パブリッシャーに向けた、Googleのモバイルウェブ高速化プロジェクト「AMP(アンプ:Accelerated Mobile Page)」が、2016年2月24日にローンチされた。多くの大手パブリッシャーがオープンソースであることを喜んでいるが、AMPにはまだ未完成な点がいくつかあり、解決されていないこともある。以下にて、AMPに関する代表的な4つの疑問点を振り返ってみよう。
パブリッシャーに向けた、Googleのモバイルウェブ高速化プロジェクト「AMP(アンプ:Accelerated Mobile Page)」が、2016年2月24日にローンチされた。多くの大手パブリッシャーがオープンソースであることを喜んでいるが、AMPにはまだ未完成な点がいくつかあり、解決されていないこともある。以下にて、AMPに関する代表的な4つの疑問点を振り返ってみよう。
マネタイズ
最大の疑問点は、パブリッシャーがAMPのページをどれくらい収益化できるのかということだ。多くのパブリッシャーにとって半数以上のオーディエンスがモバイルユーザーとなるため、競合他社より優位に立つことが必要になる。忙しく働く人たちに、表示の遅いモバイルWebを待つ忍耐力はないため、このAMPが競争力になるのだ。
AMPは基本的に、速度が遅くなる要因となるWebページの情報をできる限り省いているため、モバイル端末で表示が早い。そして、どこのパブリッシャーも使用できるようになっている。
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「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」や「ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)」など、ペイウォール(課金制)を重視するパブリッシャーは、それを保持することも可能だ。しかし、プログラマティック広告の収益を増加できるヘッダー入札に、AMPは対応していない。
ヘッダー入札は「収益を10%から20%ほど増加させる重要な方法だ」と、多くのテクノロジーサイトを運営するオンラインマーケティング企業パーチ(Purch)の最高技術責任者(CTO)であるジョン・ポッター氏はいう。「AMPがヘッダー入札に対応していないということは、ヘッダー入札からの収益が減るということを意味する」。
ほかにも、アウトブレイン(Outbrain)やタブーラ(Taboola)など、コンテンツレコメンドエンジンにもすぐには対応しないため、これもパブリッシャーの収益を減らしてしまう要因になっている。
スピード
広告をなくしてまで、表示速度を高速化させる意味はあるのか? これも、多くのパブリッシャーが疑問に思っていることだ。
Googleは、試験では表示速度が85%も向上したと発表しているが、パブリッシャーもページの表示速度を向上させるために、不要な部分は省くといった努力を行ってきた。AMPによる表示速度の高速化で、訪問者やページビュー、滞在時間などが増えるのか、先述のパーチのようなパブリッシャーはとても気にしているのだ。
また、Googleが特定のパブリッシャーを贔屓にしているのではないか、という懸念もある。Googleはすべてのパブリッシャーを同様に扱うと表明しているが、それぞれのパブリッシャーにおけるAMPページの速度は、検索結果のランキングによって決まるとも言っているのだ。
GoogleがAMPを発表したとき、検索結果に多くのAMP記事を表示していたが、「ニューヨーク・タイムズ」の商品部長であるケイト・ハリス氏は、ユーザーがどのように記事と触れ合い、またそれがエンゲージメントの観点から見てどれほど重要なのか疑問に感じたと話す。
ビデオ
動画の消費と広告料が増加しているため、パブリッシャーにとって動画はとても重要な要素となってきた。そのため、いくつかのパブリッシャーはAMPの動画コンテンツや広告配信の性能がどれほどのものか不安を抱いている。AMPには基本的な動画プレーヤーは備わっているが、この動画プレーヤーで広告主たちが欲しがるデータをすべて計測できるかは不明だ。
「パブリッシャーにとって、動画広告の巻き戻し機能と、データ計測機能はとても重要なことだ」と、大手パブリッシャーの動画部門の役員は話す。「(AMPの)コードを書き換えることもできるが、かなりの労力だ」。コードの書き換えで、AMPの意義である速度を殺してしまう可能性もあることは言うまでもない。
動画広告の巻き戻し機能とデータ計測機能は、Googleが事前承認したYouTubeの動画プレーヤーを使用することで利用できる。しかし、パブリッシャーや、すでに別の動画プレーヤーを使用していて複数の動画プレーヤーを導入したくない企業などにとって、レベニューシェアが煩わしいようだ。
コスト
人材的な観点からすると、AMPは素晴らしい。パブリッシャーから得たアンケートによると、多くはGoogleのAMPを導入する上で新たなスタッフの雇用はせず、既存のスタッフで対応したという結果を得た。
これはAMPが企業内のほとんどすべての部署に関わるからだ。開発、広告販売、商品、モバイルニュースから分析などの部門まで、多くの部署が関わるため、導入してしまえば既存のスタッフで十分対応可能だとパブリッシャーが判断したのだ。
業務内容が増えてしまったパブリッシャーのスタッフたちだが、AMPが収益化につながるかは以前不明なままだ。
Lucia Moses(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Image via Thinkstock / Getty Images