ウォルマートは、この1年になにを行ってきたか?: Amazon に対抗するための独自戦略

今年、Amazonに対抗する、ウォルマート(Walmart)のふたつの戦略が明らかになった。

オンライン戦略では、同社は、若い顧客層の獲得を狙ってボノボス(Bonobos)、モッドクローズ(Modcloth)、エロクイ(Eloquii)、Jet.com(ジェットコム)などのミレニアルフレンドリーなブランドで構成する厳選された戦団を構築しはじめた。ウォルマートは同時に大規模な店舗網を駆使して、配送やコンビニエンスサービスなどを行い、利便性も提供する。その目標は、実店舗網と、その規模を利用してAmazonに価格設定や製品の品揃え、オンライン体験の面で対抗することにある。

リテーラーにとっては難題だが、ウォルマートのeコマースの仕組みは、Amazonに対抗し、昨年に投じた仕組みへの投資を基礎にして前進するだけの力を備えている。

「ウォルマートは競合他社を意識し、行う必要のあることを行っている。商品を買って自宅に持ち帰る顧客からオンライン購入者までを対象に、非常に早い時期から試験を行い、提携企業に商品を配送してもらい、一定の成功を収めた」と、フォレスター(Forrester)のプリンシパル・リテール・アナリストのスチャリタ・コダリ氏は最近、米DIGIDAYに語った。「ウォルマートはこれまでAmazonが行ってこなかったようなユニークなことを行っている」。

人材、配送、新ブランド

相手を負かせないなら、自社の独自のやり方に資金を投じて溝を埋めるのも良い手だ。ウォルマートはDTC(Direct to Consumer:ネット直販)ブランドを買収することで、新たな顧客層を獲得しただけでなく、人材も獲得している。その人材のなかには、Jet.comの創業者で、現在はウォルマートの米国eコマース事業部のプレジデント兼CEOのマーク・ロアー氏や、ボノボスの創業者でウォルマートグループにおけるデジタルブランドのシニアバイスプレジデントとなったアンディ・ダン氏などがいる。

ウォルマートは昨年、eコマースに大胆な投資を行った。たとえば、できる限り速く配送できるようにサプライチェーンやロジスティクスに投資したり、2日で届く無料配送サービスを開始したり、加えてeコマース企業の買収を次々と行ったりした。買収された企業は、インドのマーケットプレイス、フリップカート(Flipkart:5月に買収)、サイズの取り揃えが豊富な女性向けアパレルブランドであるエロクイ(10月に買収)、ベア・ネセシティ(10月に買収)、Art.com(アートコム:12月に買収)などだ。ウォルマートは買収と配送を強化するための技術やサプライチェーンへの投資によって、Amazonに対抗できるように体制を整えた。

同社は買収したブランドからeコマースのノウハウを得て、そのノウハウを駆使して独自のデジタルブランドを作り上げた。同社は2月、オールズウェル(Allswell)という名のオンラインの自社寝具ブランドをローンチ。オールズウェルのルックアンドフィールに関しては、買収した直販企業から得た教訓や社内のマーケティングに関する専門知識を参考にして形にしたものだ。オールズウェルは、Amazonが支援する実利的な自社ブランドとは異なり、オールズウェルだけで独り立ちできるようなDTCブランドであるようだ。ウォルマートのeコマース買収戦略の中核については、その目的は特定分野に特化した専門知識と品揃えでカテゴリーリーダーとなり、Walmart.comやJet.com(たとえば、ヘイニードル[Hayneedle]やムースジョー[Moosejaw]、Shoes.com[シューズコム])、ボノボスやモッドクローズ、エロクイをはじめとする、ユニークな製品を販売するブランドのカスタマーエクスペリエンスや品揃えを強化することだと、ロアー氏は最近のLinkedInへの投稿で述べている。

最大の武器は店舗網

しかし、この戦いにおけるウォルマートの最大の武器は5352店舗にもおよぶ店舗網にある。ウォルマートはこれらの店舗を配送拠点や配送ポイントとして活用できるのだ。同社は、12月までに提携会社が開始したApple式のチェックアウトウィズミー(Check Out with Me)を導入し、支払いのために並んで待つという苦しい体験の解消を効果的に実現した。

同社はこれらの投資を有効なものとすべく、技術要員の採用も積極的に行っている。情報筋によると、ウォルマートは雇用全体の2%が技術者の職にあてられるという。

「Amazonが持つホールフーズ(Whole Foods)の店舗数は数百であるのに対して、ウォルマートは何千もの店舗を持っている。ウォルマートは実店舗にあるものとオンライン上にあるものを結びつける方法を巧みに考慮しており、同社の店舗はトラフィックが他社よりもずっと多い。そのため、同社がAmazonに対する主要なオムニチャネル競合企業として浮上してきている」と、カンターコンサルティング(Kantar Consulting)でリテールのチーフナレッジオフィサーであるブライアン・ギルデンバーグ氏は語った。

Amazonとの差を解消

ウォルマートは、店舗網を戦略的に活用し、食料雑貨市場での認知度を向上させることで、Amazonとの差を埋めはじめるだろう。

「ウォルマートは同社とAmazonの差に存在するネガティブな部分をできる限りなくそうと試みている。同社は迅速な配送に注力してマーケットプレイスの拡大を試み、買い物客が論理的な判断に基づいて、この場所に来るようになるようにしたいと考えている」と、彼は付け加えた。

しかし、特にAmazonが検索において優位に立っていることを考慮すると、ウォルマートにはまだまだやらなくてはならないことがたくさんある。eマーケター(eMarketer)によると、アメリカのインターネットユーザーの約半数が、製品の検索はまずAmazonで開始するという。ウォルマートはWalmart.com上に約1100以上のブランドを有しているが、Amazonに対抗する最小必要量の製品を確保するには、品揃えを拡充することが必要になる。

「同社が直面する最大の課題のひとつは、Amazonが配送や価格設定の面では非常に強力だということが挙げられる。ウォルマートが対抗するにはいろいろな武器が必要だ」と、カスタマーインテリジェンスプラットフォーム、カストラ(Custora)のCEOを務めるコリー・ピアソン氏は言う。

戦略に長けた数々の買収

しかし、ウォルマートは、2017年に買収したボノボスで行ったのと同じように、オンラインファーストのブランドを異なる法人として経営させるウォルマートの戦略によって、これらの企業が築いたカスタマーロイヤルティを活用し、その結果、従来の顧客以外の異なるタイプの顧客を獲得できるようになる。

「ウォルマートが行おうとしていることは、それぞれが独自にAmazonに対抗する方法を見つけた企業を買収することだ」と、ピアソン氏は言う。「エロクイを例に取ると、そこには顧客のブランドロイヤリティがある。ウォルマートは、対象セグメントで魅力的に映るブランドの出現を待っていた。ウォルマートは、パズルを解き、その勘所あるいは適した製品市場を認識しているブランドを買収する戦略に長けている」。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:Conyac