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「著名人の短期連載メルマガは、ちょっとした実験だ」: NYT のオピニオン編集者 K・キングスベリー氏

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ニューヨーク・タイムズ(NYT=The New York Times)は10月19日、ロックバンドのレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(Rage Against the Machine)のギタリストであるトム・モレロ氏とのあいだで、NYTの有料購読者向けオピニオンコラムを週刊で12本執筆するとの契約が締結されたことを発表した。モレロ氏は音楽家である一方で、政治活動家としての顔も持つ。コラムでは音楽をはじめ、政治や人種問題、そのほかさまざまなトピックについて、モレロ氏が意見を述べるという。オピニオン欄を通じて、購読者にアーティストの声を届けるというNYTの新たな取組みだ。コラムは購読者のメールボックスに届けられるニュースレターのなかで読めるほか、ウェブサイト上にも掲載される。

NYTは2021年8月に、購読者限定のニュースレター、「ニュース&オピニオン」を新規と既存を合わせて15本展開すると発表した。同紙によると、8月時点で800万件を超えるサブスクリプション契約があり、1500万人近くが50のメールアドレスを有するポートフォリオ (ニュースレターの一覧)から届くさまざまなニュースレターを毎週読んでいるという。NYTにはオピニオン欄だけで、12種類にもおよぶ購読者限定のニュースレターがある。

「モレロ氏のようなビッグネームが加われば、サブスクリプションの値打ちがさらに上がる」。そう話すのは、NYT「オピニオン」編集者のキャスリーン・キングスベリー氏。「だが実のところ、これは何が読者のあいだで共感を呼ぶのかを見つけるための、ひとつの大きな実験でもある」。この戦略についてさらに詳しく知るため、米DIGIDAYはキングスベリー氏に話を聞いた。

以下、インタビューの内容をお届けする。なお、読みやすさを考慮し、会話には編集を加え、要約している。

◆ ◆ ◆

――サブスクリプション購読者限定ニュースレターの執筆にアーティストを迎えた理由は?

2021年の夏に今回の購読者限定ニュースレターを立ち上げるとき、あるアイデアを思いついて頭から離れなかくなった。それは、2020年のジョージ・フロイド氏殺害事件のあとに、(NYTの執筆協力者である)ジョナ・ワイナー氏がNYTマガジンに寄せたレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンについての推薦状から得たアイデアだった。モレロ氏は独特の視点を持っているし、活動家としての経歴もある。非常に重層的なキャリアがあるので、多くのアーティストと同じように、彼もニュースレターに多くのオーディエンスをもたらしてくれると思った。

私たちが誰かを選ぶのは、その人が、いままさに社会で交わされている会話やこれから取り上げたいと思っている話題について、語るべき重要な何かを持っているからだ。それが、NYTにおけるオピニオン・ジャーナリズムの基本的な考え方だ。私たちの目の前にある政治的意見の衝突に脈絡をつけ、読者にとってより明晰な対話を示したい。これをやってくれるアーティストを、私たちは探している。

たしかに「オピニオン」のなかでとくによく読まれている記事には、文化的な話題を取り上げたものが多いことも分かっている。とくにアートやカルチャーを取り上げると、読者数がはね上がるのは経験上、よく知っている。

――視野に入れているのはミュージシャンだけか?

ほかのミュージシャンとも話し合いをしてきたが、必ずしもミュージシャンである必要はない。小説家やビジュアルアーティストにも参加してもらいたいと考えていて、形式的なことにはまったくこだわらず、何ができるのかを見つけていきたい。そのなかには、オーディエンスの関わり方を探るための、実験的な試みになるものもあるだろう。モレロ氏のコラムには、多くの音声が組み込まれていることにお気づきいただけると思う。この構成デザインを考え出すのには、長い時間がかかった。現在のプラットフォームでは、このような形を採用したことがなかったからだ。それと、楽曲の使用許諾を得なければならなかったことなども、オピニオンでははじめてだった。

1月にロサンゼルスで、できれば対面で行いたいと考えているのだが、そのイベントが今回のレジデンシーのクライマックスとなるだろう。このレジデンシーモデルのために、今回の執筆者とのあいだで経験を積み上げ、オーディエンスに心ゆくまで楽しんでもらえるようなものにしたいと考えている。

――どのくらいの頻度でアーティストに購読者限定ニュースレターの執筆を依頼するのか?

限られた時間のなかで誰かの声を届けられるよう短期間のレジデンシーを行っているが、これを年に1~2回実施していく。10回以上もやるようなことではない。プロのライターではない人と話し合いを重ねて、ふさわしい人物を見つけるのには、多大な労力を要する。次の企画は2月になるだろう。

アーティストという職業そのものが魅力的というわけではないが、彼らはクリエイティブで、強力なアイデアとしっかりした意見を持っている。そんな彼らに、一度きりの経験などではなく、もっとじっくりと複数回にわたって自らの考えに取り組むプラットフォームを提供したいんだ。

――依頼したアーティストが評判の良いコラムニストになるかどうかは、どのように判断するのか?

それがレジデンシーの成否を左右するので、注意深く人を選ぶようにしている。文章サンプルはたくさんある。とくにインスパイアされるのは、実に多くのアーティストが作品の裏側にメッセージを込めているという点だ。私たちはどうすればそれを引き出し、ふくらまし、オピニオンの目的に沿う効果をもたらすものに仕上げられるか? これこそが、私たちが次のセレクションを制作するにあたって自らに投げかける問いだ。また、私たちが提供するプラットフォームをこれまで利用したことがなく、12本のコラムの執筆をこなせる人物を見つけ出したい。もっとも、毎回12本になるかどうかはわからないが、ともかく1本きりというものにはならない。

――現在、これらのニュースレターのサブスクリプション契約数は?

全般的にいって、サブスクリプション購読者限定のニュースレターポートフォリオには、驚くほど多くの方にご契約いただいている(NYTは、購読者限定ニュースレターポートフォリオのサインアップ数およびモレロ氏のニュースレターのサインアップ数について、公表はしていない)。

――購読者限定ニュースレターの次の構想は?

この初めてのポートフォリオはちょっとした実験であり、私たちはここから学ぼうとしている。私たちのジャーナリズムのごく一部分で、ニュースレターを使った実験をしているのだ。サブスクリプション購読者の方々が、これによって契約の付加価値が上がったと感じていただければ幸いだ。読者が支払った購読料以上の価値あるパッケージだと感じ、それが購読者のリテンションにつながることを、期待している。現在のところモレロ氏が最新の執筆者だが、年が明けるころにはさらなる発表があるだろう。

[原文:‘A little bit of an experiment’: New York Times Opinion editor Kathleen Kingsbury on why she’s tapping artists as part of a paid newsletter strategy

SARA GUAGLIONE(翻訳:SI Japan、編集:小玉明依)