YouTubeは9月12日、「タテ型の動画広告」を公開した。これはFacebookやインスタグラム(Instagram)などでもすでに提供されているフォーマットだ。だが、マーケターによると、YouTube上ではインスタグラムやSnapChatとは異なる形で活用されることを期待しているという。
YouTubeは9月12日、「タテ型の動画広告」を公開した。これはFacebookやインスタグラム(Instagram)、Spotify(スポティファイ)、そしてもちろんSnapChat(スナップチャット)でもすでに提供されているフォーマットだ。だが、マーケターによると、YouTube上ではインスタグラムやSnapChatとは異なる形で活用されることを期待しているという。
この広告はYouTube動画内のプレロール広告として表示されるため、Snapchat(スナップチャット)やインスタグラムでの広告のように、人々に上方向のスワイプを促すというよりも、むしろすでにYouTube上にある、テレビ広告に近いものとなっている。
「人々は単にYouTubeを(インスタグラムやSnapChatと)同じようには使わないだけだ。インスタグラムを使っているときは指が上下左右に忙しく動き回るが、YouTubeではスマートフォンをじっと持って見ていることが多い」と、アドテク企業のスチールハウス(SteelHouse)のCEO、マーク・ダグラス氏は語る。
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「簡単に作れる広告」
SnapChatは2014年、NBCユニバーサル(NBCUniversal)と共同制作した、ホラー映画の『ウィジャ(Ouija)』のトレイラー広告で初めてこのフォーマットを公開した。SnapChatのCEOのエヴァン・スピーゲル氏は、2015年のカンヌ国際映画祭で、当時はまだ懐疑的だった広告主に対し、モバイル時代にはタテ型の広告の方が適していることを証明した。現在、あらゆる主要なテック系プラットフォームでこの広告が運用されており、タテ型の動画を見る人が増えるにつれて広告主の関心も高まっているが、これはSnapChatが最初に始めたストーリーズ(Stories)の影響が大きい。
「ブランドやインフルエンサーが公開しているストーリーを自動再生して時間を過ごしているユーザーの一部にとって、ストーリーズはテレビの代わりになっている」と、クリエイティブエージェンシーのフルーイッド(Fluid)でデータ解析部門のアソシエイトディレクターを務めるライジェル・ケーブル氏は語る。「ストーリー内の広告は、広告スポットにとっては素晴らしい機会であり、ストーリーの即席性のおかげで、本物感のあるコンテンツを低予算で作ることができる。おそらく、もっともパフォーマンスが良い」。
YouTubeも、従来商品と比べて「簡単に作れる広告」として売り込みをかけているようだ。
「タテ型の動画広告は、モバイルでも大きくて美しいキャンバスを使ってメッセージを届けることができ、顧客の視聴の好みにあった形でエンゲージメントを高めることができる。ブランド認知のインパクトを最大限に引き出すために、同じキャンペーンでタテ、ヨコ両方の動画を使うことを推奨している」と、Googleは公式にアナウンスしている。
ヒュンダイの先行事例
ヒュンダイ(Huyndai)は、YouTubeのこの広告商品の一般公開に先駆けて、SUVの新モデル「コナ(Kona)」でこれを試した。YouTubeによると、その広告を見た人のヒュンダイのブランド認知度は33%上昇し、広告を見なかった人と比べおよそ12%高かったという。
YouTubeはすでにヒュンダイの広告予算の割合の多くを占めており、自動車の購入者の2人に1人が、購入前にYouTubeで情報を入手し、最終的に車を購入した人の96%がブランドの動画を見ていたと、ヒュンダイ・モーター・アメリカのCMO、ディーン・エヴァンス氏は語る。この新しいタテ型の動画広告のフォーマットのおかげで、ヒュンダイはプレロールのコンテンツを動画のフォーマットに合わせてカスタマイズすることができていると、エヴァンス氏は語る。
だが、広告主にタテ型の動画広告を検討してもらう上では、YouTubeは多くのインベントリを作ることで、間接的にSnapChatやインスタグラムからの恩恵を受けている。この先予想されるのは価格戦争だ。マーケターによると、SnapChatやFacebookのタテ型の動画広告の価格は、いまのところ安価だという。
タテ型動画の重要性
「YouTubeは動画を扱うソーシャルメディアプラットフォームの先駆けのひとつであることや、間違いなく実質上はいまもトップだ。そのYouTubeが採用をはじめたことは、この新しいフォーマットの重要性が高まっていることを示している」と、米シラキュース大学のニューハウス校でコミュニケーション学の助教授を務めるジェニファー・グライジェル氏は語る。
だが現状では、ブランドは単に横型の動画向けに制作された既存のクリエィテブをさっと編集してYouTube限定のタテ型の動画広告を作るか、そのほかのプラットフォーム向けに制作した広告を使い回すかのどちらかではないかと見られている。
「いまだにわからないのは、これが取ってつけたような一時的なものなのか、大きな改革だったのかだ。SnapChatが起こしたイノベーションによって、タテ型動画の採用は間違いなく進んだが、YouTubeは単に追随するつもりなのか、それとも先頭を切って進むつもりなのだろうか?」と、グライジェル氏は語る。
時間における最適解
インスタグラムストーリーズ(Instagram Stories)内の広告の尺の制限は15秒、そしてSnapChatでは10秒だ。YouTubeのタテ型の動画広告では、6秒もしくは任意の長さを選べる(YouTubeは最大3分間を推奨)。スチールハウスのダグラス氏によると、このことでブランドは尺の短い広告を検討しはじめるだろうと語る。だが、それはインスタグラムとSnapChatの仕様に合わせるためであり、おそらく、モバイルの視聴環境ではもっとも適している。
「インスタグラムとSnapChat上の広告は短い。YouTube上の広告も、短いほど良いのではないか。このことで、YouTubeに新しい広告主が増えるだろう」とダグラス氏は語る。