YouTubeは2014年、静かに広告ポリシーを改定した。スポンサーが「YouTubeチャンネル」で自分のブランドや商品を宣伝するため、動画の途中にタイトルカード(動画再生中にインサートされる図案化された静止画)を差し込むことに神経をとがらしている。広告主がGoogleに申請しない限り(広告費を払わない限り)、ロゴの表示やコンテンツを通じた商品のブランディングは許されなくなった。
YouTubeは2014年、静かに広告ポリシーを改定した。スポンサーが「YouTubeチャンネル」で自分のブランドや商品を宣伝するため、動画の途中にタイトルカード(動画再生中にインサートされる図案化された静止画)を差し込むことに神経をとがらしている。広告主がGoogleに申請しない限り(広告費を払わない限り)、ロゴの表示やコンテンツを通じた商品のブランディングは許されなくなった。
静かなるポリシーを「明確化」
YouTubeはルール改定を既存のポリシーの「明確化」と説明した。Google AdSenseなど正規ルートで掲出された広告とのバッティングや視聴者が「広告爆撃」を受けた気分になることを防ぐ目的だという。
しかし、オンライン動画業界団体「Global Online Video Association」代表のポール・コントニス氏は、この改定について「ユーチューバーやYouTubeチャンネル運営者は、儲けの一部をGoogleにシェアしなければ、スポンサーロゴを挿入できない」側面もあると語った。
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YouTubeは「プロダクト・カード(Product card)」と呼ばれる、動画再生前の6秒間にスポットを入れる新しい広告商品を開発。この商品はメイン動画の外にあるが、ブランド企業はスポンサードコンテンツを流し、短いメッセージを挿入できる。
「『プロダクト・カード』はYouTubeのスタンダードな広告商品になるだろう」と、コントニス氏は分析する。YouTubeはこれについてコメントを出していない。この広告商品の開発を境に、ブランド企業はスポンサードコンテンツを投入し、Googleに対して広告予算を捻出するようになった。収益分配はパートナーごとに異なるが、基本的にはYouTubeが45%、メイン動画の製作者が55%となっている。
スポンサード動画、事実上広告費義務化
また、美容系のユーチューバー「Michelle Phan」や、スポーツ愛好家集団「Dude Perfect」は動画共有サイトで稼ぐ方法を確立した典型例だ。彼らは動画再生中に掲載されるGoogle AdSenseによりYouTube動画を収益化し、再生前の動画広告による収入で、さらにGoogleに依存している。
こうしたユーチューバーたちは、複数のブランドと提携し、それぞれの製品のプロモーションもしてきた。Dude Perfectなら、バブルラップ社とソニーをフィーチャーした動画がいい例だ。エアキャップを製造するバブルラップ社の倉庫で撮影され、動画の最後で同社へ感謝の言葉を贈っている。さらにBubbleWrap(バブルラップ)のタイトルカード(画面左上)が出て、同社ウェブサイトのリンクが貼られているのだ。
YouTubeの新しい規約では、このような動画はバブルラップ社がGoogleの広告商品を買わなければ公開されない。動画再生中に掲載されるGoogle AdSenseなど、正規ルートで掲出された競合他社の広告とのバッティングを避けるためだ。
コントニス氏は「YouTubeはそうする必要がある。なぜなら投稿動画のなかで商品が宣伝され、それに対するGoogleのあずかり知らない広告主が存在することで、自分たちに不利益が生じていると感じているからだ」と解説する。「しかし、この産業が迎えている状況はまだ『最初のイニング』といえる。良質なコンテンツやオーディエンスを構築しようとするネットワークから、近視眼的にマネタイズの機会をうかがう製作者を切り離すことで、さらなる収益化を目論んでいるのだろう」。
動画クリエイターはどう反応するか
このルールをアップロードされたビデオ群すべてに適用するのは困難を極めるだろう。だが、YouTubeは「問題のあるコンテンツ」を見つけるのに、ユーザーの助けを借りられる。
しかし、「YouTubeは船を漕ぎだすタイミングを誤った。なぜなら、YouTubeは『がっぽり稼ぎたいコンテンツクリエイター』を抱えているからだ」と、リサーチ企業Jackdaw Researchの主席分析官、ジャン・ドーソン氏は指摘する。「収益化の方法を取り締まるのならば、人々は新しい動画プラットフォームに群がるだろう」 。
実際、ここ1年でFacebookの動画機能が目覚ましい発展を遂げ、利用者を急激に増やしている。いまや、YouTubeを脅かす存在にまで成長しているという調査結果もあるほどだ。とはいえ、Googleのこうした決定は、あくまでフェアネスに準じていると思える。収益の分配比率の是非などはさておき、少なくとも広告を正しく機能させるためには、必要な処置だろう。
Eric Blattberg(原文 / 訳:長田真)