調査会社のアダリティクス(Adalytics)が2023年6月に発表した報告書によると、YouTubeの子ども向けチャンネルには「永続的識別子(Persistent identifier)」を用いて子どもの個人情報を保護者の同意なしに収集し、ターゲティング広告に利用した事例があるとされる。
この報告書を受けて、YouTubeのプライバシーポリシーとその適用状況があらためて精査されるだろう。子ども向けと指定されたコンテンツのターゲティング広告表示禁止について、米連邦取引委員会(FTC)の要請により成立した児童オンラインプライバシー保護法(Children’s Online Privacy Protection Act:以下COPPA)の要件をYouTubeが厳格に遵守しているかが問われることになる。
COPPAはサービスプロバイダー各社に対し、子どもの個人情報の収集・利用にあたって「検証可能な保護者の同意」の事前取得を義務づけ、収集・利用について保護者に通知する「合理的な努力」を求めている。
子ども向けパーソナライズ広告は停止していなかった?
アダリティクス調査チームの主張によれば、YouTubeのアプリをインストールする過程で生成される「X-Goog-Visitor-ID」と称する永続的識別子の影響で、ユーザーにとって自身が同意した選択肢の管理が難しくなっているという。この識別子はアプリのインストール時に生成され、YouTubeのサーバーへ送信される。広告主はその情報をもとに、子ども向けコンテンツを配信するチャンネルでターゲティング広告を表示できる。
アダリティクスは、(メディアバイヤーには不評の)「Google動画パートナー」ネットワークの透明性検証など、広告の品質と透明性に関するデータ分析で知られ、今回の報告書では次のように指摘している。
「YouTubeのCEOは2019年、同プラットフォーム上の『made for kids(子ども向け)』コンテンツへのパーソナライズド広告の配信を停止すると明言した。それにもかかわらず、2023年7月時点で、人口動態属性とオンライン閲覧行動にもとづくパーソナライズド広告キャンペーンがYouTubeの子ども向けチャンネルに配信された事例が見受けられた」。
当該の報告書は、「子ども向け」設定のチャンネルに配信されたYouTube/Google広告キャンペーンの実績に関し、フォーチュン500に入る広告主や大手メディアエージェンシーのメディアバイヤーからアダリティクスが入手した情報を分析したもの。
子ども向けパーソナライズド広告の事例で名前が挙がったブランドは、マーズ(Mars)、プロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)、Netflix、Apple、フォード(Ford)、コルゲート・パームオリーブ(Colgate-Palmolive)、サムスン(Samsung)など、多くの企業に及ぶ。
疑惑が続くYouTube
また、アダリティクス調査チームは、「大手アドテクおよびデータブローカー企業の多くが、子ども向けYouTube動画チャンネルに配信された広告をクリックした視聴者の個人情報を収集していた」と指摘している。それらの企業には、COPPA違反で罰金を支払ったAmazon、Facebook、マイクロソフト(Microsoft)、オープンX(OpenX)などが含まれるという。
調査会社のアダリティクス(Adalytics)が2023年6月に発表した報告書によると、YouTubeの子ども向けチャンネルには「永続的識別子(Persistent identifier)」を用いて子どもの個人情報を保護者の同意なしに収集し、ターゲティング広告に利用した事例があるとされる。
この報告書を受けて、YouTubeのプライバシーポリシーとその適用状況があらためて精査されるだろう。子ども向けと指定されたコンテンツのターゲティング広告表示禁止について、米連邦取引委員会(FTC)の要請により成立した児童オンラインプライバシー保護法(Children’s Online Privacy Protection Act:以下COPPA)の要件をYouTubeが厳格に遵守しているかが問われることになる。
COPPAはサービスプロバイダー各社に対し、子どもの個人情報の収集・利用にあたって「検証可能な保護者の同意」の事前取得を義務づけ、収集・利用について保護者に通知する「合理的な努力」を求めている。
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子ども向けパーソナライズ広告は停止していなかった?
アダリティクス調査チームの主張によれば、YouTubeのアプリをインストールする過程で生成される「X-Goog-Visitor-ID」と称する永続的識別子の影響で、ユーザーにとって自身が同意した選択肢の管理が難しくなっているという。この識別子はアプリのインストール時に生成され、YouTubeのサーバーへ送信される。広告主はその情報をもとに、子ども向けコンテンツを配信するチャンネルでターゲティング広告を表示できる。
アダリティクスは、(メディアバイヤーには不評の)「Google動画パートナー」ネットワークの透明性検証など、広告の品質と透明性に関するデータ分析で知られ、今回の報告書では次のように指摘している。
「YouTubeのCEOは2019年、同プラットフォーム上の『made for kids(子ども向け)』コンテンツへのパーソナライズド広告の配信を停止すると明言した。それにもかかわらず、2023年7月時点で、人口動態属性とオンライン閲覧行動にもとづくパーソナライズド広告キャンペーンがYouTubeの子ども向けチャンネルに配信された事例が見受けられた」。
当該の報告書は、「子ども向け」設定のチャンネルに配信されたYouTube/Google広告キャンペーンの実績に関し、フォーチュン500に入る広告主や大手メディアエージェンシーのメディアバイヤーからアダリティクスが入手した情報を分析したもの。
子ども向けパーソナライズド広告の事例で名前が挙がったブランドは、マーズ(Mars)、プロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)、Netflix、Apple、フォード(Ford)、コルゲート・パームオリーブ(Colgate-Palmolive)、サムスン(Samsung)など、多くの企業に及ぶ。
疑惑が続くYouTube
また、アダリティクス調査チームは、「大手アドテクおよびデータブローカー企業の多くが、子ども向けYouTube動画チャンネルに配信された広告をクリックした視聴者の個人情報を収集していた」と指摘している。それらの企業には、COPPA違反で罰金を支払ったAmazon、Facebook、マイクロソフト(Microsoft)、オープンX(OpenX)などが含まれるという。
さらに、YouTubeの親会社Googleが運用する広告ターゲティングアルゴリズムの「P-Max(パフォーマンス最大化)」が、YouTubeの子ども向けチャンネルに成人を対象としたブランドの広告を配信しているとの報告もある。P-MAXのキャンペーン設定では出稿の詳細レポートが提供されないため、広告主は自社のキャンペーン配信状況を監視できないという。
一方Google は、アダリティクスが過去に指摘した疑惑に反論したときと同様、今回の報告書にも異議を唱えている。同社の広報担当者はニューヨーク・タイムズ(The New York Times)の取材に応え、アダリティクスの調査結果が「誤解を招く」内容だと述べた。
アダリティクスが以前発表した報告書では、本来YouTube向けだったはずの広告が、YouTube以外のプラットフォームやアプリで構成されるGoogle動画パートナー(GVP)のサイトに配信されていたことが発覚し、多くのメディアバイヤーの不興を買ったうえ、広告主の業界団体からも問題視され説明を求められた。今回の報告書をきっかけに、オンライン広告最大手であるGoogleへの風当たりはさらに強まりそうだ。
折しもGoogleは、米司法省が提起した反トラスト法違反訴訟という、同社創業以来もっとも厳しい試練を迎えようとしている。年内に初公判が予定されているが、裁判の行方いかんではGoogle広告事業の分割命令が下る可能性もある。
Googleからのコメント
本記事の公開後、Googleの広報担当者から米DIGIDAYに連絡があり、アダリティクスの主張に対する反駁として、以下の声明文が送られてきた。
アダリティクスはここ数週間で2度にわたり、重大な欠陥があり誤解を招く内容の報告書を発表した。YouTube Kidsアプリにおいてパーソナライズド広告が許可された例はなく、当社は2020年1月から、パーソナライズド広告禁止のポリシー適用対象をYouTubeの子ども向けコンテンツを視聴する全年齢層のユーザーに拡大した。アダリティクスの報告書の主張はまったくの誤りで、業界で広く普及しているCookieの存在のみを根拠に、十分な情報なしに結論を導きだしている。
当社の広告事業におけるCookieの使用は広告詐欺の検知とフリークエンシーキャップの設定を目的としたもので、これらの目的でのCookie使用はCOPPAで許可されている。アダリティクスの報告書で問題点として挙げられた慣行には、当社の広告掲載ポリシー違反の事例はひとつもない。
[原文:YouTube is under fire again, this time over child protection]
Ronan Shields(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)