BuzzFeed(バズフィード)は目下、SNSで展開中のブラックカルチャーブランド、ココアバター(Cocoa Butter)を、独立したメディア資産として再構築している。同社は10月20日、ココアバターのYouTubeチャンネルを開設。11月末までに同ブランド初の週刊ニュースレターもスタートさせる。
BuzzFeedは目下、SNSで展開中のブラックカルチャーブランド、ココアバター(Cocoa Butter)を、独立したメディア資産として再構築している。
同社は10月20日、ココアバターのYouTubeチャンネルを開設。11月末までに同ブランド初の週刊ニュースレターもスタートさせる。ココアバターは、BuzzFeedが2015年7月に開設したSNSアカウント。これまでココアバターの運営は、主にブラックカルチャーに焦点を当てたBuzzFeedのコンテンツを、複数のソーシャルプラットフォームで再配信することに留まっていた。しかし、このYouTubeチャンネルとニュースレターの立ち上げを機に、独自のメディア資産として発展させ、Facebook Watchで配信した『ジ・エラ(The Era)』のようなオリジナルのコンテンツを作成する計画だという。
「我々が得意とするコンテンツについて考えれば、YouTubeチャンネルの開設は必然だった。これまで発信してきた優れたコンテンツをさらに洗練させ、強化したい」と、同社のブランドストラテジストを務めるシャンタル・ロシェル氏は語る。「しかも、活力に満ちた新たな視点が目の前に提示されているいま、それを推進するのはタイミング的にも最適だ」。
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「YouTube上に安全な場所を」
ココアバターはもともと、いわゆる「分散型」のメディア資産として創設された。各種のソーシャルプラットフォームにアカウントを開設し、本来BuzzFeedに投稿されるコンテンツをSNSで共有することにより、特定のオーディエンスに訴求することが狙いだ。ほかに、同社が展開する分散型メディアとしては、ラテンアメリカ系の人々をターゲットとする、ペロライク(Pero Like)、ゲームに特化したマルチプレイヤー(Multiplayer)、美容系メディアのアズ/イズ(As/Is)、女性向けのレイディライク(Ladylike)などがある(レイディライクは2018年3月に、アズイズに統合されている)。
当初ココアバターは、Facebook、インスタグラム、Twitterに注力していた。というのも、同ブランドのコンテンツが、有名人のリアクションやグルメ、ノスタルジックなコンテンツなど、これらSNSプラットフォームに最適なショートフォーム動画が中心だったからだ。その反面、「BuzzFeedのYouTubeには、黒人の文化やアイデンティティに特化したチャンネルが存在しなかった」。ココアバターのスーパーバイジングプロデューサー、アシュリー・ジョーンズ氏はこう語る。
BuzzFeedはこれまでも、同社所属の黒人タレントが、黒人視聴者のために制作・主演したいくつかの動画をYouTubeに投稿したいと考えていた。しかし、そのための場がなかったとジョーンズ氏は語る。「YouTube上に安全な場所を確保して、長編の動画を投稿し、視聴者のエンゲージメントを増やし、兄弟・姉妹メディアのペロライク、マルチプレイヤー、アズイズと肩を並べられる場をつくりたかった。Facebookだけでなく、YouTubeでも、黒人のクリエイターとして活躍する機会がほしかった」。
シリーズ物を重視して戦略を展開
ココアバターは2020年2月に新しい番組フォーマットの試験運用を開始。そのひとつが『デート・マイ・フィット(Date My Fit)』というシリーズ動画で、ココアバターのFacebookページと、BuzzFeedのYouTubeチャンネルで配信し、シリーズ化したコンテンツのパフォーマンスを検証した。その結果、視聴者の反応が非常に好意的であったため、番組の戦略をシリーズ物重視に、プラットフォーム戦略をYouTubeを中心に据えたという。
「我々の主要なプラットフォームは、YouTubeになるだろう」とジョーンズ氏は述べている。「TwitterやインスタグラムなどのSNSを活用して、視聴者をYouTubeチャンネルに誘導する計画だ」。
なお、YouTubeチャンネル立ち上げには、ジョーンズ氏とロシェル氏のほかに、スーパーバイジングプロデューサーのアディ・マンガム氏、BuzzFeedの動画担当のジェイダ・ハリス氏、アシスタントプロデューサーのトーマス・ブラウント氏が参加している。さらに、フリーランスのクリエイターにもコンテンツを投稿してもらうとともに、長期的には専任スタッフの拡充も計画中だという。
コンテンツの中身と配信戦略の具体
そのYouTubeチャンネルでは、オリジナルの動画シリーズが展開されている。たとえば、世界中の黒人経営者のビジネスにスポットを当てる『ウイ・バイ・ブラック(We Buy Black)』、バラク・オバマ元米国大統領が愛した料理を再現する『プレジデンシャル・バイツ(Presidential Bites)』や、BuzzFeedのプロデューサーであるフレディ・ランサム氏と、同美容ディレクターのエッセンス・ガント氏がヘアスタイリストを求めて国中を旅する『シスターフッド・オブ・ザ・トラベリング・フラット・アイアン(Sisterhood of the Traveling Flat Iron)』などだ。
ココアバターでは、これらを含む3〜4本の番組が同時並行的に配信される。1シーズンは4〜5回程度、各回は8〜10分で構成され、そこでひとつのシーズンが一旦終了する。ジョーンズ氏の説明によると、こうした戦略を採用する理由は、視聴者に飽きられるのを回避すること、そしてさまざまなタイプの番組を試行錯誤しながら続編を作るのか、あるいは別の番組を作るのかを決めるためだという。
なお、各番組の最新話は水曜日、金曜日、日曜日に配信される。ほかのSNSでもっとも視聴率が高い曜日が、日曜と水曜だったため、YouTubeでもこの曜日を踏襲し、さらにもう1日追加したのだという。ただしジョーンズ氏によると、視聴者の反応によっては、この配信サイクルを調整することもあるという。
クロスプラットフォームブランド
YouTubeチャンネルとニュースレターの立ち上げに合わせて、広告主への売り込みも強化する。「これは営業にとっても、ココアバターというブランドを売り込むための新しいセールスポイントであり、セールスチャンスでもある」と、BuzzFeedのコンテンツおよびオペレーションを統括する、シニアバイスプレジデントのトミー・ウェズリー氏は述べている。
同社はこれまで、広告商品としては、スポンサーシップとブランデッドコンテンツをココアバターのクリエイター向けに販売するのみで、クロスプラットフォームブランドとして、企業に提案することはしてこなかったという。なお、これまでのところ、YouTubeチャンネルとニュースレターに関する広告取引はひとつも成立していない。
また、具体的な営業活動として同社が考えているのは、YouTubeの広告在庫を販売するとともに、番組のスポンサーシップと、ココアバターのチャンネルで配信するブランデッドコンテンツの提案だ。さらにBuzzFeedの広報担当者によると、ニュースレターについても、ローンチスポンサー向けの広告商品を開発中で、ニュースレター内のスポンサード広告枠と「ココアバターくじ」が含まれるという。
eコマースでの事業貢献にも期待
さらにココアバターには、同社のeコマース事業に貢献するだろうという期待も寄せられている。ウェズリー氏によると、ココアバターはすでに独自の商品を販売しているが、黒人が経営する企業とのコラボレーションやライセンス商品の開発も模索したいという。
新しく立ち上げたYouTubeチャンネル、近くスタートするニュースレター、そしてBuzzFeedサイトのココアバター専用セクションを合わせれば、「本格的なクロスプラットフォームブランドができあがる」と、ウェズリー氏は語った。
TIM PETERSON(翻訳:英じゅんこ、編集:村上莞)