適切な「モバイル広告」を掲載しているパブリッシャーは、意外と少ない。モバイル広告が安価のため、デバイスの特徴に合わせたリデザインが行われていないのが現状だ。そこで、旧知のエージェンシーに適切な「モバイル広告」を掲載しているパブリッシャーはどこかを聞いた。
いまやほとんどのWebメディアにおいて、アクセスのメインストリームはモバイル端末からとなっている。しかし、パブリッシャーやエージェンシーは、モバイル広告の価格や表現方法に問題を抱えている。その要因は、供給が需要をはるかに上まわるため、結果的に安価となってしまったことにある。
そのため、多くのエージェンシーは、広告クリエイティブをモバイル機器用に小さくリデザインすることはなく、デスクトップバナーを再利用しているのが現状だ。パブリッシャーも押し付けがましい(最悪の場合は混乱させる)広告を出しているという面で責任がある。そのほとんどがモバイル機器用に最適化されていないため、最悪なユーザーエクスペリエンスを提供してしまっているのだ。
しかし、なかにはそうした状況を打破したパブリッシャーやメディアもいる。旧知のエージェンシーに、どのパブリッシャーがモバイル広告をうまく利用しているかを聞いた。
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総合代理店「レイショナルインタラクション」
創業者兼エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター
セリナ・ペトサ氏
モバイル端末は画面スペースが限られているため、Webサイトの構成は文字で埋め尽くすより、シェアできる動画や写真に重点を置いたほうがいい。「BuzzFeed」の記事は、動画や写真が中心となっているため、記事広告の構成も同様になる。コンテンツをスクロールしていくと、人気のある編集記事に混じって、自然な形でスポンサードコンテンツを読むことができるのだ。しかも、その記事広告の内容も素晴らしいので、より一層の価値を生み出している。
「Mashable」のモバイルサイトのインストリームアド
「Mashable」も広告をナチュラルにサイトへ取り込んでいて、違和感を感じさせることがない。広告ユニットのサイズが記事コンテンツと同じになっていて、ユーザーの目障りにならないのだ。「BuzzFeed」や「Mashable」のモバイルサイトが他のパブリッシャーのお手本となれば、従来のスタイルのバナー広告は消えゆくことになるだろう。
クリエイティブエージェンシー「ザ・メディア・キッチン」
シニアストラテジスト
デレク・ルー氏
スポーツメディア「ESPN」のリデザインは大成功だ。コンテンツに対する広告スペースが、とても絶妙なバランスで配置されている。リデザイン以降は、コンテンツを読み込む前に広告を読み込まないようになっている。総合情報サイト「ニューヨークマガジン」のモバイルページは、スクロールやスワイプなどのUIを考慮して設計されていて、広告も同様に設計されている。コンテンツと広告のスペースのバランスも最適だ。
マーケティング&テクノロジーエージェンシー「ディジタス」
メディア、グループディレクター
ジェレミー・テート氏
私の立場からすると、オーバーレイ広告などを利用しながらも、ユーザーエクスペリエンスを損なわない、一体感を生み出すことができるパブリッシャーが素晴らしいと思う。そこで、思い浮かべるのは「ウェザーチャンネル」。広告であると分かりやすいネイティブアドを開発しており、アプリ内で自然に融合させている。しかも、ユーザーごとにターゲティングされた広告を出し分けしているようだ。
デジタルマーケティグカンパニー「リシフトメディア」
共同設立者兼CEO
キーク・アレン氏
良い仕事をしているパブリッシャーを探すのは、とても難しい。流通経路もあり、ブランドに対してアピールもしているが、いまだ従来的なデスクトップ型広告に縛られている。Facebookはパブリッシャーではないかもしれないが、1票を投じたい。彼らのモバイル広告は、コンテンツの一部としてニュースフィードに表示され、明確に広告であると書かれているのにもかかわらず、ユーザーエクスペリエンスを向上させるものだ。
Lucia Moses(原文 / 訳:小嶋太一郎)
Photo by Thinkstock / Getty Images