デジタルスタジオのカルチャー・ジェネシスは、2019年12月にオール・デフを買収したのち、2020年1月にYouTubeでの広告販売権を初めて確保した。それ以来、カルチャー・ジェネシスはYouTubeの広告インベントリー(在庫)を広告主に直接販売することで500万ドル(約5.5億円)の売上を記録した。
オール・デフ・デジタル(All Def Digital)の所有者であるカルチャー・ジェネシス(Culture Genesis)は、自社や他社のYouTubeチャンネルの直接販売広告およびプログラマティック広告の販売を管理できるようになり、この先1年の売上が1500万ドル(約16億円)を超えると期待している。カルチャー・ジェネシスの共同創業者、セドリック・J・ロジャーズ氏は、「我々は、黒人が所有する唯一のネットワークであり、いまや、この機能を備えたパブリッシャーにもなった」と述べる。YouTubeの広報担当者に、この主張の確認を求めたが、コメントは得られなかった。
デジタルスタジオのカルチャー・ジェネシスは、2019年12月にオール・デフを買収したのち、2020年1月にYouTubeでの広告販売権を初めて確保した。それ以来、カルチャー・ジェネシスはYouTubeの広告インベントリー(在庫)を広告主に直接販売することで500万ドル(約5.5億円)の売上を記録した。現在、同社のYouTube売上の72%を直接販売から得ているのに対し、Google AdSenseプログラムを通じたYouTube主導の売上は28%に留まっている。
カルチャー・ジェネシスのYouTube広告販売権は、最近まで広告主との直接取引にのみ適用されていた。しかし2021年6月に、YouTube向けインベントリーをプログラマティックに販売できる追加機能を獲得した。カルチャー・ジェネシス共同創業者のショウン・ニューサム氏は「現在、我々は完全なプログラマティック・デスクを持っており、ニールセン(Nielsen)のデジタル広告視聴率(Digital Ad Ratings:DAR)システムに対して保証されたデモ・ターゲティングを用いて、プログラマティックにメディア取引を行うことができる」と話す。
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販売・運用チームを倍増させる予定
カルチャー・ジェネシスには現在、販売やメディア運用業務を担当する社員が5~6人おり、今後12~18カ月のあいだにこのチームを倍増させる予定だとニューサム氏は述べる。
ロジャーズ氏によると、社内に販売チームを持っていることが、YouTubeがカルチャー・ジェネシスに販売権を与える際に考慮した条件のひとつだったという。その他の条件には、複数のチャンネルをもっていることがあった。カルチャー・ジェネシスは、オール・デフを通じて10以上のYouTubeチャンネルを運営し、アクティブオーディエンスがいる、とロジャーズ氏は話す。チューブラー・ラボ(Tubular Labs)のデータによると、オール・デフは6月にYouTubeで980万回の視聴(前年比8%減)を獲得している。
「今では、(女性、コメディ、大麻などの専門チャンネルを含む)すべてのチャンネルをバンドルして広告主に提供し、彼らがもっとも注目している(オーディエンスセグメント)をターゲットにすることができるようになった」と、ロジャーズ氏はいう。
YouTube広告、直接販売のメリット
YouTubeは、インベントリーを販売するメディア企業を限定しており、販売権の自律性やより有利なマージンを求める一部の企業はこれに不満を抱いてきた。YouTubeが広告販売を管理している場合、一般的には、結果として得られる広告売上の45%をYouTubeが受け取り、残りの55%がチャンネル所有者に支払われる。
YouTubeインベントリーの販売権を確保することで、メディア企業の広告ピッチに弾みをつけることができる。パブリッシャーは、YouTube独自の販売チームやプログラマティックパイプが提供できる圧倒的な規模には及ばないものの、サイト上の広告やインスタグラムなどのプラットフォームに掲載されるスポンサード投稿など、パブリッシャーのほかのインベントリーソースにまたがる取引にYouTubeインベントリーを含めることができるなど、ほかの利点を活用することができる。さらに、YouTubeは広告主に対して、特定のオーディエンス向けに広告を配信したり、冒涜的な言葉や露骨な暴力が繰り返される動画など、特定の種類のコンテンツを避けたりするためのオプションを提供しているが、パブリッシャーから直接購入することで、広告主はどの動画にブランドの広告が掲載されているかを正確に把握し、コントロールできるようになる。
カルチャー・ジェネシスは、より完全に近い広告販売権を獲得したことで、自社のYouTubeインベントリーだけでなく、ほかのパブリッシャーや個人の動画クリエイターのチャンネルへの広告掲載も視野に入れている。ロジャーズ氏は、「すでに5つのパブリッシャーと契約している」と述べる。ロジャーズ氏は、名前は明かせないとしながらも、コメディ、ゲーム、音楽関連のパブリッシャーやクリエイター、また、主に女性にアピールする動画を制作している女性クリエイターやパブリッシャーと契約していると話す。
グループエムからの強力な支援も
カルチャー・ジェネシスは、広告主が黒人所有のメディア企業(ロジャーズ氏もニューサム氏も黒人だ)に広告費を払うようになれば、YouTubeでの収益をさらに増加させる機会があると考えている。同社はすでにグループエム(GroupM)のメディア・インクルージョン・イニシアチブ(Media Inclusion Initiative)に参加している20社のパブリッシャーのうちの1社であり、これまでにグループエムのクライアントうちの20社が、年間広告予算の2%以上を黒人所有のメディア企業に振り向けることを誓約していることから、その恩恵を受けると目されている。
グループエムはこのイニシアチブのなかで、デジタル、動画、オーディオの専門家を新たに雇用し、プログラムに加えるメディア企業を特定したと、グループエムで最高デジタル投資責任者を務めるスーザン・シーコーファー氏はいう。グループエムでは、オーディエンスの構成、発行周期、コンテンツのブランドスータビリティ(適合性)、第三者検証用のキャンペーンレポートを提供しているかどうか(たとえば、カルチャー・ジェネシスがニールセンのDARをサポートしていること)などの要素に基づいて企業を評価した。
シーコーファー氏は次のように語る。「カルチャー・ジェネシスを見ると、黒人オーディオにリーチすること、もちろんそれは我々にとって非常に重要なことだが、それだけではなく、YouTubeがプレミアムなゴールデンタイムのコンテンツになっている一般の若いオーディエンスにもリーチしている。我々は、YouTubeのコンテンツに特化した分野で独自の見解と提案を持っている企業と協力していきたいと考えている。カルチャー・ジェネシスは、今後も一緒に仕事をしたいと思う企業のひとつだ」。
[原文:All Def owner Culture Genesis snags $5M in revenue after gaining YouTube ad sales rights]
TIM PETERSON(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:長田真)