YouTubeが7月末までに、ミッドロール広告を実施するために必要な動画時間を10分から8分に短縮する。広告収益を増やすことだけを目的に動画時間を延ばすことを避けられるとして、登録者が多いチャンネルを運営するパブリッシャーは、このニュースを歓迎している。
そろそろパブリッシャーが出すYouTube動画が短くなっていてもおかしくないころだ。
YouTubeが7月末までに、ミッドロール広告を実施するために必要な動画時間を10分から8分に短縮するのだ。広告収益を増やすことだけを目的に動画時間を延ばすことを避けられるとして、登録者が多いチャンネルを運営するパブリッシャーは、このニュースを歓迎している。あるパブリッシャーは、「制作する必要があるコンテンツが20%減ることの影響は小さくない」と語った。
YouTubeはこの変更で、ミッドロール広告の資格確保のためだけにパブリッシャーやクリエイターが内容を水増しするのをなくそうとしているのではないだろうか。水増しは動画の質が下がるおそれがある。ミッドロール広告を見たあとで埋め草のようなコンテンツしか得られず、視聴者が不愉快になるかもしれない。ミッドロール広告は再生場所がプレイヤーのタイムラインに表示されるので、動画の終わり近くにあるのがわかれば、広告後のコンテンツは水増しだと予想して視聴者が広告前で再生をやめてしまい、制作側とYouTubeに入るはずだった収益が失われてしまう可能性がある。
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「広告のために引き延ばされた動画はわかる」と、前述のパブリッシャーはいう。動画時間の要件を引き下げれば、「その分の引き延ばしがなくなるので、当然、ミッドロール広告を使った動画の質は上がる」。
長尺化していたことの悪影響
2分は短いようだが、最低限の10分を満たすために動画に新たなセグメントを追加することを迫られて、増員が必要になるかもしれない。別のパブリッシャーは、「その分、必要なものが減るので、動画1本あたりのコストは少し下がるはずだ」と語った。景気が停滞しており、コスト削減の可能性はどんなものもありがたい。そのうえ、流せる広告が増えるので、この短くなった動画で収益を増やせる可能性がある。
この数年、パブリッシャーも個人の動画クリエイターもYouTube動画が長尺化しているが、これはひとつには収益維持が目的だった。過激主義者の動画に広告が流れていることが発覚して広告主側が大騒ぎになり、YouTubeは2017年にブランドセーフティのための取り締まりを強化した。これにより収益化からはずれる動画が増えた動画制作側は、失った収益を埋め合わせる方法として、1本の動画に複数のミッドロール広告を挿入するようになった。
3人目のパブリッシャーによると、ミッドロール広告の追加によって1本の動画の収益は通常、約50%増加する。もっともこの数字は、動画に含まれるミッドロール広告の数とその広告を最後まで見る視聴者の数よって変化する。
ところが、この10分間のしきい値を満たすために、クリップを引き伸ばしたり動画の最後で同じクリップを流したりして動画を水増しするパブリッシャーや制作者が出てきた。「10分動画が多いチャンネルにいくと、10分に届かせるための水増しをオーディエンスも知っていることが、多くのコメントからわかるはずだ」と、3人目のパブリッシャーは語る。
尺が短くなること生まれる利点
YouTubeがミッドロール広告に必要な動画の尺の引き下げることで、金銭的な理由だけで動画を長くするパブリッシャーやクリエイターのインセンティブは減るだろう。あるいは減らないかもしれない。YouTubeのチャンネルのオーナーはミッドロール広告を手動で動画に挿入でき、その数に明確な制限がない。とはいえほとんどの場合、パブリッシャーとクリエイターが責任をもってミッドロール広告を入れすぎないようにする。
米DIGIDAYが今年話を聞いたあるクリエイターは、ミッドロール広告は多くても2分半ごとにするのがベストプラクティスだと語っていた。8分の動画だと何本のミッドロール広告を視聴者が許容してくれるのか、パブリッシャーとクリエイターはこれから把握していく必要がある。
今回の変更はすでにYouTubeにアップロードされている動画にも適用されるため、パブリッシャーは勝手に収益が増加する可能性もある。最低時間を引き下げるYouTubeの発表を見て、1人目のパブリッシャーが自社のすべてのYouTubeチャンネルについて動画のライブラリーを解析したところ、あるチャンネルには長さが8分と10分のあいだの動画が約500本もあった。
YouTubeは視聴のロングーテールが評判であることを考えると、8分から10分の動画に挿入されるミッドロール広告の収益はかなりの額になる可能性があるし、そこまでいかない場合も、労せずにお金が入る。このパブリッシャーは、「ライブラリーもよく視聴されているところはちょっとした稼ぎになる」と語った。
[原文:YouTube’s lowered mid-roll ad requirement may lead to shorter videos from publishers]
TIM PETERSON(翻訳:緒方 亮/ガリレオ、編集:長田真)