YouTube 、ニュース業界支援に2500万ドル拠出を表明

YouTubeは、ニュースに2500万ドル(約28億円)の投資をおこなうと発表した。これは、報道分野の支援のためGoogleが今年3月に3億ドル(約336億円)の拠出を約束した、Googleニュースイニシアチブの一環だ。資金の使途は、パブリッシャー支援のための専門家採用の拡充、パブリッシャーの動画制作部門の設立支援、各報道機関が参加するワーキンググループの創設による新たな動画プロダクトの制作とYouTubeニュースの品質向上となっている。

YouTubeはまた、パブリッシャー向けの動画プレイヤー「Player for Publishers」の対象を拡大。このプレイヤーは、自社サイトへの埋め込みが可能で、関連の広告売上がすべてパブリッシャーに入るのが特徴だ。欧州では2015年に導入され、現在ではワシントン・ポスト(The Washington Post)やVoxなど、25カ国の100以上のパブリッシャーが利用している。

「ニュースは重要であり、我々には皆さんと業界を支援する用意がある」と、YouTubeが主催するイベントでイニシアチブを発表した、同社の最高プロダクト責任者であるニール・モーハン氏は、ニュースメディア幹部や記者に向けてこう話した。「質の高いジャーナリズムとニュース業界全体の支援に、我々はもっと力を入れなければならない」。

適切なバランス

YouTubeは、過激思想やミスリーディングな情報の拡散を見過ごしてきたとの批判を受け、「ニュース業界の友人」というイメージの構築に成功した、親会社のGoogleを見習うことにした。モーハン氏とともにイベントに出席したGoogle幹部は、「持続可能」で「長期的」なニュースエコシステムの構築について、繰り返し語った。

Voxのメリッサ・ベル氏らパブリッシャー側のパネリストは、動画事業の発展にYouTubeがどう貢献できるかを語った。「オーディエンスは深く、豊かな情報を求めていて、我々はそれを提供できる」と、ベル氏は述べた。

しかし、幹部らがこうした新たな取り組みを語る一方で、YouTubeが開かれたプラットフォームとしてのルーツを守ることと、信頼性の高いニュースメディアを支援することのあいだで、適切なバランスを模索している段階にあるのは明らかだ。

YouTubeは、信頼性の高いニュースソースへの支援策として、検索結果にコンテクストを付加するなどの取り組みを打ち出している。

陰謀論との闘い

YouTubeにおけるニュースの品質向上をめざす取り組みも発表された。速報が出た際に、ニュース記事の短いテキストプレビューと、速報の内容は随時更新されるという注意書きを表示するというものがそのひとつ。また、ホーム画面でニュース動画を優先的に表示し、テレビ用アプリでは国内ニュースメディアが優遇される。後者は、速報で最初に現場取材を行うのは、通常国内メディアであり、概して国内の視聴者に信頼されていることを考慮してのものだ。

さらに、陰謀論の対象となっているトピック(月面着陸やオクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件など)の動画には、Wikipediaとブリタニカ百科事典の記述を表示する取り組みもはじまっている。幹部らは、より信頼性の高いソースがおすすめ動画に選ばれるようアルゴリズムを改善中であり、これには以前より検索結果のランキングや、その結果の質を査定するチームを活用してきた、Googleニュースの協力を仰いでいると述べた。

パブリッシャーがプラットフォームへの態度を転換し、売上とトラフィックの源泉として安定性と継続性を見込むようになっているいま、YouTubeは彼らのお気に入りとして急浮上していて、Facebookへの期待の低下もそれを後押ししている。一方で、YouTubeのオープンさは、品質重視のニュースパブリッシャーにとって不利な条件になりうる。また、YouTubeの動画に占めるニュースの割合は比較的小さく、ニュース向けの機能が追加されだしたのもつい最近のことだ。

「速報が必要な状況では、陰謀論との闘いが常に大問題になる」と、ワシントン・ポストの動画ディレクター、ミカ・ジェルマン氏はいう。「YouTubeが信頼できるニュースメディアを優遇してくれるなら、どんなやり方であれ歓迎だ」。

持続可能なソリューション

非公開のアルゴリズムを利用するほかのプラットフォームと同様、YouTubeもパブリッシャーの信頼性の評価方法の説明に苦心している。分極化が進み、ある人にとって信頼のおけるニュースメディアが、別の人にとっては過激派のプロパガンダ手段になる現代においては無理もない。YouTubeは上質の報道を支援する姿勢を見せつつも、コンテクストはユーザーに委ねる意向であるため、自身がテック企業というよりもいちパブリッシャーだという見方もできる。

問題はほかにもある。「Player for Publishers」の利用拡大は、売上のすべてがパブリッシャーに還元され、さらにYouTubeのアルゴリズムを利用しておすすめ動画を表示してパブリッシャー動画の閲覧増加にもつながるため、大きな利益をもたらすことが期待される。だが、このプレイヤーの動画広告は、パブリッシャーの広告枠の数が足りなければGoogleまかせで補充されるため、ほかのプレイヤーを利用した場合よりも広告料が安くなる可能性があると、ある匿名のパブリッシャーは語る。

YouTubeはFacebookとは異なり、コンテンツ制作に直接出資することはないと強調し(これもGoogleと同様だ)、このアプローチの方が継続性の観点からすぐれていると主張した(うがった見方だが、このアプローチなら出資をやめても気づかれにくいともいえる)。

「我々が目指すのはコンテンツへの出資ではなく、持続可能なソリューションだ」と、YouTubeの最高事業責任者、ロバート・キンクル氏はいう。「我々はスキル構築を非常に重視している」

懐疑的なパブリッシャー

しかし内心では、パブリッシャーは2500万ドル規模のこの計画に懐疑的だ。理由として、枠組みの詳細が不明確であること、動画制作経験の乏しい小規模パブリッシャーに対する支援の意味合いが強いことがあげられる。そもそも計画自体が新しいものではなく、すでに発表されているGoogleニュースイニシアチブの一部でしかないこともある。

「ただのジョークだ。画期的なものではない」と、ある大手パブリッシャーは不平を漏らした。ニュースパブリッシャーの一部からは、巨大プラットフォームによる業界の直接支援は総じて不十分だという批判の声があがっている。Googleの3億ドルでさえ、同社の数十億ドルの売上と、パブリッシャーの大幅な売上減を鑑みれば、取るに足らないのだ。

Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)