一気呵成な宣伝と慎重なマーケティング戦略により、メインストリームに躍り出たTikTokが、メディアを利用して正当性を主張しようとしている。過去2ヵ月、TikTokはいくつかのパブリッシャーを対象に、TikTok上のコンテンツ認知度を高めるためのキャンペーンへの賛同を募るべく、金銭の支払いを進めている。
一気呵成な宣伝と慎重なマーケティング戦略により、メインストリームに躍り出たTikTokが、メディアを利用して正当性を主張しようとしている。
過去2ヵ月、TikTokはBuzzFeedやピンクニュース(PinkNews)、ドードー(The Dodo)といったパブリッシャーを対象に、TikTok上のコンテンツ認知度を高めるためのキャンペーンへの賛同を募るべく、金銭の支払いを進めている。また、TikTokはパブリッシャーによる同プラットフォームへの支出も増やそうと取り組んでおり、TikTokの営業を受けた情報筋によると、キャンペーン上で提携を深める方法についてピッチを行っている。しかし、パブリッシャーやTikTokのインフルエンサーを活用したコンテンツ作成と配信を奨励してはいるが、タレントのマッチングは行っていないという。
ある大手ライフスタイルパブリッシャーの最高収益責任者は、「TikTokによるパブリッシャーへのアプローチは増えている」と語る。「まだ扉は開いたばかりだが、今後TikTokはパブリッシャーとの関係をより深めていくだろう」。
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欲しいのは「正当性の証」
TikTokは7月29日、今後3年のあいだに米国だけで10億ドル(約1060億円)をクリエイターに費やすことを発表しており、それに比べれば、上記のキャンペーンに付随する支出額自体は少ない。
インフルエンサーマーケティングエージェンシーのオブビアスリー(Obviously)のCEO、メイ・カーウォウスキー氏は「TikTokは、メディア企業から、承認や正当性の証が欲しいのだ」と語る。「ニュースフィードを充実させたいという部分も多少はあると考えられる」。
ここ2年間、TikTokは自社広告に資金を投じてきた。ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)の報告によれば、2018年の広告支出は10億ドル(約1060億円)近くになるという。またメディアレーダー(MediaRadar)による分析では、2019年の支出はさらにこの4倍となっている。また、広告費の大半(メディアレーダー[mediaradar]によれば8割)は、若者の注目を集めるTikTokの最大のライバルであるSnapchat(スナップチャット)上でのアプリインストール広告に集中していた。
理にかなった手
だが、このバランスも変化したようだ。「TikTokはもはやメインストリーム化しており、メディア企業との関係をより強固にすることで、立場をさらに盤石にしたいのだろう」とカーウォウスキー氏。最近の米政府からの監視も関係しているはずだと付け加える。米政府からTikTokの禁止が取りざたされているいま、その話題を後押ししているメディアとの関係を強化するというのは、理にかなった手だと同氏は分析する。
さらに、パブリッシャー事業は厳しい状況下にあるため、収益を得られるこの機会に飛びつくはずだ。とはいえ、これまでパブリッシャーはさまざまなプラットフォームで痛い目にあっていることもあり、毎週のように提携企業が増えるなかでも、参加は慎重なアプローチで行われている。ナウディス(NowThis)やコンプレックス(Complex)、インサイダー(Insider)などは、基本的にTikTokをほかのプラットフォーム向けに作成したコンテンツの再配信や、同時配信で利用している。また事情通によれば、BuzzFeedはブランデッドコンテンツの閲覧数を増やすための実験としてTikTokを活用しており、支出額は月に5万ドル(約530万円)以下の小額にとどめているようだ。
このように、パブリッシャーが慎重な姿勢を見せているのは、ほかのマーケターがTikTokで抱えている問題も一端となっている。要するに、TikTokのオーディエンスは、マーケターにとってはあまりに若すぎるのだ。「11歳になる私の姪もTikTokユーザーだ。このように、若すぎるユーザーが多い」と、上述の大手ライフスタイルパブリッシャーの最高収益責任者は述べている。
[原文:‘A stamp of legitimacy’ TikTok turns up its branded content spending and profile with publishers]
KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)