カタールのドーハに拠点を構える衛星テレビ局のアルジャジーラ(Al Jazeera)は、2014年末にデジタル配信のみに特化した、「AJ+(エージェープラス)」というスマートフォン用のニュース配信アプリを作成した。
アルジャジーラにとって大きな賭けとなった、このアプリ。Facebookなどのプラットフォームを中心に、オーディエンスの育成を行う戦略が採られた。社会問題に限定された配信コンテンツは、短い尺の動画にまとめられ、共有も容易にできるうえ、消音にしていても内容が理解できるようになっている。モバイル機器での視聴を考えて作られているのだ。
この戦略により、「AJ+」はすべてのプラットフォームでオーディエンスを集めることができた。「AJ+」のコンテンツ製作チームは、1週間で約50本もの動画を製作するが、その動画の多くは、どれも尺が1分ほどと短い。280万もの「いいね」を獲得しているFacebookでは、2015年、22億回もの動画再生回数を記録している(Facebookの動画のおよそ半分は、尺が30秒ほどとなっている)。
カタールのドーハに拠点を構える衛星テレビ局のアルジャジーラ(Al Jazeera)は、2014年末にデジタル配信のみに特化した、「AJ+(エージェープラス)」というスマートフォン用のニュース配信アプリをローンチした。
アルジャジーラにとって大きな賭けとなった、このアプリ。Facebookなどのプラットフォームを中心に、オーディエンスの育成を行う戦略が採られた。社会問題に限定された配信コンテンツは、短い尺の動画にまとめられ、共有も容易にできるうえ、消音にしていても内容が理解できるようになっている。モバイル機器での視聴を考えて作られているのだ。
この戦略により、「AJ+」はすべてのプラットフォームでオーディエンスを集めることができた。「AJ+」のコンテンツ製作チームは、1週間で約50本もの動画を製作するが、その動画の多くは、どれも尺が1分ほどと短い。280万もの「いいね」を獲得しているFacebookでは、2015年、22億回もの動画再生回数を記録している(Facebookの動画のおよそ半分は、尺が30秒ほどとなっている)。
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アナリティクス企業チューブラー・ラボ(Tubular Labs)の2015年11月の発表によると、「AJ+」はFacebookで7番目に人気のあるパブリッシャーとなっていて、分散型メディアの代表格「NowThisNews」の背後に位置しているという。
「オーディエンス中心に考える」
「AJ+」の戦略は、Facebookに重きを置いているが、インスタグラムには5万6500人ものフォロワーがいて、YouTubeとTwitterにも、それぞれ17万人と16万6000人の登録者を獲得している。
「この手法の良いところは、以前よりも私たちをオーディエンス中心に物事を考えるようにしてくれたことだ」と、「AJ+」のエンゲージメント部長を勤めるジガール・メタ氏は話す。「どこにオーディエンスがいるのか、どうやってコンテンツを消費しているのかなど、私たちはオーディエンスのことを常に考えている。このように考えることが、それぞれのプラットフォームでの記事の書き方や伝え方の違いにつながってくる」とも話してくれた。
最近、コンテンツ分散戦略がパブリッシャー企業での流行となっている。これは、Facebook、インスタグラムやSnapchatなどと手を組み、それぞれのプラットフォームに対応したコンテンツを作成することで、オーディエンスの拡大を目指すというものだ。同様のプラットフォームである「BuzzFeed」「ビジネスインサイダー」「クォーツ(Quartz)」「フュージョン(Fusion)」など、すべてこの戦略でそれぞれの目的を達成している。
プラットフォームごとに異なる戦略
このコンテンツ分散戦略において、「NowThisNews」が「AJ+」にもっとも近いライバルと言える。どちらもプラットフォーム戦略を中心に考えているからだ。
しかし、今後両社がどう収益化を図っていくかは不明なままだ。巨大なオーディエンス層を構築し、プラットフォーム側と広告取引をするか、もしくは巨大なオーディエンス層を狙っているブランド企業と手を組むかのどちらかになるだろう。
問題は、YouTubeで成功した戦略が、現状ではFacebookに使えないということだ。メタ氏は、「AJ+」はまだブランド企業との直接的な契約はできないが、プラットフォームでの収益化は、2016年には開始すると話している。
また、メタ氏によると、「AJ+」は製作済みの動画をそれぞれのプラットフォームに対応するように作り直しているだけではないと話す。それぞれのプラットフォームではどのような手法がふさわしいのか、目を光らせているというのだ。
たとえば、シリア難民問題について書かれた最新の記事では、シリア難民たちがGoogleで検索していた単語や文章を話題に取り上げ、Facebookに記事を投稿している。
15秒以上の動画が投稿できないインスタグラムでは、写真や難民たちのプロフィールを説明文として書き出すことで、視覚面を強化している。
この子はシリア出身のムハマドだ。現在、ブルガリアのソフィアにある難民キャンプで暮らしている。この写真を@Blindspotbgが撮ったあと、ムハマドに彼が成長したら何になりたいかを聞いた。彼は「ダンサーです」と答えた。ソフィアの難民キャンプで我々が話した多くの男の子たちはサッカー選手などのアスリートと答える子供が多かったためか、ムハマドの回答が際立った。しかし、ムハマドも多くのブルガリア国民にとっては誰だかわからない難民のひとりであり、怖がられる存在だ。そこにムハマドの独特な夢や希望、性格などは関係ない。2015年9月に行ったアンケート調査によると、63%以上のブルガリア国民が、難民問題は身近に迫った恐怖だと感じているという。また、2015年10月には、トルコからブルガリアへ入ろうとしたアフガン難民の男性が国境警備隊によって射殺されている。しかし、これに対して国境警備隊は、威嚇射撃が跳弾し、当たってしまったと話している。この難民問題は欧州連合(EU)にとって前代未聞の出来事となっている。私は@NikolayIvanovNikolovで、共に@AJPlusと取材している。今週は難民問題で苦しむ#Europeの旅にお連れしよう。亡命を願う難民たちが激増するなか、ブルガリアとドイツは大変異なる対応を取っているが、この記事はブルガリアとドイツの現実と予想に迫った、2部構成となっている。#solidaritywithrefugees #photojournalism #streetphotography #photooftheday #winter #refugeecrisis #bestoftheday #portrait #blackandwhite
テレビ局ながらiPhone撮影も
また、このプラットフォームを最重視する戦略は、製作面にまで至っている。2014年8月9日に米ミズーリ州ファーガソン市で発生した白人警官による黒人青年の射殺事件のときに「AJ+」は、iPhoneを使用して撮影を行っていた。当然ながら、iPhoneはプロのカメラマンが使用するような機器ではない。「私たちはそれぞれのプラットフォームに自然と合う方法を常に試している」とメタ氏はコメントしている。
しかしながら、「AJ+」がすべてのプラットフォームで成功しているというわけではない。たとえば、いまだSnapchatを利用することができていない。まだ、Snapchatというプラットフォームで、どう感情的な記事を配信すれば良いかわかっていないからだ(ほかのパブリッシャーと同様に、最新のソーシャルネットワークアプリである「Peach」には飛びついたが)。最新のプラットフォームに投資をしながら、すでに運用しているプラットフォームを拡大させていくバランスを図っていくことが、「AJ+」にとっての最大の難関と言えるだろうと、メタ氏は話している。これはすべてのパブリッシャーに共通する悩みだ。
「私たちにとって、実験が成功するかどうかだけを見ていればよかった時期はとっくに過ぎている。組織としての基盤がしっかりと確立してきたいま、そういった実験ができなくなり、苦しみはじめている」と、メタ氏は最後に付け加えた。
Ricardo Bilton(原文 / 訳:BIG ROMAN)