現在、YouTube動画をテレビ番組として捉え、スマートテレビで視聴する人が増えている。オンラインタレントとエンタメ系コンテンツを扱うコラブ(Collab)によれば、同社が展開するYouTubeの300チャネルにおいて、2020年第3四半期の視聴時間の実に34%がスマートテレビによるものとなっているという。
現在、YouTube動画をテレビ番組として捉え、スマートテレビで視聴するオーディエンスが増えている。
オンラインタレントとエンタメ系コンテンツを扱うスタジオのコラブ(Collab)によれば、同社が展開するYouTubeの300チャネルにおいて、2020年第3四半期の視聴時間の実に34%がスマートテレビによるものとなっている。2019年第4四半期の時点では同27%だったのに対し、明らかな増加が見て取れる。
現在、スマートテレビの市場シェアは拡大の一途を突き進んでおり、YouTubeの視聴もほかのデバイスではなく、スマートテレビを選ぶオーディエンスが増加している。さらに、コラブによればデバイス別の1回あたりの平均視聴時間も、モバイルが3.61分、デスクトップが5.74分なのに対し、スマートテレビでは7.26分と最長である。
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コラブでEVP兼マーケティング責任者を務めるデイブ・ロスナー氏は「YouTubeコンテンツを、まるでテレビ番組のように楽しむ世代の登場が大きく影響している」と語る。
依然としてモバイルが最大勢力
ただし、上記のようにスマートテレビでYouTubeを視聴する層は増えているものの、視聴するデバイスとしてもっとも使われているのは依然としてモバイルだ。コラブも、モバイルデバイスは全体の再生時間の41%を占めると報告している。さらに、動画投稿者のカテゴリーによっては、さらにモバイルの割合が高いケースもある。たとえばゲーム実況やeスポーツ系のタレントエージェンシーのエボルブド・タレント(Evolved Talent)では、スマートテレビのオーディエンスが20%なのに対し、モバイルは62%を占めている。
「スマートテレビの割合は増えているが、視聴デバイスとしては依然としてモバイルが最大勢力」という状況は、YouTubeの動画投稿者にとって複雑だ。スマートテレビによるオーディエンスが増え、視聴時間が長くなると、長時間で質が高く、より大画面に適した動画が優位になる可能性がある。だが一方で、現時点ではスマートフォンで視聴するオーディエンスが多い。動画制作上の判断には注意が必要だ。またモバイルとスマートテレビで、動画広告の収益にどのように違いがあるのかは、いまだ分からないところも多い。そのため、現時点では動画投稿者にとって制作戦略の調整に踏み切るのは難しく、コンテンツ自体を大きく変えるケースは少ない。
イボルブドタレント(Evolved Talent)で共同創業者兼COOを務めるセバスチャン・デルボー氏は「スマートテレビによるオーディエンス数の増加が顕著なため、戦略について多少なりとも検討せざるを得ない」と語る。
動画投稿者にとって幸いなのが、スマートテレビの普及と時期を同じくして、YouTubeがより長尺の動画を重視していることだ。2012年以降、YouTubeは動画視聴時間の増加に取り組んできた。YouTubeのおすすめ動画のアルゴリズムで長い動画が優位となり、その結果、投稿される動画も長尺かつミッドロール広告を使用するケースが増えた。そうすることで、各動画の収益が最大で50%も増えるためだ。さらに2019 年には、YouTube Selectのパッケージに入れるチャンネルを決めるアルゴリズムに、スマートテレビのオーディエンス数も考慮されるようになった。
「まずはエビデンスとなるデータ」
デルボー氏は「YouTubeは、視聴時間を最適化し、スマートテレビによる視聴時間がもっとも長くなった場合にメリットが得られるシステム構成となった」と語る。
ただしスマートテレビのオーディエンス数が増える一方で、それがYouTubeの動画収益にどのような影響を及ぼすかは不透明な部分も多い。デルボー氏は「YouTubeは、視聴デバイスの種類ごとの広告価格を動画投稿者に公開していない」と指摘する。またコラブのロスナー氏も、現時点ではスマートテレビの収益への影響の測定と調査を進めている段階だという。
スマートテレビによる視聴が、それ以外のデバイスよりも収益増につながることが判明すれば、動画投稿者もより大画面に適したコンテンツ制作へと舵を切ることを検討せざるを得ない。具体的には、スマートテレビのオーディエンスに合わせて動画をより長尺にする、コンテンツとしてのクオリティを上げる、動画投稿の頻度を調整するといった戦略変更だ。しかし投稿者としても、このシフトが自身に対し十分なメリットがあることを把握した上でなければ、簡単には変更に踏み切れない。
ロスナー氏は次のように語る。「スマートテレビのオーディエンスが増えることによる影響は、簡単に調整できるものもあれば、かなり大掛かりな変更を要する部分もある。当社では、そういった変更を推奨する前に、まずはエビデンスとなるデータを収集する必要がある」。
[原文:YouTube creators are seeing connected TV’s viewership share increase]
TIM PETERSON(翻訳:SI Japan、編集:長田真)