YouTubeは、2016年に買収したインフルエンサーマーケティングプラットフォームのフェイムビット(FameBit)を、マーケターに向けた売り込み材料として強化してきた。その強みは「クリエイターとブランデッドコンテンツで提携できる」点だという。
YouTubeは、2016年に買収したインフルエンサーマーケティングプラットフォームのフェイムビット(FameBit)を、マーケターに向けた売り込み材料として強化してきた。
現在、YouTubeは広告主に対してフェイムビットを以前よりもプッシュするようになっている。世界的エージェンシー3社に勤める役員に聞いたところ、YouTubeから聞かされたウリ文句で共通しているのが「クリエイターとブランデッドコンテンツで提携できる」点だという。
フェイムビットとの話し合いを行ったあるエージェンシー役員は「(YouTubeの)デジタルプランナーからフェイムビットについて聞かされることが増えた。実際当社でも検討事項になっている。フェイムビットはあまり話題になっていないが、やっていることはユニークだ。マージンを公開しているのは業界でもめずらしいし、YouTubeとのつながりもある」と述べる。同氏はまだキャンペーン展開は行っていないものの、クライアント数社についてフェイムビットを検討したという。
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フェイムビットにおけるウリ文句
Googleはこれまでフェイムビットの成功について宣伝してきた。2018年度第2四半期のGoogleの業績報告で、同社のCEOサンダー・ピチャイ氏は、同年度上半期でフェイムビットのクリエイターの半数がYouTube収益を倍に伸ばしたと語っている。Googleの広報担当によると、今年2月には、フェイムビット上で行われたブランドキャンペーンの数が前年度比で259%増加したという。
現在、YouTubeの営業チームはYouTube上のブランデッドコンテンツに興味のあるマーケターに対し、フェイムビットを最適なソリューションとして売り込んでいる。米DIGIDAYが2018年4月に入手したYouTubeの営業資料には、ほかのインフルエンサーマーケティングプラットフォームと比べたフェイムビットの強みとして次の点が記載されている。「YouTubeのエコシステム全体へのアクセス、Googleデータを活用したマッチング、透明性の高いプロセス、キュレーションと保証されたオーガニックな閲覧数、GoogleとYouTubeを通じたリターゲティング能力、ブランデッドコンテンツのオーガニックな測定」。
エージェンシー2社の役員は、なかでもリターゲティング能力がもっとも魅力的だと口をそろえる。フェイムビットを使えば、ブランドの動画を視聴したオーディエンスに対してほかのYouTube動画でプレロール広告とミッドロール広告によるリターゲティングができるのだ。さらにこのオーディエンスに対し、ほかにも検索広告やAndroid向け広告も展開できる。
周辺サービスが大きな強み
あるエージェンシー役員は、「フェイムビットは、別にインフルエンサーの人材という面でほかより優れているわけではない。当社にとっては、メディアやリターゲティング、ワンストップという点での強みが大きい」と語る。
同役員がYouTubeとの会議後に、個人情報面で懸念はあるか質問したところ、フェイムビットはGoogleの広告商品全体にわたるリターゲティング関連のポリシーを遵守している、との回答が返ってきたとのことだ。
Googleはプライバシーポリシーのなかでフェイムビットやブランデッドコンテンツの名称を挙げてはいないが、同ポリシーには「YouTubeでギタリストの動画を再生すると、その後、Googleの広告サービスを利用しているサイトにアクセスしたときにギターレッスンの広告が表示されることがある」と書かれている。当然ながら、こうした動画はフェイムビットが主導するブランデッドコンテンツ契約にもとづいて表示されるケースも存在するのだ。ブランデッドコンテンツとフェイムビットはGoogleヘルプのYouTubeオーディエンスへのリマーケティングに関する項目にも記載されていない。
ブランデッドコンテンツで有利
芸能エージェンシーのセレクトマネジメントグループ(Select Management Group)でパートナーおよびタレント担当マネージャーを務めるエイミー・ネーベン氏の周囲でも、ここ数年でフェイムビットを利用するエージェンシーが増えたという。同氏はスタジオ71(Studio71)でタレント担当マネージャーを務めていたころ、フェイムビットがYouTubeに買収される以前から、フェイムビットを活用していた。ネーベン氏は、広告主にとって魅力なのは、YouTubeをはじめとするGoogleのサービスと、より密接に連携できる点にあると指摘し、次のように述べた。
「YouTubeが(ブランデッドコンテンツを)営業チームに重視させ、営業パッケージに含めているのは賢いやり方だ。フェイムビットに移行するエージェンシーは非常に増えている。もともと各エージェンシーともGoogleと取引しているわけで、ワンストップにできるメリットがある」。
YouTubeによる買収以降、タレントエージェンシーにとってもフェイムビットは便利なサービスとなっている。
ボトルロケット・マネジメント(Bottle Rocket Management)の創設者兼CEOのチャス・ラケレイド氏は、「YouTubeに買収されたおかげでフェイムビットとの仕事がはるかに楽になった。YouTubeは私のクライアントと契約して欲しいようなブランド各社と提携しているため、非常に理にかなった選択肢になったのだ」と語る。
「完璧なソリューションだ」
マーケターたちは、インハウス業務が増えているいま、インフルエンサーマーケティングのプラットフォームとしてのフェイムビットの地位は高まっていく一方だろうと口をそろえる。
あるエージェンシーの役員は次のように指摘している。「フェイムビットは自社で業務をこなしたい中小規模のブランドにとって完璧なソリューションだ」。
Kerry Flynn(原文 / 訳:SI Japan)