さらに多くのパブリッシャーがサブスクリプションモデルを検討し、その戦術とメトリクスが進化している。それつれて、サブスクリプション型パブリッシャーに付き物の問題であるサブスクライバー維持への取り組みが、新たな重要性を帯びている。
さらに多くのパブリッシャーがサブスクリプションモデルを検討し、その戦術とメトリクスが進化している。それつれて、サブスクリプション型パブリッシャーに付き物の課題であるサブスクライバー維持への取り組みが、新たな重要性を帯びている。
世界新聞協会(WAN-IFRA)が8月22日、サブスクリプション解約に関するレポートを発表した。それによると、アクセル・シュプリンガー(Axel Springer)の新聞「ディ・ベルト(Die Welt)」は、新規サブスクライバーの半数が最初の3カ月間で解約していることを認めているという。この期間を過ぎると、解約率は1カ月で1%から2%の範囲に低下した。
この報告書の著者であるWAN-IFRAのエグゼクティブプログラムエディター、セシリア・キャンベル氏によると、それは典型的なタイムフレームであり、1年間利用を続けると人々は、そのままサブスクリプションを継続する可能性が高いという。しかし、それほど長い期間彼らを維持し続けるためには、オーディエンスをセグメント化し、興味を推測し、読者が気づいていない可能性のあるコンテンツを目の前に提示するために多くのリサーチを必要とする。
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「サブスクライバー維持の重要性が増している。12カ月前、KPIはコンバージョンがすべてだった。多くのパブリッシャーが、2018年はロイヤルティと維持の年だが解約率は2.0%に至っていないと、私に語っている」と、キャンベル氏は米DIGIDAYに述べた。
コンテンツで引き止め
通常、パブリッシャーは解約率や維持率を明らかにすることに対して慎重だ。競争力の根拠であるにもかかわらず、解約率を測定する普遍的な方法はない。パブリッシャーが次に何をすべきかわからないような数値が出てしまうと、関連性を持たせることも難しくなる。
サブスクリプションを開始した読者が読むコンテンツについて調査したスウェーデンの新聞社、シブステッド(Schibsted)が発行する新聞「スヴェンスカ・ダーグブラーデット(Svenska Dagbladet)」は、コンバージョンよりもサブスクライバー維持により効果的な特定のコンテンツに取り組む編集者を雇うことにした。新聞を読む習慣についての調査によると、読者のコンバージョンに寄与した記事は世界的な出来事といった話題であったのに対して、サブスクリプション維持に貢献した記事はアートレビューといった話題だった。
「デジタルの解約率に取り組むことはこれまで以上に重要になっている。新規サブスクライバー数を大きく伸ばした販売と売上拡大の段階から、既存の購読者を維持して満足させることをもう少し重視する段階に向かっている。多くの異なる活動をする必要がある。オンボーディング(定着化)、既存顧客に対する解約防止への取り組み、ロイヤルティプログラム、信頼回復など、よりターゲットを絞った方法で異なる顧客への対策に取り組んでいる。これらの対策にはすべて異なるアクションが必要だ」と、シブステッドのチーフコマーシャルオフィサー、トー・ヤコブセン氏は述べた。
再契約しやすい仕組み
スウェーデンのメディアグループ、ミッテメディア(MittMedia)のチーフデジタルオフィサー、ロビン・ゴビック氏によると、解約にさらなる柔軟性を設けることで解約率が安定しているという。「最初は、ほかのパブリッシャーが行っていたように、解約ボタンを隠してサブスクライバーが解約しにくくなるようにしていた。それにより人々はサブスクリプションを解約するために電話をかけなければならなかった」。
昨年は、デジタルオーディエンスがボタンをクリックするだけで、サブスクリプションの申し込みや解約ができるようにしていた。ミッテメディアの新聞で人気のバーティカルはアイスホッケーだが、10月から4月までのシーズン以外の期間、人々は新聞を読むことに興味を示さない。「我々は読者が戻ってくることがわかっている」とゴビック氏は語った。この柔軟性は、より若いオーディエンスを引きつけるという付加的な利点をもたらしており、ゴビック氏は年齢が20歳以上で同紙のデジタル版を購入している人々と比べて、より多くの30歳から40歳の年齢層の人々がオンライン登録していることを確認している。とはいえ、同紙のデジタル版の読者の方が5倍もロイヤルティが高いと、ゴビック氏はつけ加えた。
ゴビック氏によると、ミッテメディアは7万人のデイリーユーザーを2017年1月に記録した。この数字は現在、毎週2500人の新規顧客が登録することで14万人に倍増している。「解約する人もいるため、純増数はまだ十分ではない」と、同氏は述べた。
定着期間を指標にする
メディアアナリストのトーマス・ビークダル氏は、サブスクリプションを解約した人の数を測定するのではなく、サブスクライバーの定着期間を延ばすことに焦点を合わせるため、彼らが解約するまでの期間を測定することを提案している。
「人々はいずれかの時点で誰もが解約するものだから、解約のキーメトリクスは解約率ではなく、サブスクライバーとして定着していた期間だ。人々が解約するとき、たとえば、1年以上定期購読を続けていたのだろうか?」と同氏は書いている。
解約と新たな見込み客とのバランスをとるために、反応の薄いサブスクライバー数が多いと解約率が高くなるので、パブリッシャーはサブスクライバーの数ではなく、サブスクライバーからの収益に重点を置くべきであると、ビークダル氏はつけ加えた。
「適切なKPIを設定し、クリック数ではなく人々がどれくらいの期間購読しているのかを確認することだ。普遍的な真実のひとつは、関心をもって高い反応を示す読者は解約しないということだ」と、キャンベル氏は語った。
Lucinda Southern(原文 / 訳:Conyac)