ある秋の夕刻、フォーダム大学のMBAクラスの学生30人は、「将来デジタルメディア産業で働きたいと考えているか」と問われた。この問いに対して、クラスの3分の1が、「考えている」として手を上げたという。
このような学生が増えた要因のひとつは、デジタルメディアやアドテクノロジーのベテランたち(フォーダム大学を母校とする者もいた)が教室にやってきて、DSP、DMP、SSPの基礎を教えてきたことにある。そこでアドテクとデジタルメディアの世界の面白さを伝え続けてきたことが、学生の興味を掻き立てたることになった。
アンダートーン(Undertone)のCEOエリック・フランキ氏は、ミレニアル世代のクラスに対して「君たちは良いポジションにいる」と語る。「君たちが生まれながらに身につけている、新しいプラットフォームに関する理解が必要とされているのだ」。
アドテクノロジーを大学の学問として捉えることについて、同じくアドテク業界ベテランで大学講師をしているケアリー氏は、「新しいメディアという観点から、確かな学問領域ではあるのだが、大学教授の場合、この分野の専門家として講義するには限界があるため、実際にアドテク業界人を招聘して学生に教えることになっている」と述べる。
ある秋の夕刻、フォーダム大学のMBAクラスの学生30人は、「将来デジタルメディア産業で働きたいと考えているか」と問われた。この問いに対して、クラスの3分の1が、「考えている」として手を上げたという。
これは大変な変化だ。ほんの2年前、この問いに挙手する者はゼロに近かったからだ。当時、「メディアエグゼクティブプレイブック(Media Executive Playbook)」と命名されたこのクラスを、ほとんどの学生は選択科目のひとつとして義務的に受講しているだけだった。
このような積極的な学生が増えた要因のひとつは、デジタルメディアやアドテクノロジーのベテランたち(フォーダム大学を母校とする者もいた)をゲスト講師として招へいし、DSP、DMP、SSPの基礎を教えてきたことにある。そこでアドテクとデジタルメディアの世界の面白さを伝え続けてきたことが、学生の興味を掻き立てたることになった。
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業界人をゲスト講師に招へい
アドテク業界のベテランのひとり、デジタル広告会社アンダートーン(Undertone)創業者のエリック・フランキ氏もフォーダム大学でゲスト講師を務めたことがある。米大手信用調査会社、ダン・アンド・ブラッドストリート(Dun & Bradstreet)のグローバル担当バイスプレジデントを務めながら、大学講師も兼務しているエド・ケアリー氏に要請されたのだ。
ケアリー氏も、もとは雑誌広告セールス幹部であり、ルビコン・プロジェクト(Rubicon Project)やアンダートーン(Undertone)などのアドテク企業で職務に就いた経験がある。
アンダートーン(Undertone)のフランキ氏は、この講義のテーマを、アドネットワークとアドエージェンシーとした。また、テクノロジーベンダーとエージェンシーの境界線が曖昧になってきていることについても語った。学生はとりわけ、プラットフォームラングラー(platform wrangler)、すなわち、エージェンシーやブランド、パブリッシャーの内部で、新しいプラットフォームと自社を結びつけようとする人材に関するフランキ氏の説明に反応したようだ。
常勤講師の手に余る分野
フランキ氏は、ミレニアル世代のクラスに対して「君たちは良いポジションにいる」と語る。「君たちが生まれながらに身につけている、新しいプラットフォームに関する理解が必要とされているのだ」。
フォーダム大学の卒業生でもあるケアリー氏は、学生のアドテクへのキャリアの関心が高まっていると語る。ケアリー氏が受けもつクラスでは、フランキ氏以外にも、ルビコン・プロジェクトの副社長であるジェイ・ シアーズ氏や、ザクシス(Xaxis)のグローバルCEOであるブライアン・レッサー氏などがゲスト講師を務めてきた。
アドテクノロジーを大学の学問として捉えることについてケアリー氏は、「新しいメディアという観点から、確かな学問領域ではあるのだが、常勤の大学教授がこの分野の専門家として講義するには限界がある。そのため、実際のアドテク業界人を招聘して学生に教えることにした」と述べる。
業界には育成が必須
米メディア・エンターテインメントグループ、NBCユニバーサルの国内販売担当シニアバイスプレジデントをつい先月退任したニック・ジョンソン氏は、この数年、母校であるゲティズバーグカレッジおよび同大学のキャリア開発オフィスと協力。デジタルメディアを新しいビジネスキャリアとして広めることを推進してきた。
ジョンソン氏は毎年秋、ゲティズバーグカレッジに赴いて、NBCユニバーサルについて語っている。大半の学生は、このクラスの開始時点で、NBCについてブランドかTVチャンネルとの認識しかない。それから1年、同校に通い、夏には同社内のインターンシップを提供した。
ジョンソン氏は「とりわけ一般教養学部の学生たちは、NBCの仕事の内容や、自分に適した職種をわかっていない」と話す。その後インターンとなった学生たちは、広告業務に配属され、多くの場合、NBCのフルタイムの従業員になっているという。「採用ルートを作ることができた」とジョンソン氏は満足している。
アドテク理解者はほぼいない
学校が必ずしも学生を現実世界の仕事に備えた教育機関となっているわけではないことについては、この業界の多くの人間が問題にしている。ジョンソン氏は「わたしが解決しようとしている問題は、新卒採用において、学術機関と我々業界内の人間をどう繋げられるのかという点だ」と述べる。
まず、デジタルメディアやアドテクがどのように動いているのか理解している人がほとんどいない。次に、採用プロセスがオフサイクルになりかねない。すなわち、学生は春(または夏)に卒業するが、デジタル関係の組織は年間スケジュールで動くことから、しっかりとしたインターンシッププログラムを提供できていないのも現状だ。
業界の大物も講師として参加
BuzzFeedの社長で、アドテク企業クリテオ(Criteo)のプレジデントも務めたグレッグ・コールマン氏は、ニューヨーク大学スターン・ビジネススクールで「デジタルメディア・イノベーション」というクラスを教えている。コールマン氏は、レント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway:ドレスのレンタルサイト)創業者のジェニファー・ハイマン氏や、BuzzFeed創設者のジョナ・ ペレッティ氏などの「友人」を毎週ゲスト講師に招いている。
コールマン氏のクラスでは、学生の成績の75%が最終課題のメディアプロジェクトをもとに評価される。そして、その評価はベンチャーキャピタリストによって行われるという。
エキサイティングなものだ
コールマン氏がそもそも教えようと思ったのは、娘がジョージタウン大学で学びはじめたとき、デジタル分野のカリキュラムが「極めて少ない」のを知ったためだ。現在は状況が少しずつ変わっているが、同氏は、デジタルメディア界の実際の姿をより良く学生に伝えることを主眼にしているという。
コールマン氏を動かしたのは、「学校関係者だけだと十分な教育ができないので、業界の人間がやる必要がある」という思いだ。「ビジネススクールや大学は、全般的に、現在のデジタルメディアやアドテクへのキャリアに学生が備えるために、もっとできることがあるはずだ」とフランキ氏は語る。
「アドテクの変化のペースからすると、出版されてから、まだほんの数年しか経っていない教材であったとしても、古い教材となってしまう。だから、わたしは喜んでゲスト講師をしているし、ビジネスのアドテク面は、学生が考えているよりもずっとエキサイティングなものだと彼らに理解してもらうチャンスであると思っている」。
Shareen Pathak(原文 / 訳:ガリレオ)
Image from ThinkStock / Getty Images