広告ブロック、いまだパブリッシャー収益に「悪影響」

広告ブロックが大きな反発を招いたのは、2016年のことだ。それ以来、大きく報道されることはなくなったが、パブリッシャーの最終損益にとって、いまも大きな脅威であることに変わりはない。そのため、パブリッシャーは収益源の多様化や業界全体の連携に乗り出している。

いくつかの調査で明らかなように、デスクトップでは広告ブロックの勢いが収まっているが、モバイルではブロックされるインプレッションの数が増えている(ただし、増加ペースはゆっくりだ)。増加の原因のひとつは、トラフィックがモバイルに移行するなかで、モバイル向けの広告インプレッションの数が増えていることにある。だが、モバイル市場に新たな広告ブロック業者が参入していることも原因といえるだろう。

「私の感覚では、GDPRの影響のおかげで、パブリッシャーが2018年に広告ブロックの優先順位を下げたことは間違いないが、忘れるべき存在ではない」と、デニス・パブリッシング(Dennis Publishing)でデジタル担当マネージングディレクターを務めるニック・フラッド氏はいう。「この脅威がなくなってしまうことなど、ありえないのだ」。

もっとも有効な対応策とは

広告ブロックによって浮き彫りになったのは、パブリッシャーが収益源を広げることの重要性だ。フューチャー(Future)の場合、広告ブロックに対する懸念がもっとも高まったのは2017年11月のことだった。当時は、同社のゲームサイトでデスクトップインプレッションの54%がブロックされていたと、最高収益責任者を務めるザック・サリバン氏は語る。

「そのこともあって、我々はeコマースに取り組みはじめた。いわば、広告ブロックがきっかけとなったのだ。これ(eコマース)が、オーディエンスをマネタイズしてジャーナリズムに資金を提供する新たな方法なのだ」と、サリバン氏はいう。フューチャーは2018年、テックサイトの「T3」でeコマースの売上がディスプレイ広告収入を上回ったことを明らかにしている。

現在、フューチャーのポートフォリオ全体で、デスクトップの広告ブロック率は7~11%で推移している。一方、モバイルではわずかに1%増えて7%になったと、サリバン氏は付け加えた。フューチャーにとって、読者に広告ブロックを使わないでもらうもっとも効率的な方法は、できるかぎり多くのオプションを提示することだった。具体的には、ホワイトリストへのサイトの登録、広告ブロックの無効化、ユーザー登録、動画広告の視聴などだ。こうしたオプションの利用を促すメッセージを、編集者がサイトのスタイルに合わせて作成した。

「広告ブロックに対する激しい反応はやや収まっているが、問題はいまも残っている」と、広告ブロック解除技術を手がけるソースポイント(Sourcepoint)の共同創業者兼COO、ブライアン・ケイン氏はいう。「一番うまくいく戦略は、顧客と向き合い、彼らに選択肢を提供することだ。それがもっとも丁寧なやり方だ」。

『目に見えない』トラフィック

ゲームサイトは常に広告ブロックの問題に直面している。オーディエンスが技術的な対策により精通しているからだ。広告ブロック対応ソリューションをパブリッシャーに提供している企業によれば、あるゲームサイトでは、モバイルの広告ブロック率が1年で6~10%増加したという。ただし、この企業はそのサイトの名前を明らかにしなかった。一方、ゲーム以外のサイトでは、モバイルの広告ブロック率は2%程度にとどまっている。

フランスの日刊紙ル・モンド(Le Monde)の場合、デスクトップの広告ブロック率は25%あたりで落ち着いているが、モバイルは15%を超えてさらに増える傾向にあるという。ただし、同社はこの比率を減らすよりも、読者からの収益を増やす取り組みに注力している。「(広告ブロック対策は)2年前まで最優先の課題だった。だが、いまの我々の合言葉はサブスクリプションだ」と、デジタル担当責任者のピエール・バフェット氏は話す。「我々は以前より取り組みの範囲を絞っている。人々に広告ブロックをオフにしてもらうことにエネルギーを浪費したくないのだ」。

ただし、バフェット氏は、広告ブロック率のデータが実際より低いと考えている。広告ブロックがトラッキングスクリプトをブロックしているからだ。このことは、トラフィックを追跡できないという別の問題を浮き彫りにしている。「私にとっては、『目に見えない』トラフィックに対する懸念のほうが大きい。このようなトラフィックが構造的に増加傾向にあるのは明らかだ」。また、ケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)の一件など、メディアがらみの大きな事件のおかげでプライバシーに関する懸念が高まっていることも、ひとつの要因となっている。失われたトラフィックと収益がどれくらいあるのかを正確に知ることは難しい。そのため、ル・モンドはこれから数カ月間、ウェブ分析を手がけるATインターネット(AT Internet)と提携して、トラフィックの回復に乗り出す計画だ。また、ページビューの5~15%を取り戻す意向だという。

悪事を働く者は常にいる

現在、広告ブロックにまつわる話は、広告の品質やデータプライバシーに関する議論にまで広がっている。デニスなどのパブリッシャーは、広告ブロックに関するメッセージを表示する機能を、GDPR用の同意管理プラットフォーム(CMP)に統合した。業界全体の問題として取り組みを強化することが、提携を深める結果をもたらしているのだ。「広告ブロック対策ソリューションを手がける企業が、最終損益に違いをもたらすソリューションを開発していると強調するより、パブリッシャーのパートナーになれると宣伝するようになっている」と、英国のオンライン出版社協会(Association of Online Publishers:以下、AOP)でマネージングディレクターを務めるリチャード・リーブス氏は指摘する。

Coalition for Better Ads(良い広告のための連合)は先週、同団体の広告基準を世界全体で適用することを明らかにした。また、GoogleはChromeブラウザの広告フィルタを7月9日から世界中で利用できるようにする。このように、業界は最大限の努力を払っているが、AOPの調査によれば、英国のパブリッシャーはいまも、広告ブロックのおかげで年間数百万ポンドの収益を失っているという。AOPには、コンデナスト(Condé Nast)、ESIメディア(ESI Media)、グローバル(Global)、ガーディアン(The Guardian)、テレグラフ(The Telegraph)といった企業が加盟している。

この原因のひとつは、広告ブロックが容赦なく広告を遮断するツールであることだ。あらゆるパブリッシャーが、一部の悪質な広告業者のために苦しめられることになる。悪事を働く者は常にいるのだ。Googleがチェックした数百万のサイトのうち、フィルタリングする必要があるサイトは1%だというが、そうしたサイトが及ぼす影響は計り知れない。

Googleが業界を前進させる

しかし、Googleの規模の大きさが業界を前進させる手助けになっているとサリバン氏はいう。Googleは自社の取り組みに対してパブリッシャーが疑念を抱いている理由を理解している。一方、パブリッシャーは、フィルタリングが実際にどのように機能するのか、また業界全体にどのような影響を与えるのかなど、まだ伝えてもらえていない詳しい情報がGoogleから提供されることを強く望んでいる。

「ブランド、エージェンシー、サプライサイドプラットフォーム、デマンドサイドプラットフォームなど、誰もが(広告の基準に関する)話をするときが来たことを理解している」と、サリバン氏は話す。「これは業界全体にまたがる話だ。だが、Googleなら(基準の)適用と管理を支援できる。業界にとって大きな助けになるだろう」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)