旅行以外の「活路」を模索する、旅行系パブリッシャーたち:屋外飲食やバーチャル料理教室も

旅行系パブリッシャーは過去2カ月間、数多くの生き残り戦略を採り入れなければならなかった。だが、欧州の格安航空会社イージージェット(EasyJet)が2020年5月21日に、6月から運行を再開すると発表するなど、ある部分では社会的制約が緩和される兆しが見えるようになるにつれ、インスピレーションを与えるコンテンツやバーチャルコンテンツを増やしているところは多い。

成長が戻ったCNトラベラー

コンデナスト(Condé Nast)のタイトルのひとつ、CNトラベラー(CN Traveller)の英国版の広報担当者によると、人々がまた旅行ができるようになることを楽しみにしていることから、CNトラベラーのトラフィックが前年の成長レベルに戻ってきたという。CNトラベラーではまず、リアルタイムの旅行アドバイスをするコンテンツに焦点を絞った。いまは、実用的なアドバイスとならんで、「アイルランドで訪れるべき絶景の場所20」のように、よりインスピレーションを与える旅行コンテンツを選んで掲載している。CNトラベラーは2020年5月、業界の最高のホテルやクルーズをまとめた年1回のレポート「ホットリスト2020(Hot List 2020)」向けのセレクションを公開している。

イタリアでは、人々が用心してロックダウン(都市封鎖)をしたが、CNトラベラーは2回続けて夏と秋にイタリア特集を組み、地元のレストランや景色など同国の楽しみ方を紹介することにしている。その頃までには海外旅行ができるようになるとの期待感があるが、コンデナスト・イタリアの編集ディレクターであるルカ・ディニ氏は、イタリア人が国外に出るとは考えていない。

「観光産業は酷い状況に置かれていて、我々は、地域のレストランやホテルへの支援を示したいと思っている。屋外や野外で過ごすことが大きくクローズアップされている」と、ディニ氏はいう。CNトラベラーは、人々がロックダウンされている数カ月間に、#TravellerLovesItalyのようなハッシュタグを使ってソーシャルメディアで存在感を増そうとしてきたが、イタリアでのその認知度は低かった。ディニ氏は、CNトラベラーへのトラフィックは平均を上回っていると言い、紙媒体の広告キャンペーンのふたつだけは2020年後半にスケジュールを変更したという。

「ここで起きたことは悪夢だったと思うことで、あまりヒステリックにはならずにすんだ」と、ディニ氏は続けて語った。

ダイレクト系は勝ち残っている

旅行業界は、新型コロナウイルスの感染拡大によって真っ先に、しかももっとも大きな打撃を受けた業種に属する。メディアレーダー(MediaRadar)によると、旅行業界の米国内での4月のプログラマティック広告支出は前月比79%減で、もっとも深刻な影響を受けたセクターだという。旅行業界では2020年3月~4月に、プログラマティック広告を利用する広告主が8%減少している。ある旅行系パブリッシャーの販売部門幹部によると、予約され、広告掲載申込書にもサインされたブランデッドコンテンツキャンペーンが無期限に「停止」されているという。だが、提案依頼書(RFP)が少しずつ入ってきている。その理由は、規模の小さいエージェンシーが枯渇するなかで、その対極にある大手エージェンシーが計画を考えるには時間がかかることがあるからだ。

パブリッシャーは、編集的にも商業的にも、さまざまな生き残り戦略を計算しなければならなかった。場合によってはこれは編集チームと販売チームの一時帰休やレイオフを意味した。印刷発行は停止、もしくは延期された。ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は4月に旅行(およびスポーツ)セクションを中断し、代わりに紙面に旅行コンテンツを分散させた。中断された場所には 「自宅で(At home)」と呼ばれるライフスタイルセクションができている。コンデナストの月刊誌のなかには2020年後半へ発行を変更されたものがある。コンデナストではいくつかのバーチャルプロジェクトも準備している。

ブランド構築とコンテンツベースの広告キャンペーンの数は減っている一方、ダイレクトレスポンスとパフォーマンス駆動型の広告が、正確さと効率性で勝ち残っている。人々とより近い場所でやりとりをしているパブリッシャーはうまくやっていける可能性がある。

カルチャー・トリップの試行錯誤

旅行を扱うオンラインパブリッシャー、カルチャー・トリップ(Culture Trip)は、フードと旅行のシリーズ「ハンガーラスト(Hungerlust)」に登場するシェフたちによる料理教室を開始した。視聴者は15ポンド(約1985円)で、マラケシュの邸宅にいるシェフのカリード・ベルドージ氏からタンジーヤ(マラケシュの郷土料理)の作り方を、エルサレムの自宅キッチンにいるシェフのアタリア・アイン・モレ氏からシャクシューカとフムス(それぞれ中東の郷土料理)の作り方を習うことができる。世界中の料理に関する読者が3月~4月のあいだに110%増え、サイト滞在時間も長くなっている、とカルチャー・トリップは述べている。

2020年1月、コロナウイルスが西ヨーロッパで流行し始めたとき、カルチャー・トリップは、2019年12月にはじめたばかりだった旅行宿泊ビジネスに代えて、ベルリンの壁のバーチャルツアーやルーブル美術館のバーチャルツアーのようなバーチャル体験の販売に注力することにした。

「海外旅行が減少することは受け入れなければならない」と、カルチャー・トリップの最高経営責任者(CEO)、クリス・ナウツ氏はいう。「海外旅行の宿泊にフォーカスしたビジネスは難しくなるだろう。体験ビジネスはマージンが低いため、より多くのトランザクションを誘導しなければならないし、人々がやりとりしたいと思う製品を持たなければならない。しかし、食べ物への関心は万国共通で、変わることはない」。

広告主が考えなくてはいけないこと

少なくとも欧州では、広告支出の凍結が解除される兆しが早くも現れている。サンデータイムズ・トラベルマガジン(The Sunday Times Travel Magazine)では広告が増えはじめていると、エディターのエド・グレンバイ氏はいう。ニュースUK(News Uk)の世論調査によると、回答者の65%は、旅行に関する広告主からインスピレーションを与えてくれるメッセージを聞きたがっている(これに対し、安心に関するメッセージを聞きたいという回答は30%、ノスタルジーを感じるメッセージは6%だった)。

広告主たちも人々にリーチする正しい方法を理解しようと努めている。「旅行はマズローの欲求段階のピラミッドでは上部に位置する」とカルチャー・トリップのナウツ氏はいう。「(広告主は)ロックダウンの解除をある程度喜べるが、人々はまだ、親類や友人に会えないままでいる」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)