パブリッシャーたちはしばしば、アドブロックに対してどれくらい強硬な態度をとれば良いか分からずに悩んでいる。
英国のパブリッシャー、インサイシブメディア(Incisive Media)は2015年後半に、広告を非表示にしたアドブロックユーザーのアクセスを禁止にする決断を下した。対象となったのはテック系サイトである「ザ・インクワイヤラー(The Inquirer)」と「V3」。どちらもアドブロック利用者の割合が、20%を越えているという。アクセス禁止という措置によって、アドブロックユーザーのインプレッションが40%も減少するという成果を得た。
パブリッシャーたちはしばしば、アドブロックに対してどれくらい強硬な態度をとれば良いか分からずに悩んでいる。
英国のパブリッシャー、インサイシブメディア(Incisive Media)は2015年後半に、広告を非表示にしたアドブロックユーザーのアクセスを禁止にする決断を下した。対象となったのはテック系サイトである「ザ・インクワイヤラー(The Inquirer)」と「V3」。どちらもアドブロック利用者の割合が、20%を越えているという。すでに施策を実施している「V3」では、アドブロックユーザーのインプレッションが40%も減少するという成果を得た。
アクセス禁止は、4月に開始されたが、それ以前は「ザ・インクワイヤラー」では30%、「V3」では20%のインプレッションが、アドブロックをかけられていたという。2015年9月に行われたAppleのiPhone 6S発表といったメジャー製品のローンチには、オーガニック検索やソーシャルメディアからのトラフィックが激増する。その際には、アドブロックの影響はページインプレッション数のなんと40%にまで及んでいた。それを受けてインサイシブメディアはアドブロックユーザーが20%以上に及ぶサイトは、その利用を禁止にすると決定したのだ。
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閾値はアドブロック使用率20%
インサイシブメディアのオペレーション責任者であるロビン・シュート氏は「20%(を基準にすること)で決めたのは、そこを超えたところから深刻なキャッシュ損失につながるからだ」と語る。
インサイシブメディアにとってアドブロックは非常にリスクの大きな深刻な問題だ。もしも、彼らが擁する全タイトルにおいて、アドブロックの使用率が20%だとすると、ビジネスの損失は平均して年間10万ポンド(約1630万円)以上になると試算されている。
特に「ザ・インクワイヤラー」と「V3」は、収益の決して大きくないプログラマティック広告に強く依存している。そのため、今回の施策を実施すると、その損失はずっと小さくなるはずだ。「これらのタイトルに対しては、各サイトごとに約3万本ポンド(約500万円)が基準値になるだろうと試算している」と、シュート氏は言った。
アドブロックの禁止は難しい
また、アドブロックを使用した閲覧が20%を越えるのは「ザ・インクワイヤラー」と「V3」だけである可能性が高い。このふたつはテック系サイトだからだ。ほかのブランドには経済を扱う「インベストメント・ウィーク(Investments Week)」や「プロフェッショナル・ペンションズ(Professional Pensions)」があるが、これらのサイトではアドブロックの割合はずっと低い。2%から9%になっているという。
「(アドブロックの禁止)をちゃんと機能させるのはすごく難しい。すごく骨が折れるし、特にテック系のブランドでは読者が簡単に(アドブロック禁止を)迂回する方法を暴きだしてしまう」とシュート氏は語る。
しかし、インサイシブメディアは諦めなかった。いまではアドブロックを使用しながら閲覧すると、サイトが広告収入で成り立っていることを丁寧に説明するメッセージが表示され、ブロック解除を読者に嘆願するようになっている。この点は英国でアドブロック禁止を導入した初めてのパブリッシャーであるシティAMと似ている。コンテンツはぼやけて読めなくなっており、ブロック解除をしない限りはクリックすることができない。
定期購読モデルはメディアを選ぶ
シュート氏によると「ザ・インクワイヤラー」のアドブロック禁止は、おそらく来たる6月に実装されるようだ。「ザ・インクワイヤラー」では「V3」よりもアドブロックの割合が高く、またオーディエンスも大きい。彼らの内部で把握しているところだと「ザ・インクワイヤラー」における4月のページビュー数は150万、「V3」は70万となっているという。「ザ・インクワイヤラー」へのアドブロック禁止の導入が遅くなったのは、「V3」よりも後にサイトリニューアルが予定されていたからだと、シュート氏は説明する。
インサイシブメディアは大きくふたつの部署に分かれる。広告収入によるタイトルをすべて扱うインサイシブビジネス(Incisive Business)と、定期購読ベースのタイトルを扱うインサイシブインサイツ(Incisive Insights)だ。広告収入ベースのタイトルに関しても段階的な定期購読システムを検討したこともあった。しかし、テクノロジー系のマーケットは飽和しており、彼らのタイトルにとっては実行可能なプランではなかったと、シュート氏は語った。
Jessica Davies(原文 / 訳:塚本 紺)