Facebookの「Messenger(メッセンジャー)」がボット(bot)プラットフォームを公開してから2カ月になる。「Messenger」のユーザー数は9億人。そこに切り込むべく、いくつかのパブリッシャーはボットに素早く取り組んだ。ここまでで分かっているのはボットは作るのは簡単でも良い物を作るのは難しいということだ。
しかし、パブリッシャーは「Messenger」を通してのユーザー集めに関して楽観的なようだ。自然な会話に反応できるように、日々改良を加えている。ここでは4つのパブリッシャーの取り組みを紹介する。
Facebookの「Messenger(メッセンジャー)」がボット(bot)プラットフォームを公開してから2カ月になる。「Messenger」のユーザー数は9億人。そこに切り込むべく、いくつかのパブリッシャーはボットに素早く取り組んだ。ここまでで分かっているのはボットは作るのは簡単でも良い物を作るのは難しいということだ。
いまのところFacebookは、ボットをどうやってプロモートするか、ユーザーデータをどうシェアしていくかについて決定を下していない。そのためデベロッパーたちは、自分たちのボットをユーザーに見つけてもらうのに苦労しており、ボットのパフォーマンスについても、はっきりと分からない状態だ。ボットを通してのマネタイズも、現時点ではできない。
しかし、パブリッシャーは「Messenger」を通してのユーザー集めに関して楽観的なようだ。自然な会話に反応できるように、日々改良を加えている。ここでは4つのパブリッシャーの取り組みを紹介する。
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「フュージョン(Fusion)」
いまやニュースは携帯メッセージでもビデオでもどこでも知ることができる。しかし、ポップカルチャー情報サイト「フュージョン」は絵文字を使ったニュース配信ボットで、若いユーザーにアピールしている。基本的にはニュースが短くまとめられた文章を届ける「ニュース・ボット」だが、文中のキーワードが絵文字で置き換えられているのだ。
ニュース全文を読みたければ、メッセージに続くリンクをクリックすれば良い。また、ユーザーが絵文字を送ることで、対応するトピックに関するニュースをリクエストすることもできる。ボット上での返答は自動生成だが、ニュースは2人のフュージョン・ニュース・ラボ(Fusion’s News Lab)の編集員によって毎日手入力されているという。
「絵文字が混じったニュースを読むのはかえって時間がかかって難しいのでは」という大人たちの予想を裏切り、フュージョンは1カ月で4万2000ユーザーを獲得したと発表している。そのうち4分の1が日常的にボットを利用しているそうだ。現時点では絵文字以外にはユニークな機能は存在していないが、今後は扱うニュースの種類を増やす、回答をさらに自然にする、といった計画を立てている。
「テッククランチ(TechCrunch)」
「テッククランチ」のボットはデベロッパーであるチャットフューエル(Chatfuel)によって開発された。話題になっているストーリーを1日に1通送ってくれるボットだ。「menu」と打ち込めば、自分の「テッククランチ」閲覧ヒストリーに基いた、オススメのニュース文が届けられる。
文は「Messenger」のなかでテキストとして読むこともできるし、Webに移って読むこともできる。自分の所在地をシェアすることで、時間帯に合わせたニュース配信を受け取ることもでき、またボットにフィードバックを送ることも可能だ。「テッククランチ」のボットには、このようなシンプルかつ便利な機能がいくつか搭載されている。
基本的な質問にも、このボットは回答してくれるようだ。たとえば、「セラノスさんとは誰ですか?」とメッセージを送れば、短い説明文と関連する記事が返ってくる。Googleの代わりになるほどではないが、記事を読んでいて気になった単語を調べてもらうのには便利だろう。
しかし、物や人物についての質問には答えられても、イベントについての質問は苦手なようだ。これにはユーザーも不満をもらしている。また、記事のまとめ文にも、もう少し改善が求められるようだ。「テッククランチ」は、今後この2点について取り組む予定だという。
ユーザー数などに関してのデータは公表しないとしながらも、オーディエンスディベロップメントのディレクターであるトラビス・バーナード氏は、5月から6月にかけて購読者数とアクティブセッション数は2倍に膨れ上がったと語った。「これから数カ月間、このペースで成長し続けたとしたら『テッククランチ』のアプリのユーザー数を確実に越えるだろう」。
「ポンチョ(Poncho)」
お天気サービスの「ポンチョ」のボットは、入力した郵便番号や町の名前をもとに、カスタマイズされた天気予報を届けてくれる。知りたいときに尋ねることはもちろん、スケジュールを組んで定期的に教えてもらうことも可能だ。
ユーモアを混じえて、メッセージを送ってくれるのは、猫のキャラクター。たとえば「今日の午後は雨が降って気温は10度程度まで落ち込むよ。僕の最悪の敵にすら降りかかって欲しくない天気だよ。だって、アイツは泥が大好きだからさ! ちなみに僕の最悪の敵は豚なんだけどね」といった文章が届けられる。
ベータワークス(Betaworks)による14人編成のチームがボットの微調整を行っており、「傘が必要?」「明日は雪が降る?」といった自然な会話形式の質問にうまく回答できるように改善を試みている。
ユーザー数やエンゲージメントのデータに関しては、ベータワークスは公表しないとのことだが、週間ユーザーは少なくとも何万人という規模にあるとのこと。またフォローアップの質問に回答できるようにボットを調整してきた結果、平均セッション時間は2倍以上に増加し、1分を越しているそうだ。
現時点では天気予報のみの提供だが、他のトピックにも拡大していくことを目標としている。CEOのサム・マンデルは「『ポンチョ』とボーイフレンドやガールフレンドについて話したいと思っている、若いユーザーが確実に存在している」と、語る。
「コンプレックス(Complex)」
男性向けライフスタイルパブリッシャーである「コンプレックス」。ここのボットは毎日、トレンドになっている記事を送ってくれる。そして、ユーザーは自ら選んだトピックについて、カスタマイズされた通知を受けることが可能だ。
トピックにはスポーツブランドのナイキ、アーティストのドレークなどが並ぶ。また、「コンプレックス」の表紙やビデオも通知される。さらに記事は、ボットとのやり取りのなかで読むことができるので、アプリを切り替える必要が無い。「コンプレックス」のボットも人物や物に関する簡単な質問に回答してくれる。
5月初旬にローンチして以来、ボットでのセッションは10万を越しており、利用法としてはダイジェストを受け取る機能がもっとも人気だ。平均セッション時間は1分未満と短いが、現在ユーザーの質問内容を分析しており、回答できる質問の幅を広げる予定とのこと。それによってセッション時間が長くなることを期待している。
Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)