コンデナスト初の最高「多様性」責任者、変革の道筋を語る:「多くの人から話を聞く」

先月、コンデナスト(Condé Nast)は同社初となる「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂)」に関する報告書を公開した。この報告書によって、大手メディア企業の例に漏れず、コンデナストも社内に多様性を巡る不均衡を抱えていることが明らかなった。しかもそれは、とくに経営上層部に顕著であるようだ。

報告書によると、同社上層部の少なくとも75%を白人が占めているという(調査回答者の2%超が自分の民族性について回答しなかった)。また、全社的なジェンダーバランス(男女比の均衡)については詳細を語らず、単に「従業員に占める女性の比率は68%」とのみ開示している。

また、同報告書は、コンデナストがすでに進めている問題解決のための活動にも焦点を当てている。たとえば、採用候補者の半数は多様な出自を持つ者たちから選ぶ、あるいは今年中に全従業員に無意識の偏見や人種差別を克服するためのトレーニングを受講させるなどだ。また、コンデナストは目下、従業員間の賃金格差に関する報告書もまとめている。進捗状況について追跡調査をおこない、年内に改めて報告する予定だという。

さらに先週末、コンデナストはこの取り組みの統括責任者を採用したと発表し、ヤシカ・オールデン氏を同社初の「チーフダイバーシティ&インクルージョンオフィサー」に指名した。オールデン氏の前職は、WPPグローバルチームのD&I責任者だが、ほかにもクレディスイス(Credit Suisse)や製薬会社のサンド(Sandoz)など、多くの企業で同様のポストを歴任してきた。

同氏にとって直属の上司は、コンデナストの最高人事責任者を務める、スタン・ダンカン氏となる。当面は、20人のスタッフから意見や情報を集める活動の陣頭指揮を執るが、オールデン氏によると、来年には専属チームとして増員される予定という。

米DIGIDAYはオールデン氏に電話で取材し、同氏に託された職務を巡る希望と課題、D&I施策を成功させるには、社内のどこに彼のチームを所属させるべきかなどについて話を聞いた。本稿はこの会話の要点をまとめ、編集したものである。

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──ダイバーシティ&インクルージョンは最近大きな注目を集めるトピックだが、あなたは長年この活動に携わってきた。新しい職務を遂行するうえで、これまでの経験をどう活かし、今後の活動の指針とする考えか?

まっさきに思い浮かぶのは、国連の世界食糧計画(UN World Food Program、以下WFP)での活動だ。WFPが活動する国や地域では、常に甚だしい男女不平等に直面させられた。当時、WFPは年間約9000万人の人々を援助していた。

シリア危機が勃発して、大量のシリア難民が発生すると、多くのイスラム教徒に食糧を供給する必要上、ヨルダンとトルコで女性スタッフを増員する必要に迫られた。WFPは、支援が十分に行き届かない人々のニーズを満たすために、まずはダイバーシティの問題を全世界的に統括する職責を新設した。

活動地によっては、グローバルな戦略を策定する一方で、人々を団結させインパクトを与えるためには、ローカルな対応が必要だった。成果を上げるためには、地域に最適化された支援について議論する必要があった。

地域固有のニーズを把握するには、たとえばフォーカスグループへのインタビュー調査など、多くの人の言葉に耳を傾けることが必要だ。コンデナストのD&Iでも、この方針を踏襲したい。自分の経験、さらには従業員のデータや意見に基づきながら話を聞き、問題点を見いだす。それができれば、インパクトを生み出すことができると思う。

──コンデナストの取り組みについて、その完成形あるいは着地点として、想定していることはあるか?

もちろんある。コンデナストの場合、文化的あるいは社会的な代弁者であり続けること、コンデナストが事業を展開するさまざまな市場で、多くの異なる視点をすべて拾い上げることが重要だと考える。ダイバーシティを重視しているからこそ、影響力を発揮し、読者を増やすことができる。これが理想の形だ。

そのためには、データドリブンなアプローチ、人間中心のアプローチが欠かせない。人材採用においては、できるかぎり偏見を排除しなければならない。そして誰もが互いの存在を認め、尊厳と敬意をもって互いを遇することが重要だ。

この取り組みによってもたらされる成果は、我々のコンテンツとして、読者の目に見える形で表れてくるだろう

──その目標を達成するのに、最大の障害となるのは何か?

時間だ。目下、我々はコロナ禍と戦っているが、そのあいだにも黒人は米国の街頭で殺されている。コンデナストの従業員のなかにも、米国で暮らす黒人や有色人種の人々がおり、彼らが厳しい現実に直面していると思うと、心が痛む。我々は弛まぬ努力で職場や仕事の透明性を改善しなければならない。彼らが厳しい現実から受けた傷を癒やす手助けをしなければならない。癒やされることによって、彼らは本来の生産性を発揮し、全力で仕事に打ち込むことができる。

最高経営責任者(CEO)のロジャー・リンチをはじめ、ヴォーグ(Vogue)の編集長であるアナ・ウィンター、そして人事を統括するスタン・ダンカンら、経営陣全体から大きな投資を受けている。コンデナストの場合、経営陣の支持獲得や、彼らからの圧力は大きな課題とはならないだろう。彼らは、私を採用する以前からこの問題と向き合い、従業員の声に耳を傾け、対応し、社内で浮上した問題を是正する努力をおこなってきた。

実際、もっとも大きな問題が見つかるのは往々にして中間層だ。コンデナストも例外ではないだろう。クライアント、パートナー、サプライヤーとのあいだにも、おそらく課題はある。我々のサービスに対して報酬を支払う立場の人々が、常にインクルーシブであるとは限らないし、適切なトレーニングを受けているともかぎらない。彼らの所属する企業には、適切なポリシーすらないかもしれない。

──最大の障害が「時間」というのは具体的にどういう意味か? 緊急だということか?

ダイバーシティの問題の解決をめぐって、コンデナストの従業員たちが抱くある種の切迫感については聞いている。

ダイバーシティとインクルージョンについて考えるとき、その成功の秘訣は当事者意識だと思う。人事部も編集長も、誰もが自分の仕事として認識することが必要だ。また、従業員の声に耳を傾け、その声に従って行動すること、そして自信を持って長期的に実施できる揺るぎない戦略の策定が欠かせない。そうすれば、力強い人間関係を構築し、文化的な領域で高い評価を確立できるだろう。

──D&Iを、組織内のどこに設置すべきだと考えるか? 最適な部署はどこか?

組織によって異なるだろう。事業の運営方法にもよる。

クレディスイスでは、D&Iはジョン・マックCEO直属の組織だった。その時の最高責任者(チーフダイバーシティオフィサー)は、アンジー・キャシアートという女性で、営業部門の出身だった。彼女は社内に築いた同僚との強力な人間関係を活用して、(従業員の誰もが仕事に参加し、経験や能力を活かす機会を与えられるべきという)インクルージョンの重要性を全社的に根づかせた。なかにはあまり歓迎されない施策もあったが、D&IはCクラスの最高幹部直属の組織であるべきと彼女は考え、それを実現させた。

多くの施策を実施して、結果を出すことができた職場では、多くの場合D&IはCEO直属の組織として位置付けられていた。実際、サンドでは、D&Iは法務部の管轄下にあり、法律的な問題として扱っていたわけだが、それでも非常に影響力の大きい人々に直接話を聞いてもらうことができた。会社がD&Iを解決必須の課題と位置づけていたため、我々にはかなり大きな裁量権が与えられていたのだ。コンデナストでも、同様のリーダーシップやガイダンスやサポートを期待している。

これを機に、コンデナストがインクルーシブな環境を提供し、いかなる不品行も許容せず、誰もが尊厳と敬意を持って互いを遇する企業であることを徹底させたい。ファッション業界には、それが甚だしく欠けている。多様性や包摂について、懐疑的で冷笑的と言えるかもしれない。だが私は、コンデナストには、この領域の取り組みを先導し、あるべき姿や手本を示す、大きな機会があると考える。

──この取り組みからコンデナストが得られるものは?

得られるものは大きいと思う。コンデナストは、組織として社会のオピニオンリーダーになる素晴らしい可能性を持っている。我々自身の組織を変えるだけでなく、社会や人々の考え方にも変化をもたらすことができるだろう。もっと柔軟性に優れた職場、従業員の気持ちに寄り添える職場作りを実現したい。

[原文:‘A lot of listening’: A Q&A with Conde Nast’s first chief diversity and inclusion officer, Yashica Olden

MAX WILLENS(翻訳:英じゅんこ、編集:村上莞)