って、コンテンツマーケティングでどれだけブランドリフトできるか、態度変容してもらえるかを科学的に追求したいと考えているので、まずはそれを中心に進めていきたいと考えています。

今後は、リーチも含めて広告主により多くの価値を返せる世界を目指していきたいですね。安全性を担保したリーチという量の面と、これまで蓄積してきたコンテンツマーケティングのノウハウや、読了や定性調査など、本質的な評価指標といった質の面、この両方を追求していきたいです。

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▼山口 武(写真左)
Integral Ad Science Japan株式会社 アカウント・エグゼクティブ

 

ニューヨーク大学ティッシュ芸術学部卒。2006年、Oddcast, Inc. 入社。2008年、Experian Marketing Solutions, Inc(ニューヨーク本社)にて大手広告主のマーケティングキャンペーンのサポートや戦略的コンサルティング業務を経験し、2011年に帰国、コムスコアジャパン株式会社にてクライアントサービスマネージャーとしてアドベリフィケーションやネット視聴率など多岐にわたるソリューションの営業サポートから実施までの実務を担当。2015年4月より現職。

▼中島大輔(写真右)
株式会社オールアバウト
メディアビジネス事業部 ビジネス開発本部 プラットフォーム開発部
ジェネラルマネジャー

 

制作会社でWebディレクターとして勤務後、Webサービス事業会社において、ブログ、アクセス解析、アドネットワークなどのプロダクトマネージャーとして勤務。オールアバウトにおいては、メディア企画を担当後、現在はジェネラルマネージャーとしてアドネットワークをはじめとした広告プラットフォームの開発を推進。

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Written by 高島知子
Photo by 渡部幸和