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「最重要視しているのは、プラットフォームとしての責任を果たしていくこと」: YouTube Works Awards 責任者・中村全信氏

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YouTube広告は、現代のメディアプランに欠かせない存在だ。一見、テレビCMの代替と思われがちだが、効果を可視化できる点で大きな革新をもたらした。いまや、逆にテレビCMの方へ、YouTube広告の考え方が移植される時代となっている。

そんなYouTube広告を正しく評価しようとするアワードがこの春に開催された。最終審査員長に電通の澤本嘉光氏、YouTubeクリエイターのHIKAKIN氏を迎え、ナイキジャパンがグランプリを受賞した、YouTube Works Awardsである。

「YouTube Works Awardsは、応募企業のマーケティング課題、具体的に実践したメディアとクリエイティブのプラン、そして獲得した効果を提出してもらい、それを審査員が選考した結果を発表している」と、グーグル合同会社でYouTube Ads Marketingを統括する中村全信氏は語る。「今(GoogleがYouTube広告において)、もっとも重要視していることのひとつは、メディアプランニングはもちろん、クリエイティブの視点からも、広告主が効果を獲得するための学びを提供していくことだ」。

YouTube Works Awardsの責任者のひとりである中村氏に、日本初開催となったこのアワードについて、メールにてインタビューを行った。以下、その一部始終をご紹介する。

◆ ◆ ◆

ーーYouTube Works Awardsは、今回が日本初開催でした。英国でのアワード設立からの経緯を簡単に教えてください。

YouTube Works Awardsは、YouTubeで高い成果を獲得したキャンペーンを讃えるアワードとして、2017年にイギリスで開催されました。現在では世界20カ国以上で開催され、これまでに150以上の受賞作品が生まれています。

本アワードの世界で共通する大きな特徴は審査基準です。広告主のビジネスの目標に対してYouTubeを活用することによって達成した結果が審査の前提にあり、そのうえで総合的な戦略性や革新性、そしてクリエイティビティを評価しています。

日本では今回が初開催となり、いくつかの日本独自の取り組みを導入しています。たとえば審査員にはブランドやエージェンシーに加えて、映像監督、テレビプロデューサー、俳優、YouTubeクリエイターをお迎えし、より幅広い視点での審査を目指しました。そして、最終審査員長と部門代表審査員制度も導入し、より専門性の高い審査の両立も目指しました。なかでも電通の澤本嘉光氏、YouTubeクリエイターのHIKAKIN氏のおふたりを最終審査員長としてお迎えしたことには大きな反響がありました。その結果もあってか、初年度にして300作品以上もの多くのご応募をいただきました。そこからファイナリストとして40作品を選出し、最終審査を経て、7部門賞とグランプリを発表いたしました。なお、すべての審査の過程においてGoogleはいっさい関与しておらず、賞の選出にあたってはすべて審査員の皆様のご意思で決定しています。

ーーYouTube Works Awardsでは、クリエイティビティだけでなく作品による成果も評価対象になっています。その狙いとは?

まず、成果を上げた広告主と広告会社と喜びを分かち合うことと、マーケティングプラットフォームとしての責任を果たすことがあります。広告はマーケティング活動の一部なので、その成果をしっかりと見直し、そして次回に活かしていく必要があります。YouTubeは、2020年時点で日本で18-64歳の6500万人以上に利用いただいており、マーケティング活動において欠かすことのできないプラットフォームのひとつとして成長した今、その責任をさらに果たすべく、広告の効果・ビジネスの成果を提供することは私たちの最重要課題です。そのためにも、ブランドリフト調査や、テレビCMとYouTubeのリーチ最適化シミュレーションやレポートツールの無償提供など、広告効果測定に関しても最優先事項として取り組んで参りました。

そのようななかで、今、もっとも重要視していることのひとつは、メディアプランニングはもちろん、クリエイティブの視点からも、広告主が効果を獲得するための学びを提供していくことです。たとえば、ある企業がたまたまYouTube広告を実践してみてうまくいった、もしくはうまくいかなかったというような、手探りで実施するものだと、広告主も安心して活用できません。そこで、成果につながった広告主と広告会社の取り組み事例を数多くご紹介することで、より多くの企業に参考にしていただき、さらなる成果を獲得していただきたいと考えました。

YouTube Works Awardsは応募企業のマーケティング課題、具体的に実践したメディアとクリエイティブのプラン、そして獲得した効果を提出いただき、それを審査員が選考した結果を発表しています。もちろん公表できない数字などもありますが、受賞作品の解説をご覧いただくことで、その概要をご理解いただけると思います。この企業ごとの工夫や学びを、少しでも多くの企業のマーケティングの参考にしていただきたいと考えています。

ーー世界各国におけるYouTube Works Awards受賞作と日本の受賞作、傾向の違いはありますか?

日本はまだ初回ということもあり、他国と比較して傾向を分析するには時期尚早だと考えています。そして、YouTube Works Awardsは各国ごとに部門や内容が異なりますので、同じ指標で傾向の違いをお伝えすることは難しいのですが、各国で共通する成功の理由はふたつあります。ひとつは視聴者の気持ちに寄り添うこと、もうひとつは広告フォーマットを適切に選んでいるということです。

たとえば今年のアメリカのグランプリを受賞したデーティングアプリのMatchは、新型コロナウイルス感染症の影響があった2020年と比べて、2021年は素敵な出会いがあるかもしれないというメッセージを込めたユニークな動画広告を制作しました。そして、そのメッセージをコアターゲットである25-39歳の独身と設定し、その方々からのアプリの登録を促すために、人目を引く「行動を促すフレーズ」などによって見込み顧客の獲得とコンバージョンを促進する広告フォーマットであるTrueView(トゥルービュー)アクション広告を活用した結果、大きな目標達成となりました。適切なオーディエンスターゲティングと広告フォーマットの採用は、マーケティングの対象者以外の方に無駄なインプレッションを出さずに効率良く成果を上げるための必要条件です。日本の受賞作品では、LOST ARK「この世界は、青春みたいだ。」が同様の手法で成功を収めています。それぞれの事例の詳細はYouTube Works Awards オフィシャルサイト(アメリカ日本)と、Think with Googleでご確認いただけます。

また、同様にアメリカのビッグスクリーン・ビッグリザルト(Big Screen, Big Results)部門を受賞したバイアコムCBS(ViacomCBS)のケーブルテレビ局のコメディ専門チャンネル、コメディセントラル(Comedy Central)は、コネクテッドテレビ広告での成功事例です。出演作『フェアウェル(The Farewell)』で、アジア人女優として初めてゴールデン・グローブ賞主演女優賞を獲得したYouTubeでも人気のオークワフィナを起用した番組『オークワフィナ・イズ・ノラ・フロム・クィーンズ(Awkwafina is Nora from Queens)』のキャンペーンに、ケーブルテレビではリーチしきれない若年層に向けてYouTubeを活用しました。ゴールデン・グローブ賞の当日に、YouTubeでもっとも注目度の高い 広告フォーマットのひとつである YouTubeマストヘッド広告を実施したり、動画広告シークエンシング機能でエピソードのストーリーを継続的に伝えたり、そしてコネクテッドテレビ広告からシームレスにケーブルテレビ番組の視聴に繋げるなど、オーディエンスの視聴行動を緻密に設計した戦略が光っています。日本でもコネクテッドテレビ広告の成功事例が出始めています(詳細はこちら)。

ーーキャンペーン全体を評価する賞となっていますが、そのなかにおいてYouTubeの役割は、どんなものとなっていますか? これまでの変遷も合わせて教えてください。

今回応募いただいた300以上の作品のなかで、もっとも多かったビジネス目標と達成した成果は「ターゲットリーチとブランド認知の拡大」でした。次いで多かったのは「売上拡大」です。比較的幅広いリーチにも、特定のターゲット(若年層はもちろん、40歳以上などの特定の年齢層や興味関心層)にもブランド認知などの意識・態度変容につながり、かつ店舗での販売増加やオンラインコンバージョンといった直接的な売り上げにも繋がっているという応募作品が多数ありました。

受賞作品では、たとえばグランプリとフォース・フォー・グッド(Force for Good)部門を受賞したナイキ(Nike)やクリエイティブ・エフェクティブネス(Creative Effectiveness)を受賞した大塚製薬は、ターゲット層に的確にメッセージを届け、多くの視聴と議論を生み出し目標を達成しています。メディア・オーケストレーション(Media Orchastration)部門を受賞したトヨタ自動車(Toyota)はシェアの増加、スモールバジェット・ビッグリザルツ(Small Budget, Big Results)部門を受賞した池田模範堂はキャンペーン中にAmazonで商品が売り切れるなど、YouTubeを活用した結果、売り上げの拡大につながっています。YouTubeが、それぞれのマーケティング目標の達成に大きな役割を果たせていることは、とても嬉しく思っています。

ーーしばらくしたら、来年の募集もはじまります。今後この賞で重視されそうなポイントは、どこにあるでしょうか?

マーケティングの対象は人であり、人の気持ちに作用することがマーケティングの役割です。そして時代とともに人の気持ちも変化していきますから、広告表現も変化していくものだと思っています。しかし、いつの時代も、オーディエンスの気持ちに寄り添って、適切なメッセージを適切なタイミングで提供することが、ビジネスの成果に繋げるために最も重要なのではないでしょうか。そして、それは本アワードで大切にしていることでもあります。オーディエンスに価値のある情報を提供して初めて、広告を見た方の意識や態度、行動の変容が起き、結果としてビジネスの成果につながります。その意味では、私たちYouTubeも、オーディエンス・クリエイター・そして広告主の皆様が安全に、安心してご活用いただけるプラットフォームであり続けるためにも、取り組みを続けていきます。

次回のYouTube Works Awardsは10月に発表予定です。DIGIDAY読者の皆様、今回の受賞作を参考にしていただき、どうぞご応募のほどお願い申し上げます。そしてご質問の「重視されそうなポイント」ですが、今回の応募作品のなかには、明確なビジネスの目標、ターゲットオーディエンスにどのような行動を促したかったのかなどのマーケティングKPI、そして達成した成果が明示されていないエントリーもありました。これらはすべて審査で重視する大前提となるものです。ご応募いただく際は応募要項を再度ご確認いただき、これらの必要事項を明記いただきますと幸いです。

Written by 長田真
Photo by Courtesy of グーグル合同会社